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教会で起こる人生の悲喜こもごも  作者: 瀬崎遊


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11/24

11 孤児が膝をついて神に祈るほどの結婚式

 今日はありえないほど急な結婚式の準備に孤児達は走り回っている。

 今日の結婚式の話が出てきたのは昨日のことだった。


 神父は何度も「え?」と聞き直していて、孤児が神父に「現実逃避しても現実は変わりません」と言って、本当に明日の結婚式だと納得したようだった。


 この教会より小さな教会なら「今すぐ!!」とか「明日お願いします」ということはちょくちょくある。と聞いたことはある。

 だが、この教会は中規模より大きい規模の教会だ。

 神父が恐る恐る「ご招待される人数を聞いてもいいですか?」と聞くと「二百人だと」答えた。


「それだけの方が、いきなりここへ来ることが出来るのですか?」

 神父の質問は当然と言えよう。

「はい。来られます」

「時間は午後から・・・」

「午前からお願いしたいと思っております」


 孤児は走り回った。

 神父が話し合っている横で、赤い絨毯がしかれ、椅子を二百三十人分用意する。

 こういう時は絶対お客様が増えるのだ。

 これは経験則なので、間違いない。

 多いのはいいのだ。足りないことは困るのだから。



 普段はおしとやかにしているシスター達も修道服を脱いで、走り回っている。

 花が今から手に入るか、担当の孤児が花屋へと走っていきます。

 無理な話なのだから、金額を釣り上げるように孤児が神父にメモを見せています。

 神父は孤児にウンウンと頷いて、新婦の母親が「花は薄いピンクで!!」と孤児に叫んだ。


 数人の孤児達が膝を付き神に祈ったが、神が何もしてくれないことはよく知っているので、花屋へと新たな孤児が走り出した。


「とにかく要望を聞かせてもらえますか?」

「明日の午前中にすること、花は薄いピンク、リボンは薄いグリーンで」

 また数人の孤児が膝をついて頭を抱えた。


 薄いグリーンと言われても色々あるし、色に寄ってはは数が足りないものが多いのだ。

 孤児はグリーン系のリボンを新婦の母親元へと持っていき選んでもらった。

 選ばれたのが数が足りないリボンだったので、二色を選んでもらって、交互につけることで了承してもらった。


 料金の話になり、神父がなんとか値を釣り上げようと意気込んでいると、孤児達が驚くほどの金額を提示されて、影に隠れていた孤児達は知らぬ間にスキップをして、踊っていた。


「披露宴は別の場所ですよね?」

 当然のこととして聞いた所「こちらの会場でお願いします」と言われてしまって、また数人の孤児達が頭を抱えて立ち上がれなくなっていた。


「あの、いくらなんでも今日の明日で、食べ物のご用意が出来ませんが・・・」

「最低限でもかまいません。お願いします。両家の料理人にも用意させます」


 起き上がれなくなっていた孤児が神父の前に出て「メニューを決めましょう。全てをまとめて、一皿ずつ用意するようにします」

 両家は準備がいいと言うか、料理人も連れてきていた。


 教会の料理人も呼んで、メニューを決めてもらい作り上がったら両家の料理人も全て教会の料理室へと集まることになった。


「飲み物の用意のことなんですが」

 と別の孤児が出てきて話を進める。

「どれだけのご用意をするおつもりですか?」

「できるだけ完璧なものをお願いします」

「同じ銘柄を集めるだけでも大変なことを解ってくださっていますでしょうか?」

「勿論理解しております。ですが一生に一度のこと。できるだけ完璧にしてやりたいのです。是非ともお願いします。娘に良い結婚式だったと思わせてあげたいのです」


「そのお気持ちはわかりますが、同じ銘柄・・・・・・」

 孤児にいい考えが浮かんだ瞬間だった。

「なんとかしましょう。ただし、かなり値が張ると思ってください」

「お金でなんとかなることなら、なんとでもいたします」


 孤児は別の孤児に耳打ちをして、耳打ちをされた孤児はウンと頷いて走って出ていった。

 三週間後に予定していた結婚式のお酒をそのまま流用することにした。


「赤、白、スパーク。全てご用意できます。ですが普段よりかなり高額になると思ってください」

「解りました」


 もう、神父は役に立たないので孤児が先に「金貨〇〇〇枚先にいただけますか?。勿論余ったらお返しいいたします。口約束では私共もご用意できません。それと万が一、足りなくなる可能性も出てきますのでご了承していただけますか?」

 両家は半分ずつ本当に支払ってくれた。


 どれだけ詳細に話を詰めても、漏れは絶対あるだろう。

 明日をなんとか乗り切ろうと孤児達は皆心に誓った。



 孤児の一人が突然「きっと席が足りなくなる」と言い出した。

「そうね。友人知人にまで連絡が行っているはず。物見高い人達がやってくるかもしれないわ」

「席は最後の一脚まで用意しよう。料理もそのように伝えて」


 孤児達は夜中まで働いて、朝は鐘がなる前から働き始めた。 


 やってきた新婦はぷっくりとお腹が出始めていた。

 三日前までで隠し通していたのだが、ついにメイドにバレて、両親が知り「相手は誰だーー!!」という父親の叫び声に皆が飛び上がり、相手の名前を言うと父は「なら仕方ない」と言って両家顔合わせをして、早急に結婚式をすることになったらしい。


 夫は、来週半ばから出兵が決まっていて、明日しか時間がないのだということだった。

 次に帰ってこられるのは、お腹の子供が産まれたあとになるかもしれないとのことだった。


 間に合わない親族は放置するとして、来れるものだけ来いと連絡して、二百人間に合うということは冬の社交シーズンで人が集まりやすかったからだろうと思った。

 きっと呼ばれていない人まで来る。

 孤児は料理担当にも、そのことを伝えどこまで増えるか想像できない。とも伝えた。


 四百席を用意したのに全てが埋まっている。

 料理人に四百席が埋まっていると伝えると、一度皆の手が止まって、それからは倍速の映写機を見ているかのようだった。


 招待客もそうでない客も、急なことだったので特別な衣装を用意はしていないが、忘れ物がとにかく多い。

 あれが足りないこれが足りないと言われて孤児達はそれらを販売して歩く。

 想定上に足りないものが多くて、孤児達の顔はどんどん引きつっていく。

 どんなことにでも対応できると思っていた孤児の心をボキボキと折っていった。


 神父は一人、のほほんと自分の出番が来るのを待っている。


 花嫁は母親のウエディングドレスなのだろう、少し黄ばんだウエディングドレスを着て、涙をこぼしている。

 孤児はその上からレンタルの五mのベールを被せて、簡易で縫い付けていく。ズルズルと引きずるので急な方向転換や、大きな動きをしないでくれと新婦につげると「ありがとう」と言って笑顔を見せてくれた。


 予定の時間より三十分押したけれど、式はいつものように扉が開かれて、新婦と父親が歩いていき、その後ろを孤児がベールの裾を持って歩いてついて行った。


 結婚式が三十分押して、脱がせるのにベールを切らないように糸を切るのに時間がかかったので、料理はきっちりと用意することが出来た。


 両家のご両親に「招待客があまりにも多くて、お金が足りなくなってしまいました。金貨〇〇枚追加で出していただけますか?」と孤児が聞いたら、両家は「ありがとう。この教会を選んでよかったわ」と言って請求金額の倍を払ってくれた。

 

 孤児達が、終わった後、小躍りしたのは言うまでもない。

神父様本当に役に立ちません。

ここの孤児達はどんな仕事についても一流になれるのではないだろうかと思ってしまうのは、私だけでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かにここの孤児たちはどんな仕事についても一流になれるとも思えます、賢く能力を培い成し遂げる事を期待できますね
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