ギャルの幸せと俺の幸せ
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「ああコレ? いや、録音したさっきの会話、うちのクラスのグループにRINEで一斉送信しただけだし」
「「はああああああああ!?」」
萩月さんから放たれた爆弾発言に、須藤花凛と男は目を白黒させながら絶叫した。
「ちょ、ちょっとアンタ!? なんでそんなことしたのよおおお!?」
「そ、そうだ! まだ俺達の話は終わってなかっただろおおお!?」
二人が必死の形相で萩月さんに詰め寄ろうとするが。
——ドン!
「萩月さんに近寄るな!」
俺は二人を突き押すと、二人はよろけて尻餅をついた。
というか、絶対に萩月さんに近づけさせるかよ。
でも俺……荷物整理のバイトのお陰で結構力がついたかも。
「なあなあ」
チャラい男がヘラヘラしながら座りこんでいる二人に近づき、肩をポン、と叩いた。
「ま、こうなることは分かってたんだろ? じゃなきゃ、萩月ちゃん襲って言うこと聞かせようなんて発想、出てこないもんなー……オイ、何とか言えやコラ」
「ヒッ!?」
するとチャラい男の様子が一変し、鋭い目つきで男を睨んだ。
うーん……ひょっとしたら不良かなにかかもしれんな。
だけど、古賀葵といいこのチャラい男といい、俺としては感謝しかない。
二人がいたお陰で、萩月さんが危険な目に遭わずに済んだんだし……。
「さーて、今頃学校の中ではどうなってるかな? つーか、池っちの時もあっという間に学校中に広まったんだ。しかもご丁寧に『拡散希望』のタグまでつけといたから、まあ、アンタ達の居場所、もう無いかも?」
「「…………………………」」
そう言うと、萩月さんは二人にニヤリ、と口の端を吊り上げた。
そして二人はといえば、無言でうなだれたままでいる。
「あは! 池っち、帰ろ!」
萩月さんが俺の腕にしがみつくと、満面の笑顔で俺の顔を覗き込んだ。
「萩月さん……ああ、帰ろう」
俺達はもう用件は終わりとばかりに、体育館裏を後にしようとして。
「「あ、そうそう」」
「「え……っ!?」」
——ガンッ!
俺は男の、萩月さんは須藤花凛の顔面に一発お見舞いした。
「二度と萩月さんに妙な真似してみろ! 絶対に息の根止めてやる!」
「二度と池っちに近づくな! 今度そのツラ見たら、もっと酷い目に遭わせてやる!」
「「ヒイイッ!?」」
二人が殴られた頬を押さえながら、尻餅の状態で後ずさりする。
「あは! 池っち、やるじゃん!」
「萩月さんこそ、カッコイイよ!」
「……ぷ」
「……ぷぷ」
「「あはははははははは!」」
俺と萩月さんはおかしくなってしまい、大声で笑った。
ああ……。
萩月さんがいるだけで、楽しくて仕方がない。
萩月さんがいるだけで、幸せで仕方がない。
俺は萩月さんが隣にいてくれて、笑顔でいてくれる幸福を噛み締めながら、俺達の居場所……あの部屋に帰った。
◇
「池っちー……そんな、怒んないでよー……」
で、俺達は部屋に戻るなり、萩月さんへの説教タイムが始まったところだ。
「駄目だ! 万が一萩月さんに何かあったらどうするつもりだったんだ!」
「ホ、ホラ! ちゃんと葵と後藤が控えてたし、いざとなったらコッチに加わる手筈になってたし! ね?」
あの二人には堂々とした姿を見せていた萩月さんだが、さすがに今は、俺に許しを請おうと愛想笑いを浮かべていたりしている。
だけど……今回ばかりはちゃんと言っておかないと。
「確かにあの二人がいたから良かったけど、それでも、ひょっとしたらってことがあったかもしれない。俺は……俺のせいで君に何かあったら、それこそもう耐えられない……」
「あ……池っち……」
「だから……約束して欲しい。もう二度と、こんな無茶な真似はしないと」
俺は縋るように萩月さんに頭を下げてお願いした。
だって、萩月さんが傷ついてしまったら……萩月さんを失ってしまったら、俺は今度こそ壊れてしまう……。
すると。
「池っち……ごめん……ごめんなさいいいい……!」
萩月さんは涙をぽろぽろ零しながら、俺の胸に抱きつき、肩を震わせた。
「俺のほうこそ、ごめん……俺のせいで萩月さんが頑張ってくれたのに、こんなこと言って。だけど、俺にとって一番大切なのは、萩月さんなんだ。萩月さんの幸せだけが、俺の幸せなんだ……」
「うん……うん……! アタシだって、池っちの幸せがアタシの幸せだしい……!」
俺と萩月さんは、お互い涙を零しながら、強く抱き締め合った。
◇
——ピコン。
「あ、RINE来たし」
説教タイム終了から一時間経ち、萩月さんと晩ご飯の食材を買いにスーパーに出掛けていた時、彼女のスマホにメッセージが届いた。
「あは! 池っち見て!」
「ん? ……って、えええええ!?」
そこには、須藤花凛と男の二人だけが映った動画が流れていた。
しかもご丁寧に萩月さんの姿が映らない恰好で。
「これって……ひょっとしてあのチャラい男が撮影してたヤツ?」
「あは、そうそう。ちなみにアイツの名前は“後藤蓮”ね」
しばらくその動画を眺めていると……ちょ、ちょっと待って!?
「なんで俺だけしっかり映ってるんだ!?」
なんと、俺が萩月さんを救いに現れたところは見切れておらず、バッチリ映っていた。
「あ、あは……コレ、後藤がネットにアップしてるから、広まりまくってるかも……」
「ええええええええええ!?」
な、なんてことを……。
俺はスーパーの中であるにもかかわらず、その場でガックリと膝をついてしまった。
「だ、だけど、これでみんなの池っちへの評価も変わるかもだし、その……ねえ……?」
うう、そんな慰めいらないから……。
なお、後日分かったことだが、萩月さんはこの時の動画……しかも俺が映っている部分だけ編集されたものをスマホに入れて、たまに見ていたという……。
は、恥ずかしい……。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は今日の夜投稿予定!
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