表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美容室で髪を切ったらモテました。  作者: ねがえり太郎
おまけ2 同級生から見た僕
16/31

私と彼の関係

今回も終わりませんでした<(_ _)>

もう諦めて章を分ける事にしました。サクッと終わる物を求めていた方、スイマセン。もう少し続きます。

 見た目がこざっぱりして近寄り易い雰囲気になった彼は、中身も少し変わったようだ。以前は用事があって声を掛けても遠慮がちな話し方、長い前髪の下で何を考えているか分からない表情で目を逸らすのが普通だったのが、真っすぐ目を見て返事をしてくれるようになった。男子と話している時のようにニコニコ笑う、とまでは行かないのだけれど、カラオケで隣になって以来柔らかい表情を見せてくれる事が多くなったと思う。見掛ける度に彼に話しかけるようになった私に、多少なりとも慣れてくれたのかもしれない。


「アニメ、DVDで見たよ」

「アニメ?」

「ほら、Under_worldのオープニングの。面白いって言ってたから気になって」

「ああ」

「あのね、面白かったよ!私アニメとか普段見ないんだけど―――映像もキレイだし、試合展開とか……あ、あとオープニング!聞いてた通り本当にカッコ良かった……!」


 勢い込んで感想を捲し立てると、彼は目を丸くして私を見ていた。


「あっ……ゴメン!私一方的に話しちゃって……」

「―――いや」


 すると彼はニコリと笑った。


 わっ……初めて私に向かって笑い掛けてくれたかも。ずくん、と胸が疼いてゾワゾワっと背中に震えが走った。吃驚し過ぎて息が止まるかと思った。両手をギュッと握りしめる私に向かって、彼は嬉しそうにこう言った。




「嬉しいもんだね、自分の気に入っている物を褒めて貰えるって」




 照れたように額に手を当てる彼を、思わずマジマジと見つめてしまった。


 ああ、どうしよう。本当に好きになっちゃったかも……!







 そんな風にじっくり距離を詰めて行って、話しかければ一言二言会話らしく応じて貰えるまでになった。今まで付き合った男の子は、良い雰囲気が生まれたなら向こうから「付き合わない?」なんて声を掛けて切っ掛けを作ってくれたものだけれど―――好意を示すアピールをこちらから示しても、まるで手応えみたいなものが現れない。だけど改めて振り返ってみると、そう言う軽い始まりの付き合いは簡単にアッと言う間にばらけてしまいそうで、ちょっと怖い。

 今思えば前カレ達の告白は、笑って流してしまってもお互い傷つかないような……保険を掛けた告白だったように思う。いや、そもそも『告白』と言えるのだろうか?自分のプライドを守ったまま、相手の好意を探る駆け引き。まるで好きになってしまった方が負け、とでもお互い思っているかのようだった。


 だから気持ちを移した彼らを必死に引き留める事もしなかった。私への関心が薄れて行くのを感じて、一人になるのが怖くて不安になりはしたものの、嫉妬に狂って縋ったりする事もしなかった。「それなら仕方ないね」って物分かりの良い振りをして。次の恋を探せば良いってカラ元気で友達に愚痴ったものの、振った相手に不満をぶつける事も無く友達に戻ったように接したりして―――ちょっと相手が怯んで戸惑うのを目にして溜飲を下げたり。


 自分の対応は大人だと思っていた。

 だって真正面からぶつかるのは怖い。本気になるのは……怖い。


 本気になって失ったら、今度こそ空っぽになっちゃう気がした。私を捨てて違う子を選んだ相手に、低い評価を付けられた気分になるもの。だから余裕で居たかった。私の中に占める貴方の分量はそれほど大きな物じゃないんだよ、そう態度で主張したかったのかもしれない。だからこそ今回は……できればキチンと向き合って付き合いたい。


 だけど彼からは私に対する熱意は感じられない。


 私が彼に興味を持っているなんて想像もしていないのかな?嫌われているようには思えないんだよな。……それともまさかのまさかで、彼は私の気持ちに既に気付いていて、その上で放置されていたりして?そうだとしたら好みじゃないから放って置いているのだろうか。若しくは私がジリジリしているのを楽しんでいるとか?それともそれこそまさか、と思うけれども、こんな風に私が焦らされている、その状態が実は『駆け引き上手』だった―――なんて展開では無いよね?!


 だってサークルや合コンで出会う男の子達は、ちょっとでも気が合う部分があったら恋愛対象って感じで距離を詰めて来た。逆に好みじゃない男の子からの勘違いをやんわり交わすのが難しかったくらいで。結構私、彼に対して好意をダダ洩れにしていると思うんだけど―――本当に、本気で気が付いてないのかな?そりゃ、ガツガツ行って嫌われたくないから不自然じゃない程度に気を付けてはいるけれど……。







 そんな風に彼の態度を推し量ろうとして、焦れている私の耳にある日こんな噂が届いたのだった。


「あの子、彼女出来たらしいよ」

「え?」


 我が科のアイドルが何でもない事のようにその噂を口にした時、思わず私の脳は動きを止めてしまった。


 カノジョ……かのじょ……『彼女』?!


「髪型スッキリしたと思ったら、いつの間にか服装もお洒落になって来たよね?それって彼女の影響だったのかな?」

「あっえっと……どうだろ……」


 あの彼に……彼女?そんな、全然女の子に対して免疫が無いように見えたのに?!


 そんな事、まるで想像していなかった、盲点を突かれたような気分になって呆然としてしまう。恋愛経験豊富とまでは言わないけれども、私には彼よりはずっと異性との付き合いに慣れている認識があって、初心な彼にどうやって自分を意識して貰うか、それだけがネックなのだと思い込んでいたのだ―――おかしなことに。


 動揺する私をジッと見つめて彼女は口を噤んだ。彼女には高校時代から付き合っている彼が居るのだけれども、彼との付き合いが安定している所為かあまり周囲の恋愛事に興味を示したりしない。だから私から言い出さない限り、今まで彼女は私の恋愛について下手に詮索したりして来なかった。私が彼に異性としての興味を持っているなんて―――これまでの傾向から考えて、思いも寄らなかったに違いない。


 しかし流石に私の動揺を目の当たりにして、何か思う所があったようだ。


「えっと、あっ……あくまで噂だよ?本人にわざわざ確認していないし、私が直接目にしたわけじゃないし……女の子と二人で歩いている所を見たとか、彼に相手の事を聞いたら照れてハッキリ言わないとか。だからそうなんじゃないかって噂になっているらしいんだけど……もしかしたらホラ、ただの友達かもしれないし……」


 急に視線を逸らして、彼女は慌てたように良く分からないフォローをし始めた。


「従妹とか!妹とか!ね、こういう誤解ってよくありそうだよね?」


 人差し指を空に向けて、明るく誤魔化そうとする彼女の優しさに溜息が出た。

全く……人が好いんだから。




「うん、そうかもね」




 フッと私が諦めたように笑うと、へにょっと眉を下げて彼女も安心したように笑ってくれた。


 浮かれた心に掛かった冷や水で濡れそぼった私を、フワフワのタオルで慌てて包んで乾かそうとするかのような彼女の優しさを無碍には出来なかっただけなのだけれども。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ