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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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6話



「いやよ!!!」

 エルマを抱いたまま、更に高く飛翔する。

 普通だと、高度を上げれば格好の的になるけれど、これほどの高さなら誰も追ってこない。誰も追えない。


 その証拠に殺気はずいぶんと遠かった。


「このあたりの高度なら、落ち着いて取引について話ができると思うわ」

「ロイゼ、聞いてた? 私は、いやって言ったの!!」


 ずいぶんと元気なエルマは、不服そうな顔で私を睨みつける。

「そう……ところで取引だけれどーー」

「あなたのそういう決めたことに頑固なところ、昔から大っ嫌いだったわ!!」


 エルマは思いっきり顔を顰めて、叫んだ。

 ……エルマって、思っていた以上に感情豊かだったのね。

 こっちが素かしら。


「そうなのね」


 でも、やっぱり嫌いと言われると胸は痛む。


「嫌いよ! 嫌い!! ーーあなたなんて、大っ嫌い!!!」


 そんな言葉を連呼する、エルマに視線を合わせる。


「私は、エルマのこと嫌いじゃなかったわ。あなたが大切だった」


 初めて出会った日。

 スノードロップの刺繍の入ったハンカチを差し出されたときから。

 私は、あなたが嫌いじゃなかった。

 過ぎ去った私の大切な青い春のあなた。


「私は、好きだったことなんてない」

 一瞬目を閉じた後、そう言い切ったエルマ。

「……ええ、そうね」


 思わず笑いそうになりながら私が頷くと、エルマはきっと睨みつけた。


「何がおかしいの!」

「おかしくはないわ。嬉しいのよ」

「頭沸いてるんじゃない?」


 ……本当に、かつてのエルマなら考えられない言葉遣いね。それほど、焦っているのかもしれないけれど。


「そうかもね。……ところでエルマ、確認だけれど、あなた死にたくはないのよね?」

「バカにしてるの? 死にたいわけないじゃない」

「それならよかった」


 エルマが死ぬつもりなら、取引なんて意味がなくなる。

「エルマ、改めて言うわね。ーー私と取引をしましょう」

「だから! なんども! いやってーー」


 激しく首を横に振るエルマの顎に触れる。

「エルマ、何を恐れているの?」

 すると、私の苦手なエルマの香水が香った。

 この香水、他の子たちからはいい香りと評判だったのだけれど、私はずっと嫌いだったのよね。


「恐れなんかないわ。私はあなたが嫌いなだけ!」


 エルマに魔法がかけられた痕跡はない。

 となると、考えられるのは、魔法以外の何か?


「ねえ、聞いてる?」


 でも、魔法以外の何かとなると私で対処できるかしら。

 そもそも、エルマの特殊能力? だって、まだ解明できてないし。


「まあ、いいわ。……可哀想で可愛い私の親友」


 いつかエルマに言われた言葉を、今度は私が言うことになるなんて。

「この私が可哀想なわけがーー」

「私に服を裂かれ、腕を折られ、足の腱を切られたなんて」

「はーー」

 エルマに唇で、黙って、と合図する。


「挙句、喉を自分で焼いて、何も話せなくなるなんて」


 

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お読みいただき有難うございます
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こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
 そりゃそうですよね、エルマの力って数の暴力とトカゲの権力におんぶに抱っこだから、ロイゼとタイマンになった時点で何一つ勝ち筋無いのは当然。
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