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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
四章 私の望み

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1話

大変お待たせいたしました!!

 ――あんなにたくさんお金があるなんて、思ってもみなかった。


「……ロイゼ様?」

 カイゼルの言葉に、はっと現実に引き戻される。


 銀行で預金額を調べ終わり、今は帰宅中だ。

「ごめんなさい。ぼんやりとして」

「いいえ、それは構いませんが……大丈夫ですか?」


 カイゼルが心配そうな瞳で私を見つめる。

「ロイゼ様の生活は、ディバリー様と陛下が保証されることになっています。ですので、何もご心配されることはありませんよ」


 とても真剣な顔でそう言われ、首を振る。

「大丈夫よ、ショックを受けているわけじゃないの」


 いや、衝撃という意味ではショックなのかもしれないけれど。


 紙に記された、大きい桁の数字。

 慎ましい生活なら、一生働かなくてもよさそうな額だ。

 あれだけのお金があれば、私は、誰に頼らなくても生きていけるのでは――?


 陛下にも、ノクト様にも。

 アリーにもカイゼルにも。

 これ以上、迷惑をかけず、私一人で生きていける。


 その可能性が見えたのが、嬉しい。


「たくさんお金があって、嬉しかったのよ」


 嬉しい気持ちが伝わるように、微笑む。


「それなら良かったです」

 カイゼルも安心したように、微笑んでくれた。


 高揚感に包まれながら、帰宅すると――。


「おかえりなさいませ!」

 アリーが出迎えてくれた。

「ただいま、アリー」

「夕食ができておりますよ。今度はちゃんと火を切ったので、ご安心を!」


 昼食の魚のことを思い出し、思わず微笑む。


「ええ。夕食も楽しみにしているわ」






 ――三人でとっても美味しい夕食を取った後。

 お風呂も終えて、アリーが用意してくれた真新しいベッドに腰かける。


 あれだけのお金があったら、この家からも出ていける。


 私の知識が正しいか、それとなく、夕食中にアリーやカイゼルに聞いてみた。

 お金の感覚は、どうやら間違ってなさそうだ。



 でも、引っ越しは、今すぐ! は現実的ではないかな……。


 家を借りるには、手続きがあるだろうし。

 詳しいことを、明日二人に相談してみよう。


「……でも」


 手の中の紙を見つめる。


 紙には、黒い文字で相変わらずすごい金額が書かれていた。

これだけの額を貰うのに、ためるのにどれだけの努力が、苦労が必要だっただろう。


 そして、それを成し遂げたのは、今の私ではなく、過去の私だ。


「私は――」


 ロイゼ・イーデン。

 銀行でも確認ができた。

 虹彩が一致したのだから、私がロイゼなのだ。


 それは、間違いない。


 でも――……。



 腰かけていたベッドに後ろ向きに倒れこむ。

 ふわふわな布団が私を包んだ。



「あなたの、私の。望みは……」


 ノクト様の手助けがあったとはいえ、魔術師団長まで上り詰めて、これだけの金額を貯めて。


 そうまでして、私が望んだのは。

 追い求めたのは。



「日記とか、あればいいのにな……」


 どれだけ頭の中を探しても、知識はあっても、記憶はない。

 「私」の想いを知りたい。


 そう強く思いながら、目を閉じた。


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
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