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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
四章 私の望み

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3話

「陛下が……」

 ……どうしよう。

 服は、就寝用の簡素なものだ。

 一国の王をこの格好で迎えるのは、失礼ではないかしら。

 ――でも。


「はい。かなり慌てておいででしたが」


 わざわざこんな夜更けに訪ねてくるのだ。陛下の様子からもかなり重要な用件のはず。


「……わかったわ。陛下を応接室にお通しして」

「かしこまりました」


 カイゼルが去っていった気配を感じながら、アリーに尋ねる。

「ガウンなどはあるかしら?」

「はい、ご準備しております」


 アリーがガウンを羽織らせてくれた。

「ありがとう」

「いいえ」


 首を振ったアリーは、そっと私の手を握った。

「アリー?」

「大丈夫です、ロイゼ様」


 アリーの緑の瞳は、真摯に私を見つめていた。

「私も、カイゼル様も。ロイゼ様の味方です」

「……ありがとう」


 陛下がこの邸に来た理由は、まだわからないけれど。

 アリーの言葉はとても心強かった。


 じんわりと胸が温かくなるのを感じながら、ベッドから立ち上がり、応接室へと向かう。


「陛下、大変お待たせいたしまし――」

 謝罪の言葉は、途中で途切れた。

「……」

 無言のまま、食い入るように私を深い青の瞳が見つめていたからだ。

 そしてその背には翼が生えていて、額から汗が流れているし、息も荒い。


「陛下?」

 ……その格好は、一体?

 それに、なぜそんなに慌てて――。


 しかし、陛下は私の呼びかけにも答えることなく、私の前に立った。

「……あの?」

 無言で距離を詰められたので、思わず後退りする。

 でも、その距離は、強く引き寄せられたことによりゼロになった。

 

「え――」


 あまりにも突然のことで、抱きしめられたのだと、数秒して気づいた。



 えっ!?

 どういうこと!?!?

 ……いえ。とにかくこの状況はよろしくないわ。

 なんとかして、この腕の中から抜け出さないと。


「――飛んできたんだ」

 陛下はただ、そう言った。


 ――聞きたいのは、私の元に訪れたその方法ではなく、今抱きしめられている理由だわ。


 そう思うのに。


 突き飛ばそうともがいていた体の力が、急に抜けた。


 ……どうして。

 自分でもわからない体の反応に戸惑う。


 まるで、ずっとその言葉を待っていたような。


「君が無事で……良かった」


 陛下の声は安堵で震えていて、よほどの心配事があったとわかる。


「……」


 ……どうしよう。

 自分の体の変化にも、陛下の様子にもついていけず、ただ困惑する。


「――すまない!」

 困惑が伝わったのか、急に我に帰った陛下は、抱擁を解いた。

「同意も得ずに、不躾だった。……本当にすまない」

「……いえ」


 大慌ての陛下に、首を振る。

 なんとなく、緊急事態だったのだろうな、という感じはしたから。

 ――それにしても。


「理由をお伺いしてもよろしいですか?」

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