4話
「もちろんだ。――だが、君は優秀な魔術師だったと聞いている。それこそ魔術師団長になれるほどに。だから……」
陛下はそこで言葉を切り、私を見つめ返した。
「魔法が使えるかどうか試してからでも、仕事を探すのは遅くはない」
――たしかに。
生活に関する知識は残っている。
魔法はまだ使おうとしていないから、なんとも言えないけれど。
「わかりました。ありがとうございます」
「ひとまず、君の進退が決まるまで、この部屋を居室としてはどうだろうか」
こんな豪華な部屋を、私が?
「有難いお話ですが……私が元々使っていた部屋はないのでしょうか」
あくまでも求めるのは必要最低限だ。こんなにも豪華絢爛な部屋は身に余るし――、そもそもここはどこだろう。
「君は、魔術師の住む寮に暮らしていた。つまり、他の魔術師とも顔を合わせることになる」
――なんとなく、言いたいことがわかった。
魔術師団長なのに、記憶が無い私の存在は混乱を招くということだろう。
「……こちらで過ごす方がいいのですね」
「すまないな」
「いいえ。ありがとうございます……ところで、ここはどこなのでしょうか」
貴族の誰かの屋敷か何かだろうか。
それにしては、かなり煌びやかだからよほど高位の――。
「城の一室だ。隣には私の部屋もあるから、警備面は安心してほしい」
「!?!?」
城の一室!?
しかも、隣は陛下の部屋!?
――止まっていた冷や汗がでてきた。
「私がこの部屋を一時的とはいえ、居室とすることは、誤解を招くのではないでしょうか?」
だって、一国の主人の隣室だなんて。
その部屋が、与えられるべき人は決まっている。その妻――つまり、王妃だ。
「誤解?」
けれど、陛下は目を瞬かせた。
「君は、私の運命の番だ。私の隣室に住まうのに相応しいのは、君――ロイゼ以外いない」
運命の番――来世もと誓い合った恋人。
でも……。
「私には、記憶がありません」
その愛し合ったはずの前世も、陛下を再び求めたはずの今世も。
どちらの記憶もない今の私は、はたして、陛下の運命の番だと言えるのだろうか。
「そうだな。だが、記憶がなくとも、間違いなく君が運命の番だ」
……でも。
「運命の番を騙った女性がいたようですが、私にも偽物の可能性があるのではないですか?」
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