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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
四章 私の望み

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11話



 ……番を騙った。

 私の魔術師団での評価は、まだそうなんだ。


「陛下は、団長が本物の番だったって、言ったけど――、そんなはず……そんなずないわ」


 ぶつぶつと呟くその瞳は、虚だ。


「だって、エルマ隊長が番のはずだもの」


「エルマ……隊長」



 ――エルマ・アンバーは、君に成り代わろうとしたんだ。


 昨夜聞いた名前に、思わず瞬きをする。

 そうか、6番隊は、彼女の所属する部隊だったんだ。


「ええ、そうよ。私たちの隊こそ、運命の番であるエルマ隊長が出現された、誉高き隊よ」


「……そう、なんですね」


 もっと詳しく話を聞きたい気もするけど、彼女の瞳は虚で正気じゃない。



「そうよ! エルマ隊長が嘘をつくはずないじゃない!! 陛下も他の団員もみんな手のひらを返して――団長が嘘をつくはずないって言ってたけど……エルマ隊長こそ、嘘をつくはずないわ」


「そうなんですね」


 話を切り上げないと。


「エルマ隊長は、素晴らしいの。私を救ってくれた、女神なの。でも、私を置いて行った。牢から出るならどうして、私を連れて行ってくれなかったの。裏切られた。私が、私が……」


「すみません、先輩。急いでいるので!」



 まだぶつぶつと何かを呟いている、彼女を後に、走り出す。


 魔術箱を使おうかとも思ったけれど、なんだか怖くて、階段を駆け降りた。


「はぁっ……はあっ」


 荒い息を吐きながら、寮の扉を抜けた。



「さっきの人……様子が、おかしかった」


 幸い、追いかけてくることはなかったようだ。


 ノクト殿はまだいるだろうか。

 門まで走ると、人影が見えた。


「ロ……フィア? どうしたの、そんなに慌てて」


 心配そうに首を傾げたのは、ノクト殿だった。


「ノクト殿……」


 見知った顔に安心して、一気に力が抜けた。

 思わず、手元の日記が落ちかけ、慌ててぎゅっと力を込める。


「どうしたの、何かあった?」


 さっきよりも心配そうな顔でノクト殿は、私の元に駆け寄った。


「実は――」


 廊下で、第六部隊の女魔術師にあったことを話した。


 彼女の様子がおかしかったことも。


「そうだったんだね」

「……はい。ノクト殿、エルマさん――エルマ・アンバーという人物は、どんな人だったんでしょうか?」


 彼女について、ノクト殿は何か知っているだろうか。


 番を騙り、私に成り代わろうとした、私の親友だったという彼女。


「……」

「ノクト殿?」


 そんなに考え込むほど、答えるのが難しい質問だったかな。


「……あ、いや、ごめん。夢を思い出して」

「……夢、ですか?」



 そういえば、悪夢を見たと言っていた。


「うん。それで、質問の答えだけど……僕にとっての彼女は、選民主義の塊みたいな人かな」

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こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
なんだろう まともな人いないな
道案内かと思ったら闇落ち信者だった(´д`) エルマはヤベェ奴なんだろうけど信者もヤベェな こりゃ元団長だった事がバレなくてむしろ良かった。下手にバレたら危害加えてくる奴等だろ。
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