3話
――あなたの走り、見事だったわ!
まっすぐに見つめた桃色の瞳も。
――ロイゼ!
拗ねると膨らませた頬も。
――ロイゼ。ううん、ミルフィア、あなたの居場所、私がもらうわね。
悪意に満ちたその言葉も。
どれが本当のあなただったんだろう。
あるいは、どれも本当のあなたではないのか。
――8年。8年間、私たちは親友だった。
その友愛が一方通行だったのだとしても、決して短くはない期間だ。
その期間ずっと、あなたは何を考えていたの。
ロイゼ・イーデンを形作る上で、欠かせない人物であるエルマ・アンバー。
そんなあなたが、どんなひとだったのか。
「……エルマ」
フクロウが大空を飛翔する。
星のように煌めくその軌跡が、一瞬だけ止まった。
「――!!」
目的……エルマがフクロウを瞳に映したのだ。
その瞬間を、私のフクロウは決して見逃さない。
美しい飛行で、窓から私の元に帰ってくる。
「……ありがとう。いいこね」
フクロウは私の腕に留まると、目を細めた。
そして、私がその頭を指で撫でると、視覚情報を共有してくれる。
エルマが潜んでいたのは、王都からそれほど離れていない場所だった。
それでも見つからなかったのは、いくつにも張り巡らされた魔法障壁のせいだろう。
でも、おかしい。
エルマも部隊長になるほどの魔術師だ。
とはいえ、ここまで何重にも魔法障壁を張れるだろうか?
――いや、違うな。
魔法障壁に、似ているけれど、この力は魔法ではなく――でも、それならなに?
魔法だと説明がつかない。
だけど、こんな力は魔法以外にありえない。
そう、まるで……。
「未知の能力? でも、そんなの聞いたことが……」
いや、私自身の知識で、否定をするには尚早だ。
団長だったとしても、私は全知全能ではない。
そういう驕りは、身の破滅に繋がる。
「……まあ、いいわ」
知らないのなら、確かめればいい。
それこそが、私の原動力なのだから。
「アリー、カイゼル」
私は、二人に向かって微笑んだ。
「色々とありがとう。大変お世話になりました」
小切手を書いて、二人に渡す。
「二人の働きに報いるには、少ないけれど。……これは、私からのお礼です」
「ロイゼ様? どうして、急に……。どこにもいかれませんよね?」
戸惑っている、アリーに微笑む。
「アリー、ありがとう。あなたの料理とっても美味しかったわ。それにあなたの淹れてくれたハーブティーすごく好きだった」
「また、何度でも淹れますよ! でも、どうして……」
「アリー嬢」
カイゼルが、アリーの肩に手を置いた。
「ロイゼ様、行かれるのですね」
「うん。カイゼルもありがとう」
「わたしも共に行ければよかったのですが……今のロイゼ様には足手纏いになってしまいますね」
そう苦笑し、カイゼルは、真っ直ぐに私を見つめた。
「ご武運を」
「ありがとう」
そう、頷いたときだった。
「ノクト・ディバリー、参りました」
光と共に、ノクト殿が現れた。
「ロイゼ団長、ご指示を」
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