11話
「……え?」
その量の多さに思わず瞬きをする。
この家にこれから住むのは、私とアリーとカイゼルだけのはずだ。
でも、この食材の量は……十人分を優に超していた。
「あっ、ロイゼ様」
私を見て、カイゼルがにこにこと笑う。
「この箱は、すべてロイゼ様への衣服のようです」
リボンで丁寧に巻かれた箱の数。
そちらの数はざっと、数えただけでも三十以上。
箱一つに一着入っているとしても……。
「多すぎる……」
かなり多い。
食材も三人でこの量を余らせないか不安だし、衣服も一日で三着着ても、それでも余る計算だ。
「そうですか? 王族の方と同等の扱いにしては普通かと」
カイゼルは、不思議そうに首を傾げていたけれど。
「お金……足りるかしら」
大きな不安が私の胸の中を覆う。
あのリボンの包み方からしてかなりの高級品ではないだろうか。
食材はともかくとして、衣服分の金額を用意できる気がしない。
毎日洗濯するとして、念の為四着くらいだけ箱を開けよう。
そして、残りのものをお返しするのだ。
「大丈夫ですよ。服は全て贈り物らしいですから」
「……贈り物?」
この量が?
ただでくれるにしてはあまりにも――。
――君は、私の「運命の番」なんだ。
言葉を思い出す。
そうだ。
私は、運命の番……かもしれない存在なのだ。
盟約のために、私のご機嫌取りが必要だと考えたのだろう。
……でも。
「過ぎたものは、困るだけだわ」
身に余るものをこんなに貰っても、対応に困ってしまう。
どうしたものか。
「ロイゼ様は真面目ですね」
カイゼルはさっきと同じ言葉を言うと、微笑んだ。
「違うわ」
カイゼルに首を振る。
「私は、これらの贈り物と引き換えに期待されていることに応えられる自信がないの」
陛下がこれだけのものを贈ってくれたのは、私が運命の番かもしれないからだ。
つまり、贈り物を受け取った私には、運命の番の役割が期待される。
でも、前世の記憶も今世の記憶もない私には、陛下を愛しい、という感情も、番だ! という認識もない。
「……ふふ」
「カイゼル?」
おかしかったかしら。
「やはりそういうところが真面目ですね。番じゃなかったら、そのとき考える――という方法もありますし。それでも今どうにかして対処しようとされているところが」
カイゼルはそこまで言うと、急に跪いた。
「わたしは、宰相閣下の指示でここにきました。ですが――わたしの剣は、わたしの意思は、決してあなた様を傷つけず、あなた様が望まぬ全てからお守りすることを誓いましょう」
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