ハロルド 0-2話
「いつでもこの翼で飛んできてくれるの?」
ミルフィアが桃色の瞳を輝かせて、私を見た。
「もちろん。フィアがそう望むならね。……ああ、でも屋内はやめて欲しいかも」
付け加えた言葉に、くすくすとミルフィアが笑う。
「だったら、屋外にするね!」
「……安心した?」
「うん!」
大きく頷いて、陽だまりのような笑みで私を見つめる、婚約者。
「わっ!」
私はもう一度、ミルフィアを抱き上げくるりと回る。
「もー、アレクったら。……アレク?」
ミルフィアは真剣な顔をした私に戸惑った顔をした。
私はそれに答えず、ミルフィアを下ろすと、跪く。
「ミルフィア、今度の初めての夜会で、私の色を着てくれる――?」
私の色。
竜王家に伝わる、銀の髪に深青色の瞳の色。
初めての夜会で、重いと思われるかもしれないけれど。
でも、私は……。
「もちろん!!」
大きく頷いたミルフィアは、そのまま私に近寄った。
額に、やわらかいものが、触れる。
「!?!?!? フィア!?!?」
顔が赤くなってるに違いない私を、ミルフィアは、笑う。
「素敵にエスコートしてね。私の婚約者さま」
「もちろん!」
私はもう一度、ミルフィアを抱き上げるとその柔らかな頬に口付けた。
途端に真っ赤になるミルフィアが、愛らしい。
「……もう! アレックスったら」
「さっきのお返し」
笑い合って、見つめ合う。
――とても幸せだ。
そして、迎えた初めての夜会。
「フィア、綺麗だよ」
約束通り、私が贈ったドレスに身を包んだミルフィアはとっても綺麗だった。
「アレクもとっても素敵よ」
嬉しそうに、はにかんだミルフィアを、抱きしめたい衝動に駆られる。
けれど、ミルフィアはすぐにレディの表情に戻ったので、私も自分を律した。
「では、いこうか」
「はい」
ミルフィアの手を取る。
私たちの婚約披露のための夜会だから、ファーストダンスを踊るのだ。
父上と母上の紹介と共に、お辞儀をして、ホールの中央へ。
「……ふふ」
ミルフィアが楽しそうにダンスを踊る。
「フィアはダンスが本当に好きなんだね」
密着する場面で、ひそひそ話しているとミルフィアは瞳を瞬かせた。
「ううん。アレクとのダンスが好きなの」
だから、先生と何度も練習したの。
――大好きなアレクとちゃんと踊れるように。
「!!」
かっ、と頬が熱くなった。
「ふふ、アレク顔が真っ赤よ」
からかってくる愛しい婚約者をじとりと見る。
「……フィアのせいだよ」
「それならよかった」
そう言って微笑むような、手練手管を、いったい誰に教わったのか。
私の姉ならいい。
これで天然なら、将来ミルフィアが誰かに取られかねない。
将来に若干不安を覚えつつも、楽しくファーストダンスは終わった。
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