表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
三章 私という存在

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/80

5話

「……な」


 よほど予想外のことだったのか、陛下は言葉を詰まらせた。


「騙せてしまった誰かがいるなら、私が陛下を騙せない理由がなくなります」


「いや、違う! 君は確かに私の――」


「証拠があるのでしょうか。あやふやなものではなく」


 じっと深青の瞳を見つめる。

 陛下は、目を彷徨わせていたが、やがて観念したように息を吐いた。


「……君が自身に消失魔法を使ったあと、私は倒れた」


 ……消失魔法。

 そう頭の中で反芻した時、知識が蘇った。

 理論はわかっていないが、魔力で対象を包み、消えろと念じたら、消える魔法。


 でも、消失魔法は対象の質量が小さくても、かなりの魔力を消費する。


 私一人を消そうとしたなら、相当量が必要になったはず。


 1日でどうにかできる量じゃない。

 魔術師団長とは言え、一週間以上かかるだろう。


 その日だけでなく、何日も願っていた、ということになる。


「消失魔法を使うほどに……私は追い詰められたんですね」

「!!」


 陛下が息を呑む。

「っ!」

 なぜか、ノクト様もショックを受けているように見えた。


 死にたいではなく、消えたいと願ったかつての私。

 何も残さず消えてしまいたかったのに、こうして記憶をなくして生きている今の私を見て、何を思うんだろう。


「申し訳ありません。……話が脱線してしまいましたね」

「……いや」


 陛下が首を振る。



「すまない、ロイゼ。私が君の言葉を信じていれば、こんなことにはならなかった」


 別に責めたいわけじゃない。

 正しくは、今の私はそうされた記憶が無いから、責めることに何の意味もない。



「いえ。先ほども言った通り、今の私に謝罪は必要ありません」



 胸がすく思いも、優越感もない。


 ただ、忘れてしまった思いに、悲しさが募るだけだ。


「……ロイゼ」


 泣きそうな顔だった。

 でも、そんな顔をされても慰めることはできない。

 

 もしかしたら、私は記憶と一緒に、なにか大事なものを置いてきてしまったのかもしれない。


「話を戻しますが――、陛下がお倒れになったことと、私の魔法の関係性は解明されているのでしょうか?」


 ただの偶然ではなく、それが運命の番によるものだと。


「……ああ」


 陛下が頷く。


「私は倒れた後、しばらくして、竜の姿になった。これは、運命の番の危機の証に他ならない」


「どういう意味でしょうか?」


「竜王族の王は、女神と盟約を結んでいる。――その盟約があるからこそ、私はこの姿をとれるのだ」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
盟約とか番とか言ってるけど、それって結局は外部的理由だしな。 それなら、仮になんらかの手段で正式にエルザに番の能力を譲渡できるならエルザでもいいわけだ。 今も直言はしていないが「番の」君が良いと言って…
ロイゼが、拾った情報から冷静に自分の状況を把握できる人物で良かった……! 現状、お相手となるだろう男性陣がヘイト集め過ぎてて、「えっ、ここから入れる保険があるんですか?!」状態なんですよね。 すれ違…
番のお話ってほとんどか番同士くっついて欲しくないのか多いなあ。このお話も消失魔法を使わせるほど追い詰めておいて番だと分かった途端に掌返し。できれば別の人とハッピーエンドになってほしいけど解呪不能の呪い…
2025/04/12 17:54 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ