表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/80

ノクト 1-1話

 これで――僕に教えられることは無くなった。

「ロイゼ」

 その名を、呼ぶ。

「はい、ノクト様」


 僕は、手を差し出した。

「ロイゼ、これからはもう僕は君の師じゃない。これからは――、君の友でライバルだ」

 ロイゼが僕の手を握り返す。


「ありがとうございます、ノクト様。あなたが私の師でよかった」


 そう言って笑った顔が、僕だけを見つめた、紫水晶の瞳が、今、走馬灯のように駆け抜ける。




「ああああああああ!!!!!!!!」


 叫ぶ。

 みっともなく、ロイゼが座っていた椅子に、縋りつく。

 そんなことをしても、そこには輝く光があるだけだ。


 やがてその光さえ、消えてしまった。



「ロイゼ、ロイゼ、……っ!!!!!」


 ロイゼが使ったのは、消失魔法。

 僕が教えた、最後の魔法。


 消えたかったのか。

 死にたかったのか。

 そこまで――僕が君を追い詰めたのか。



 ただ、頼って欲しかったんだ。

 君と僕の間に隠し事があるのが嫌だったんだ。


 竜王陛下のことが好きだと知って嫉妬したんだ。

 僕だって、ずっとずっと君が好きだったから。



 君が、ロイゼが、嘘をつくはずないのに。



 ロイゼは、隠し事はしても嘘はつかない。

 それが君だった。

 それが君だと知っていた。


 だって、8年君をみていた。

 ずっと、君だけを、みていた。


 ずっと、ずっと、みていたんだ。


 それなのに。


 目の前にあるのは、空の椅子。

 そこに君のぬくもりを探す。



 けれど、そこにはもう冷たい革の感触があるだけだった。




 ――きっと、僕が、殺した。

 

 僕の言葉が君を追い詰めた。



 煌めく紫水晶の瞳、濃紺の髪の女の子。

 笑うとまるで太陽のような、僕の大好きな子。


 そんな君を、僕が。


「……っ、……っく」


 

 エルマ嬢が選民思想が強いのに、ロイゼを親友に選んだこと。


 ロイゼが僕に隠し事をしたこと。



「ロイゼ……」



 きっと、僕には何度も助ける機会も気づく機会もあって。



 でも、僕は自分の幼稚な嫉妬心のために、迷っていたロイゼの背中を押した。


 嘘をついてまで、僕がそう言ったときの君の瞳には間違いなく絶望が映っていた。



「僕が……殺したんだ」



 消えろ、と自分で念じるほどに、君を追い詰めた。


 一朝一夕で、貯められる魔力じゃない。

 きっとずっと迷ってて、その最後の一歩を踏み出さずに踏ん張っていた。


 それでも。

 その最後の一歩を踏み出させたのは紛れもなく――僕だった。



「……ロイゼ、ロイゼ」


 とめどなく溢れる涙も、君を呼ぶ声も、とまるところを知らない。


 いつものように、どうしました、と少し首を傾げて笑って欲しい。


 あの紫水晶の瞳に僕を映して欲しい。


 そして、これが悪い夢であったらいいのに。



 ――やがて僕の叫び声を聞きつけた同僚が入ってくるまで、ずっと、僕は、ロイゼの名前を呼び続けていた。


 

 

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
嫉妬であんな言葉ぶつけるとか、アフォ過ぎて乾いた笑いが出たわw おまえも消失魔法使って消えちゃえYO! あ、その前に略奪女潰してからね。
 うん、真のヒーローはどこだ? 竜王でもノクトでもない、第三者と幸せになって欲しいな。
ノクトがヒーロー役じゃないの? あまりにも幼稚すぎて驚いた これならロイゼは一人で強く生きてほしい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ