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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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73/80

1話

お待たせしました!!

5章は内容が固まっているので、更新頻度は以前ほどお待たせしない予定です!!

――あなたは、いったい何を想っていたの。

 何を感じていた? 私にどうしてほしい? あなたなら、どうする?

「…………」

 ふ、と息を吐きだす。

 手の中にあった日記を置いた。

「ロイゼ様?」

 不思議そうな顔で、私をアリーが見つめている。

 私が居住地を王城に移してからも変わらず、アリーとカイゼルは私の元で働いてくれていた。


「ねぇ、アリー。あなたは、エルマ・アンバーという女性を知っている?」

 かつての私の親友で、部下で、そして私に成り代わろうとした彼女。

 私を襲撃したマリアという女魔術師の様子から、相当慕われていたということはわかった。異常とも呼べるほど。……でも、もっと他の人から見た、彼女を知りたい。


「私も詳しくは――カイゼル様の方がご存じだと思います」

「そうなの、カイゼル?」

 カイゼルは、ゆっくりと薄青の瞳を細めた。

「はい。私は、以前あの方の護衛をしておりました」

 ……なるほど。

 カイゼルは、竜王陛下の運命の番である私の護衛をしている。

 だったら、私がそうとわかる前は、彼女の護衛をしていても不思議ではない。


「あの方のことが気になりますか?」

「……ええ」

 頷く。前から全く気になっていなかったと言えば、嘘になる。

 でも――。

『エルマ隊長は、素晴らしいの。私を救ってくれた、女神なの!!』

『選民主義の塊、のようなひとかな』

 相反する二つの印象。

 どちらが間違っているのか、あるいは、どちらも正しいのか。


「そうですね……私にとってあの方の印象は」


 カイゼルは、そこで言葉を切った。

 言葉の続きを口に出そうか、悩んでいるようだった。

「気味が悪い……ですかね」

 何度か悩んだように、口から出たのは、カイゼルらしくない言葉だった。


「気味が悪い?」

 思わず瞬きをして、カイゼルを見つめる。

 カイゼルは、困ったように苦笑した。

「はい。知りすぎている……そんな風に見えるのです。私の想い違いかもしれませんが。――それに周りの者もみな一様に、あの方の虜になるのは、あまりにも異常ではないかと」


 知りすぎているという言葉。

 そういえば、彼女は、私に成り代わろうと……いや、実際成り代わっていた。

 なぜ、そんなことが可能だったのだろう?


「そうなのね、ありがとう。カイゼル」

「いえ。お役に立てたかは、わかりませんが」


 疑問は尽きない。

 でも……彼女がどんな人であれ。

 私が今、一番知らなければならない人は。


「ごめんね……」

 小さく呟く。

 誰にも暴かれたくない。誰にも知られたくない。心を映した黒いインク。

 ――あなたの想いを蔑ろにしたいわけじゃない。

 でも……。


「知りたいの」


 私が失くしてしまった私の欠片。


「アリー、カイゼル。念のため、少しだけ離れてくれる?」


 二人が離れたのを確認して、日記に手をかざす。

 イメージするのは、焦げた魚を戻した時のこと。

 あのときのように可逆魔法を使えば、きっと。


 ――あなたは、それを望まないだろうけれど。

 でも、私は力が欲しい。

 私の力でちゃんと立てる力が。


 だから……。


 可逆魔法を行使する。光が日記を包み込み、インクが徐々に薄くなっていく。


「――あ」


 ちょうど開いていた、ページの一文が見えた。

『私は、いったいなんのために』



いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
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