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今度のヒーローは……悪の組織の戦闘員!?  作者: marupon
第二部:『改人戦線』
51/140

第四章:04



・・・



作戦は成功したようだ。

空を見上げ、落下してくるノー・フェイスと大改人をとらえる。

既にステイシス・フィールドは全ての電源装置を破壊され、

ダウンしている。



取り囲むフェイスたちをけん制し、タイミングを測り――

"力ある言葉(ロゴス)"を発動させる。



「"アタール・ヘイロー"ッッッ!!!」



炎の光輪が、弧を描いて飛んでいく。狙い過たず――大改人の

背につきささる。


遠くうめきが響く。そのまま、大地に激突した。

もうもうと土煙がたちこめる。



ザッ、と飛び出てきたのはノー・フェイスだ。アルカーの横に並び立つ。



「うまくいったな」

「ああ。738便も、離脱したようだ」


機首を南にむけ戦域を離脱していく旅客機。既に受け入れ態勢が整っている

静岡空港へ向かうのだろう。フェイスダウンのヘリも追跡はしない。

まずは、一安心というところだ。



「あなたたち……!」



地獄の底から響くような、怨嗟の声が土煙の中から沸いてくる。

大改人、シターテ・ルだ。最強の改人が激昂している。

もともとおぞましい容貌が、怒りに歪んでさらに醜く見える。


「よくも……よくもッ! この私を……ここまでコケに

 してくれたものね……!!!」



ばぎばぎばぎ、と改人の装甲が変化していく。とげとげしく、

より攻撃的な姿へと、変貌する。



「……処刑だわ。おまえたち全員! 処刑してやるッッ!!」



咆哮する、蟷螂。それだけで旋風が巻き起こるほどの圧倒的な力だ。

アルカーと比べてすら遜色がない。

だが


「……怒ってるのはこちらも同じだ」


ノー・フェイスが腕輪を握り締め、怒りをこめて呟く。

アルカーも、同じ気持ちだ。



「フライトは楽しんだか?

 ここからは、昆虫採集の時間だ」



・・・



カマキリ型改人が、音を置き去りにして突撃してくる。

以前はまるで見えなかったが、アルカーとなった今ではノー・フェイスの目にも

とらえることができた。とはいえ、尋常ではなく早い。


相手の攻撃にあわせ半歩身をずらし、串刺しにしようとする鎌を回避する。

迂闊に手を伸ばしたりはしない。まずは相手の動きを見切ることに専念する。


アルカーも、同じような判断だ。ただし威力偵察がわりに牽制攻撃を繰り返す。

彼の最初の一撃によって、大改人は飛翔能力に制限がかかっているらしい。

が、戦闘速度に影響は見られない。


(……御厨と桜田たちの話では……)


CETの調査により、この改人は全力機動を行うと熱がたまり、

放散するのにわずかな隙ができることがわかっている。狙うなら、そこだ。


(まだだ……)


心中で数え、大改人の動きを見つめる。熱により動きが鈍るタイミングが

あるはずだ。それを見極め、攻撃をかわし続ける。



鋭い斬撃を身をそらしてかわし、続けて振り降ろされる鎌をうちはらう。

だがその際に右腕を切りつけられ、損傷する。



決定的な打撃は受けない。が、細かい裂傷が蓄積している。



(――まだか!?)



妙だ。

事前の推測で導き出されていた最大機動時間を越えている。

いや、それどころか――さらに早くなっていないか?



ぼぅん! と大改人の全身から蒸気が発生する。

高熱が体液を蒸発させ、大量の水蒸気となったのだ。



「――おほほほほほ! こざかしいことを考えていたようね。

 でも……あの程度の接触で女を理解したつもりになるなんて、

 あさはかというものよ!」


いったん距離をとったシターテ・ルが高笑いする。

全身の甲殻がひらき、そこから放熱板のような翅がとびでる。

翅は赤い鱗粉を撒き散らした。いや、これは赤いのではない。

()()()()()()()()()()のだ。



「――そういうことか!」



おそらく、体内に溜まった熱を鱗粉に集めて放出しているのだ。

いわば、奴の冷却システム。これにより長時間全力機動を行っても、

熱を体内に溜めることなく逃がしているのだ。



「……いわば、これが奴の本気か――!」



アルカーも舌打ちする。どうやら、事前の作戦は全て帳消しになったようだ。

……底知れない相手だ。やはり、他の改人とは明らかに一線を画している。



きぃぃぃぃぃ、と甲高い音が徐々に大きくなりながら鳴り響く。

そして――吶喊してくる!



「くおっ……!」



危ういところでかわすも、胸のプロテクターに大きな傷跡が残される。

慌ててふりむくがすでに大改人はいない。

苦悶の声にアルカーの方をみやると、彼も一撃をうけてうめいている。



やはり、強敵だ。最初に対峙したときほどの絶望感はないが、

それでも二人がかりでなお勝てるかはわからない。



(なんとか、とらえなければ……!)



だが、肉を切らせて骨を断つ――というのも通用しそうにない。

本気を出したことで一撃の鋭さも増している。迂闊にうけようものなら

骨ごとまっぷたつだ。



アルカーとしめしあわせ、森の中に飛び込む。まずは少しでも

時間を稼がねば。



「ほほほほほ!!!」



ざあぁっ! とさざなみのような音を立てて木々がなぎ倒されていく。

なんとか、見つからずにはすんだようだ。


背をかがめてアルカーの元にかけよる。

大きな怪我こそないが、あちこちに擦過傷がある。

音速を遥かに越えた速度で飛び回るため、避けても衝撃波で

わずかながらダメージが入ってしまう。


「……やはり、奴は早い。俺の方ではとらえられそうにない。

 おまえはどうだ、ノー・フェイス」

「……似たようなものだ。だが、"ライトニング・ムーヴ"なら

 ごく短い時間だが奴の速度を越えられる。」



奴が音速を超えるなら、"ライトニング・ムーヴ"は光速に限りなく

近づく"力ある言葉(ロゴス)"だ。いかに奴といえど追いつけまい。



が、あまりに発動時間が短い。

とらえるには精密にタイミングを測る必要があるが、そのタイミング自体が

まともにつかめないのだ。


「……なら、その"タイミング"をとらえる隙さえ生めれば……」

「だが、どうする。攻撃を受ける覚悟で挑んだところで、

 叩き斬られるのがオチだぞ」


アルカーはわずかに沈黙する。

その間にも、大改人は樹木を切り倒して飛び回り、狂ったように笑い続けている。

その軌跡には赤い鱗粉が火の粉のように漂う。


それをみて、アルカーが何かに気づいたように顔をあげた。


「――熱だ」

「何?」

「奴の弱点は、熱だ」


それは戦闘の直前まで推測されていたことだが、結果として覆ってしまった。

もはや奴に、熱暴走の欠点はないはずだが……。


「違う。あくまで奴は、熱を逃がせるだけだ。裏をかえせば、

 熱が溜まれば動けなくなる、ということに変わりはないわけだ」

「……なるほど」


ようは、奴の排熱・冷却能力を破壊する、あるいはそれを越える

熱量を与えればいい、となる。

――そして、アルカーは"炎の精霊"を宿した戦士だ。



熱を扱うのは、十八番(オハコ)だ。



「……仕掛けるぞ」


アルカーが、猛禽のように鋭くささめいた。



・・・



「おほほほほ! 臆したか、アルカー! 木偶人形!」


木々の間を――いや、木々の"中"を飛び回りながら挑発する。

もちろん、口で言うほどあなどっているわけではない。

相手の出方を見極めようとしているのだが――どうやら、

それに乗るような相手でもないらしい。



シターテ・ルは自分自身の性能に絶対の自信を持っている。

それと同時に、その特性を十二分に理解してもいた。


装甲、パワー、耐久力。どれをとっても一般の改人どもに

劣るものはない。が、特筆すべきはやはりその速度と機動性だ。

同じ大改人であっても、彼女についてこれるものはいない。



"最速(LADY)(OF)女王(SPEED)"。自らそう名乗ることさえある。

この世にある全ての物体より、早い。そんな自負を、持っていた。


事実、彼女が出せる最大速度である秒速15.7kmは第二宇宙速度を越える。

その速度は地球を脱出できる早さだ。つまり、この地球上に限れば

彼女を越える存在はない、と言ってもいい。



自分をとらえられる存在など、いない。

その自信がある。



――逆に言えば、とらえられてしまえば彼女の強みの大半は失われる。

だからこそ彼女は止まらない。敵を殲滅するまで、止まることなく

飛び続ける。そうすれば、彼女は負けることはない。



……唯一の欠点は、この速度で飛び回ると周囲の索敵がおろそかになる点だ。

完全な闇に乗じて隠れるアルカーとノー・フェイスを見つけることが

できずにいる。



「……いまいましい連中ね、どこまでも」


痛む背中に歯噛みする。最初に受けた傷が、飛翔機能に制限をかけている。

機動に問題はないが、高度が足りない。



もっとも、あまり高く飛びすぎても攻撃ができない。

そして、連中を前にして逃げるつもりも、逃がすつもりもない。



(……私の計画を! 私の計画を、ここまで台無しにしてくれるとは……!

 許しがたい、許せない、許すものか……ッッ!!!)



激情が全身を支配する。改人の性だ。

こうなっては、自身の衝動を満たすまではとまることがない。



私をとめられるものなど、この世に存在しない。



・・・



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