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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
三章 私という存在

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1話

 ――ぼたぼたと涙を流す、美しいひと。

「……ロイゼ」

 彼は泣きながら、誰かの名前を呼んだ。


 誰のことだろう。

 私を見てそう言ったから、もしかして、私のこと?


 ――私はロイゼという名前なのかな。


「……あの、私、そのロイゼというひとなのでしょうか」


 彼が目を見開く。


「まさか……わからないのか? ……自分のことも」


 頷く。

 彼が流しているのが涙だとわかる。

 言葉もわかる。


 でも、私が誰なのか、彼が誰なのか、何一つわからない。


「っ、医者を――!」


 そう言って彼が部屋を出ていく。


 そこで改めて、部屋を見まわした。


 金の刺繍が施されたカーテンに、天幕つきのふかふかなベッド。


 とても、豪華な部屋だ、と思う。


 ――ここは、どこだろう。


 ――なぜ、私はここにいるのだろう。



 何一つ、わからない。

 思い出せない。


 ただ、今さっき知ったのは、私の名前がロイゼらしいということだけ。



「なぜ、忘れてしまったんだろう」


 彼の表情は、深い絶望が映っていた。

 つまり、私の記憶がないことを知らなかった、顔。


 ……ということは、突発的な何か――頭を打っただとか、事故にあっただとか。


 そういうことだろうか?


 でも、見たところ私に外傷はなさそうだ。


「考えても仕方ないか」


 医者を呼んでくる、と言っていたから、すぐに彼も戻ってくるはずだ。

 その時に、聞いてみよう。



 ――ノック音がして、その音と共に、数名が部屋に入ってきた。


「ロイゼ!!!」


 そのうちの一人――黒髪に金の瞳をした綺麗な男性が、私に駆け寄った。

 綺麗な人だけど、顔色が随分悪い。


 何かあったのかな。



「――何も、覚えていないの?」


「あなたも、きっと、私の……知り合い、なのですよね?」


 こんなことを言うのは申し訳ないな、と思いつつ、続ける。


「でも、わかりません。私が、誰なのかさえ、何一つ思い出せないのです」


 男性が、崩れ落ちる。

 よほど、ショックを受けたのだろう。


「……ごめんなさい」



 でも、こんなに衝撃を受けるということは、この男性は私の恋人か何かだったのかな。


 それだったら、本当に申し訳ない。


 でも、今の私には謝ることしかできなかった。


「ひとまず……医者を呼んできた」


 先程、涙を流していた美しい銀髪の彼が、初老の男性を示した。


 その人が、医者のようだ。

 数人に見守れながら、いくつか医者に、質問されそれに淡々と答えていく。


「……なるほど」


 医者は頷き、私を見た。


「あなたは、どうやら逆行性健忘のようだ」

今話より三章スタートです!


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
続きも楽しみにしています!
ルートはいくつか考えられますが、是非とも作者様が満足できる作品として完結させてください。 まあ、今のところノク・ハロ・エルマ全員、評価地の底なんですが(笑)これも作者様の力量だろうなあと。
>「あなたは、どうやら逆向性健忘のようだ」 ついでというか、前世+番の特性のほうが消滅すればいいのにね。 前世なんて覚えてるから今世が振り回されて、今世を犠牲にする余計な不幸になってる。 消滅魔法…
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