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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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7話

おまたせしました!

 エルマの喉に触れる。温かい肌の感触がした。

 脈も感じる。……生きているから当然ね。


 もちろん、エルマの喉は焼けてないし、腕も折られていないし、足の腱も切られていない。

 ……服は破れちゃったけど。


「ーーエルマ」


 ごめんね。

 目を閉じて、手に力を入れる。


「ぐっ……!」


 エルマのうめき声が聞こえた。

 でも、それに構っている余裕はない。

 意識をエルマの体内に集中させる。

 魔法の源となる魔力を生み出すのは、心臓に近い部分だ。

 触れた喉からゆっくり魔力を流す。『相手』に気づかれないように、少しだけ。


 心臓あたりに核があればいいんだけど。


 それ以外だと、時間がかかりすぎて、相手に気づかれる可能性がある。

 今回は、魔法と違う力というのが、難点ね。


 ーーいや、違う。


 魔法との併用のほうが可能性が高い。

 私でもそうする。


「ぐうぅ……かはっ!」

 ーーまずは、ひとつ見つけた。

 でも、魔法回路をただ閉じれば疑われる。

 だから、小細工をさせてもらう。閉じてるのに、閉じてないと思われるように。


 あとは、魔法以外の何かの核をつぶせばいい。


「!」


 ーーああ、なるほど。

 心臓の真上に核を埋め込んだわけね。

 薄い魔力の膜で核だけを覆う。

 核をただ破壊してしまえば、エルマの心臓も活動を終えるだろう。

「ごめんね、エルマ。私のために……死んで」

 まだ核は起動したままだ。

 この言葉もしっかりと聞かれているだろう。


 そして、エルマの心臓を魔力で保護して。

「!!!」

 私は、核を破壊し、魔法回路も完全に閉じた。

「!!! ーー! ーー!!!」


 エルマが声にならない悲鳴をあげている。

「ごめん、エルマ。すぐに回復するわ」

 エルマに回復魔法をかける。

 核も破壊したし、盗聴の魔法回路も閉じた。

 これ以上、なにか仕掛けられていたら、私の負けだけど、そうではなさそうだ。


「ーーロイゼ!!!!」


 回復魔法をかけた後。

 エルマは私の名を大声で呼び、睨みつけた。


「嫌い、だいっきらい!! あなたなんか、この世で一番嫌いだわ!!」

「ーーええ、そうね」


 ……良かった。

 喉にもあとは残っていないし、エルマの心臓も正常に働いている。


「何笑ってるの?」

「嬉しいのよ。無事に終わって」

「はぁ!? 無事なわけないでしょ! 死ぬかと思っーー……」


 エルマは、そこで言葉を止めて、瞬きをした。

 そして、口を開けたり閉じたりする。


「あなたの恐れは消えた? ……エルマ」


 盗聴の魔法回路に、心臓の真上にあった魔法以外の力の核。

「……本当に、きらいだわ」

「あら、ただの捨て駒になりたかったの?」

「そんなわけないじゃない! 私は、絶対王子様とーー」


 ーー王子様? 陛下ではなく?


 他にも気になる点はあるけれど。

「エルマ、あなたはお芝居が上手よね」

 私はエルマを両手で抱きなおすと、エルマに向かって微笑んだ。


「城まで、死んだフリをしてくれる?」


 そして、高度を下げる。


「!! ーー!!!! ーー……」


 エルマが目を回して、最後はぐったりと目を閉じるのを確認してから、一気に高度を下げた。


 そして、まっすぐに城に向かう。

「さすがに、この持ち方はよくないわね」

 エルマを荷物のように抱き上げていたのを、横抱きに変える。

 そして、ちょうど城で一番安全な場所の窓が開き、着地した。


「ロイゼ!!!」

「陛下、窓を開けてくださりありがとうございます」

 すぐ近くにいたノクト殿に、エルマを渡す。そして、私の上着をかけた。

 下着などが見える箇所ではなかったけれど、異性に服が破れたままの姿を見られるのはいやだろう。


「大事な捕虜です。安全な場所に保護をお願いします。くれぐれも、失うことのないように」

「かしこまりました、ロイゼ団長」


 ノクト殿が急いでエルマを連れていく。

  

「君は……君には、怪我はないのか?」

「はい。全く」


 陛下の言葉に頷く。

 正直、それなりに負傷することは考えていた。


 だからこそ、カイゼルやアリーに別れを告げたのだし。


 でも、こうして、無事にエルマも傷つけることなく、連れ帰れて良かった。


「ご心配くださり、ありがとうございます。それでは、ノクト殿が戻ってくるまで、私は陛下の警護にあたるので、陛下は安心してお寛ぎください」


 特に、この城周辺には害意や殺意はない。

 だから、大丈夫だ。


 安心させるように、微笑む。


「君は本当に……無茶をする」

 陛下は、深く息をついた。

「本件で私が怪我をしても、陛下のせいではございませんので、盟約などの件で陛下にはご迷惑は……」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます
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こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
>魔法と違う力 >魔法以外の何かの核  おーっ♪ ロイゼさん流石にございます。  目には目を歯には歯を? 笑〜 ご更新をたのしみにしております。  
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