ギャルと黒髪ショートボブ②
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「……………………………クフ♪」
口の端を吊り上げ、神森陽菜は不気味に嗤った。
「……どういう意味だし」
しゆのさんが怪訝な表情で神森陽菜を見る。
というか、彼女……一体何を考えているんだ……。
「あーあ……せっかくここまで色々と仕込んで、大分いいところまで行ったのに全部台無しかあ……」
そう言うと、神森陽菜は肩を竦めてかぶりを振った。
「あは、観念した?」
「ですね。まあ今回は、ポンコツだと分かっていながらも、彼がそれ以上に使えないと気づけなかった、私のミスです」
ヤレヤレといった表情で悪びれもせずそう言い放つ神森陽菜に、俺は違和感を覚える。
コイツ……今、『今回は』って言わなかったか?
「なあ……そもそもなんでこんな真似をしたんだ?」
さっきの違和感もさることながら、そもそもここまでする動機が知りたい。
一歩間違えば、自分自身の人生がメチャクチャになるかもしれないのに。
「クフ♪ 決まってるじゃないですかあ……それは私がセンパイのこと、大好きだからですよ」
神森陽菜は、ニタリ、と嗤いながら上目遣いで俺を見つめる。
「……俺は、君にそこまで好かれるようなことはしていないし、そもそもこんなことがあるまで君を知らなかったんだぞ? なのに、どうしてそこまで俺のことを好きになれるんだ?」
「いいんですよ、センパイが私のことを知らなくても。私はちゃあんと知ってますから」
不気味に嗤う神森陽菜に、俺の背中に冷たいものを感じた。
「フン! どうせ塔也の優しさを勘違いして、勝手に塔也がアンタに気があると勘違いしてるだけだし!」
しゆのさんが鼻を鳴らし、神森陽菜を睨みつける。
「クフ♪ たかだか数か月程度でセンパイの彼女気どりですか、おめでたいですね」
手で口元を押さえ、クスクスと嗤う神森陽菜。
俺からすれば、一日たりとも交わることがなかった彼女こそ、しゆのさんに言う資格はないと思うが。
「あは! ただのひがみだし! アタシと塔也が仲が良いの、妬んでるだけじゃん!」
そう言うと、しゆのさんがべーっと舌を出し、俺の腕に抱きついた。
その仕草に、この状況で不謹慎ながらメチャクチャ可愛いと思ってしまった。
「……クフ、私は五年もセンパイのこと知ってるんです。あなたみたいなギャルビ〇チと一緒にしないでくださいよ」
「「はあ!?」」
俺としゆのさんが思わず声を上げる。
五年!? 五年て言ったかこの子!?
「……塔也、どういうことだし?」
しゆのさんが疑うような視線で俺を見る。
「い、いやいやいや! 知らない! 俺、会ったこともないから! 大体、俺は中学がこの近くじゃないんだぞ!?」
「くふ♪ 私も“桐林中学”出身ですよ?」
「っ!?」
まさか……!?
「お、俺と同じ中学……」
俺はわなわなと指を震わせながら神森陽菜を指した。
「クフ♪ 忘れもしません。私は中学一年の時にセンパイと運命の出逢いをしたんです……」
神森陽菜は、恍惚とした表情で語り始めた。
◇
私が塔也センパイと出逢ったのは中学一年の春。
入学したばかりの私は、引っ込み思案な性格もあって、周りと全然馴染めずにいた。
小学校の時に仲が良かった友達は別のクラスになり、クラスでどんどん浮いた存在になっていった。
独りぼっちの私の居場所は、いつも図書室の片隅。
人気がなく、生徒も寄り付かないこの場所はまさにうってつけだった。
でも、この図書室には先客がいた。
それが……池田塔也センパイその人だった。
彼は昼休みになれば必ずここに来て、教科書と参考書を開いて黙々と勉強していた。
何が楽しくてそんなに勉強しているんだろう……。
最初は変わり者だな、と思いながら、私はといえば本を読みふけっていた。
でも、彼はいつも真剣な表情で、必死になって勉強していた。
まるで、人生でも懸けているかのような、それくらい切羽詰まっているような。
興味の湧いた私は、塔也センパイのことを調べてみた。
勉強ばかりしてるから、クラスでも少し浮いた存在ではあるけど、それでも生来優しい彼はクラスメイト達からは好かれていた。
テスト前になれば、塔也センパイに頼る人達もしばしば。
センパイも元々人懐っこい性格なのか、面倒見も良いし、明るいし、よく笑う。
……変わり者なのに、私とは全然正反対の人だった。
私はますます惨めな気分になり、いつしかセンパイが図書館に来るたびに恨みがましい視線を向けるようになっていた。
そんな日々を送って三か月が過ぎ、もうすぐ夏休みが始まろうとしていた頃。
急に転機が訪れた。
あのいつも明るくて優しかった塔也センパイが、図書室に来るなり泣き出したのだ。
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次回は明日の夜更新!
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