萩月家の語らい
ご覧いただき、ありがとうございます!
本日から幕間、スタート!
■萩月しゆの視点
「あ、い、池っち……」
アタシがお母さんと、その……お父さんと心を通わせた、その時、池っちは席を立つと、アタシを見て微笑みながら頷き、お店を出て行った。
お母さんとお父さんは、そんな池っちの背中を見ながら、深々と頭を下げた。
「しゆの……」
「しゆのちゃん……」
「あは……池っち、らしいよね……」
池っちはいつもそうだ。
さりげなくアタシに寄り添ってくれて、いつもアタシをそっと見守ってくれる。
今回だって、アタシ達親子が仲良くなれるように、アタシに内緒でお母さんとお父さんにアタシの想いを伝えてくれていて……。
「ね……しゆの……今日はあなたのお話、たくさん聞かせて? もちろん、塔也くんとのことも、ね?」
「あは……それだと、今晩だけじゃ足らないかもだし」
「はは、それは楽しみだなあ」
「ふふ……ええ」
アタシも、お母さんも、お父さんも、お互い顔を見合わせて微笑み合う。
これも、池っちが叶えてくれたもの。
アタシ達は場所を移すため、お店を出てお父さんの車で自宅へと帰った。
そして、三人でいろんなことを話した。
アタシの想い、お母さんの想い、お父さんの想い……ホント、最初からこうやって話し合えばよかった。
そうすれば、アタシも家を飛び出したりなんて……って、ダメだし! ちゃんと話し合ったりなんかしたら、池っちのこと分からないままだったし!
それこそ、学校のクズ共と同じ、アタシもクズのままだったし……。
だ、だから、チョット回り道したけど、これは必要だったんだし! うん!
そ、それよりも、お母さんとお父さんの馴れ初めとかも聞いてて楽しかった。
まさか、お父さんが女の人が苦手だったなんて。
しかも、お母さんもお父さんも、最初は男女というより相棒って感じからスタートしたっていうのもビックリだった。
まあ、そうじゃなかったら、女の人が苦手なお父さんが、お母さんとまともに会話したりできないかー。お母さん、娘のアタシが言うのもアレだけど、すごく美人だもんね。
で、お母さんはお母さんで、そうやってお父さんが(相棒として)傍にいてくれて、支えてくれているうちに、絆されて……って、何だかアタシと池っちの関係に似てるかもだし。
「……で、私達の話はこれくらいにして、あなた達はどうなの?」
「あ、あは……」
お母さんが興味津々といった感じでアタシに尋ねる。
だけど、どうって言われると……。
アタシは少し俯きながら、池っちとのことについて話した。
お金が尽きて、SNSであんなこと呟いちゃうくらいに困り果てていた……追い詰められていたアタシを、池っちが助けてくれたこと。
池っちは実の両親から、いつも弟と比べられて、貶されて、頑張っても認められなくて、そんな環境から逃げ出すために一人暮らしをして頑張っていること。
そして、新天地だった高校で、池っちは冤罪を着せられ、学校中から嫌われていたこと。
その中には、もちろんアタシも。
でも、ホントの池っちは全然そんなことなくて、優しくて、思いやりがあって、恥ずかしがり屋で、そして、女の子をすごく大切にする男の子だった。
だからアタシは、そんな池っちへの理不尽な仕打ちをなんとかしようと、葵や後藤と一緒に噂の真相を調べて、池っちの冤罪を晴らしたんだ。
あは……あの時の池っち、カッコ良かったな……。
その時には、アタシは池っちのこと、もう好きになってたんだと思う。
でも、アタシが池っちのお世話したりするのは、家で居場所を失くした“代わり”としてだって、そう思ってて……。
……そして、アタシは池っちに“代わり”だなんて、あんな酷いこと……!
「……なのに池っちは、自分がアタシにとっての“代わり”になれたから幸せになれたんだって……そんなこと言ってくれて……!」
ダメだ……あの時のことを思い出すだけで、アタシは胸が苦しくて、張り裂けそうで……。
「そう……しゆのは、塔也くんに言ったその言葉のせいで彼を苦しめたんだって、そう思ってるのね……?」
お母さんの問い掛けに、アタシはコクリ、と頷いた。
すると。
「はあ……しゆの、あなたも不器用ね……」
そう言うと、お母さんは額を押さえてかぶりを振った。
「いい? 塔也くんは、本当にあなたの言葉で、苦しんでると思う?」
「…………………………」
お母さんの言葉に、アタシは何も言い返せなかった。
「そもそも、塔也くんが本当にそう思っているなら、どうしてあなたのためにここまでしてくれるの?」
「それは! ……それは、池っちの“噂”のことがあったから、それで池っちは負い目を感じて……」
「しゆの」
お母さんが真剣な表情でアタシを見つめる。
その瞳は、少し怒っているようにも見えた。
「そんな“負い目”だとか、そんなこと程度でここまでしてくれると、そう思ってるの?」
「だ、だけど……」
「いい? そんな負い目だけで、私やお父さんにあそこまで言ってくれたりする訳がないの。それでも、あなたの想いを伝えてくれて、頭まで下げて……そこまでしてくれたのはどうして? しゆの、あなたのためだから……あなたが誰よりも大切だから、でしょ?」
「…………………………」
「だから……あなたが本当にしなきゃいけないのは、塔也くんに負い目を感じることじゃなくて、塔也くんにあなたの想いを伝えて、あなたが塔也くんの想いに応えることなの」
「っ!」
アタシが、池っちの想いに応える……?
「……塔也くんのこと、世界一好きなんでしょ?」
「……うん」
「だったら……ちゃんと伝えなきゃ分からないわよ? 私達みたいに、想いを伝えないせいで大好きな人とすれ違ったりするなんて、悲しいでしょ?」
「うん……うん……!」
池っちとすれ違うだなんて、イヤだし……!
そう考えただけで、アタシの瞳から涙が止まらなくなる。
「ふふ……じゃあ、朝になったら塔也くんのところに行かないと……ちゃんと想いを伝えに、ね?」
「うん……!」
アタシは目一杯頷く。
明日……アタシは池っちに、アタシの想いを伝えるんだ。
池っちが……世界一大好きだって。
「ふふ、何だったら、塔也くんが寝ている隙に、裸で添い寝でもしてあげたら?」
「あああああ!? お、お母さん!?」
そそ、そんなのムリだし! ハードル高すぎだし!
「えー、じゃあおはようのキスとか?」
「キキキ、キス!? ……キス……」
キ、キスだったら、もう池っちとしたし(寝てる間にだけど)……な、何とか……うん……。
「あー……そういえば、そんなことあったねー……」
お父さんがほっこりした表情で、思い出し笑いをしている。
お母さん……今言ったこと、お父さんにしたんだ……。
でも……そうだよね……。
池っちが世界一大好きなんだったら、この気持ち、ちゃんと伝えないと……!
そう思ったら、アタシはみるみるやる気が出てきた。
うん! アタシ、池っちに告白する! それに、元々そのつもりだったし!
そうだ! せっかくだから、裸で添い寝やキス……って訳にはいかないまでも、サプライズで池っちが寝てる間に朝ご飯作ってあげたりしたら……あは、池っち、絶対喜ぶよね!
うん、そうと決まれば!
「お母さん、ありがとう! アタシ、頑張るし!」
「ええ! 何だったら、既成事実だって作っちゃいなさい!」
「きききき、既成事実!?」
ホ、ホント何言い出すの!?
ま、まあ、お母さんの暴走は置いといて……。
「あは! 池っち……アタシの想い、ちゃんと受け止めてね!」
そう叫ぶと、アタシは深夜のテンションのまま、右手を高々と突き上げた。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は今日の夜更新!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




