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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
三章 私という存在

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6話

「盟約……」

 それは、つまり――。


「盟約がなければ、陛下にとって、私は必要ない存在なのですね」


 女神との盟約があるから、私が必要なのだ。

 そうでないと人の姿がとれないから。

 それに、竜王の運命の番は、国の栄衰に関わると知識にある。

 だから、運命の番かもしれない私が必要で、そうでない私にこのひとにとっての価値はないのだろう。


「違う! 盟約と関係なく、私にとって、君は――君が必要なんだ」


「そうでしょうか。私にはそうは思えません」


 だって、そうでなければ、かつての私の言葉を信じず、番を騙ったという人物を寵愛しない。


「でも、陛下が運命の番を必要とされていることは、十分わかりました。……そして、私が陛下の運命の番の可能性が高いことも」


 そうであるならば、私はここではないにしろ城内には留まるべきだろう。


 私に何かあって、陛下が人の姿ではなくなったら間違いなく混乱を招く。


「……っ、ロイゼ」

「はい」


 陛下を見つめる。


「…………もう、どうでも良くなったのか?」


 主語がないその言葉。

 でも、言いたいことは伝わった。


「申し訳ないですが、少なくとも、今の私の中には記憶も想いも残っていません」


 かつての私が追い求めた、あなた。

 でも、今は何も感じない。


「――!」


 陛下は、目を見開いて、食い入るように私の目を見つめ返した。


 その中に、熱を探しているように見える。


 でも。


「……私は」


 絞り出すような声に、耳を傾ける。


「私は、本当に君を……」


 そこから先に言葉はなかった。

 小さく唇を動かしただけ。


 ――殺した。


 でも、近くの私にはそう呟いたのが見てとれた。


 でも、今の私には違うとも、そうだ、とも言えなかった。


 だって、私が記憶が無いのは事実だ。

 もしも、記憶が私という存在を構成する全てなら、私は死んだことになるのだろう。


 でも、今の私の肉体は生きている。

 そして、状況がわからないなりに、意思もある。

 それは、生きているということにはならないのだろうか。




 ――でも、そうね。



 陛下が求めているのは、「運命の番」の記憶を持った私だろう。


 それなら、間違いなく、今の私の中にはいない。



「……ロイゼ」


 自分で納得していると、ノクト様に呼ばれる。


「はい」


「ここは王城の――しかも王妃に与えられる部屋だ。少なくとも、今の君には、ここで暮らすのは負担になると思う」


「!」



 その通りだった。

 強く、頷く。


「でも、陛下もおっしゃった通り、寮に戻るのは混乱を招くことにもなると思う」


 それはわかる。


「城の他の一室も、負担になるかな?」


 頷く。

 できれば、城以外で暮らしたい。


 でも、運命の番かもしれない私に何かあるのはよくない。

 


「だから――、君が望むなら、城のすぐ近くで住む場所を紹介できるよ」

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こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
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― 新着の感想 ―
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