14話
今回の件の説明……。
「……はい、陛下。団長から、魔術師の施設を見てみたいと言われ、共に施設を見学しました。その後、団長は自室に行き、日記を持って戻ってこられました。その後、団長を仮住まいに送る前に、急用で私が席を外し――」
「ロイゼを一人にした、と?」
陛下の静かな怒りを含んだ声は、先ほどよりも……ううん、今まで聞いたことがないほど、冷たかった。
「陛下! ノクト殿は、私のわがままのために時間を割いてくださったのです」
陛下の深青の瞳が、私に向く。
「助けてくださりありがとうございます。……今回のことは、浅慮な私の行動が招いた結果です。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。咎はすべて、私にあります」
深く頭を下げる。
記憶を取り戻したくて、魔術師団の施設を訪ねたのは、私の意思だ。
ノクト殿のせいでは決してない。
むしろ、私のせいで、ノクト殿にも迷惑をかけてしまった。
「……ロイゼ」
陛下は、私の名前を呼んだ。
それでも、なお、頭を下げ続ける。
「迷惑だとは少しも思っていない。君が……無事でよかった。だから、顔を上げて欲しい」
陛下にそう言われて、顔を上げないわけにもいかない。
ゆっくりと顔を上げると、陛下は困った顔をしていた。
「私が副団長に問いたいのは、魔術師団の膿を出し切っていない状態で、なぜ、ロイゼをこちらに迎え入れる許可を出したのか。そして、その状態でロイゼを一人にしたのか、という点だ」
膿を出し切っていない……。
先ほどの女魔術師――マリアのことだろうか。
「6番隊をはじめとして、エルマ・アンバーと親しかった者たちに、洗脳や魅了などの魔法を使われた兆候がなかったことを根拠に、安全だと判断しました。安易な判断でした。……一人にしてしまったことも、完全に私の落ち度です」
ノクト殿の言葉に、口を挟みたくなる。
あなたは、何も悪くないのだと。
でも、今、私が口を出したらもっとノクト殿の立場が悪くなるのは、記憶がなくてもわかった。
私のせいなのに、何も言えない。
自分の浅慮さが、情けなくて、申し訳なくて、唇を噛む。
「……なるほど」
陛下は、ノクト殿を見つめると、息を吐き出した。
「エルマ・アンバーが逃亡した件の取り調べもある。謹慎だけでなく、6番隊は、一度全員の身柄を拘束しろ。此度の魔術師以外にも、ロイゼを害そうと企む可能性もあるからな。連帯責任だ」
陛下がそこまで言うと、ノクト殿は畏まりました、と深く腰を折った。
「それから……」
陛下は、ノクト殿から私に視線を向けた。
「……ロイゼ」
「はい」
緊張しながら、その深い青の瞳を見つめ返す。
「君の居住地を城に移す」
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