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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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「おかえりなさい」

「ただいま、リナ」

 挨拶の口づけをして、抱きしめあう。


「遅くまで起きて待っててくれたんだな」

「レオが頑張ってるんだもん。寝てられないわ」

 嬉しいことを言ってくれる。


「リナは体が俺に比べたら強くないからな。寝てていい」

 スンスンと風呂上がりの髪を嗅がれる。

 リナの匂いを嗅ぐのはレオの癖だ。


「レオに比べたらみんな弱くなっちゃう」

 くすくす笑うリナ。

 影鬼のレオの体力、魔力は普通の魔族の中でも群を抜いている。

 モバイルバッテリーのリナから魔力を補うことが出来るので、今となってはどれくらい寝なくても大丈夫なのかは本人でもわからないくらいだ。


「お仕事すすんだ?」

「俺の報告書は何とかなった。しかしもめごとは続いてる。元々、天空都市の住人は行き場がないからな。春の町に残るしかない様だが、教会の上層部は山全体を聖地としてしまいたいらしい」

「そっか、元々住んでた人たちは行き場が―――」

「リナは悩まなくていい。あの地で幕引きを選んだのはあの天使だからな」

 ぽん、と頭に手を置いて、撫でられる。

 暖かくて大きな手。リナが大好きな手。


「春の町の住人は大らかで、移民を受け入れやすい。多少の人口増加は許すだろうよ」

「きゃあ!」

 リナを急に抱き上げて、ベッドに連れていく。


「さあ、もう寝よう。俺はリナと一緒に寝るために帰ってきたんだからな」

「そんなことばっかり言って。私、一人で寝られるわよ」

「俺が一人で寝られない。リナがいないと寝ることもできないんだ」

 哀れっぽく訴えるレオ。


「レオったら、寂しいの?」

「寂しい。リナのぬくもりがないと寂しい」

 ベッドにそっとリナを寝かせて、隣でリナを抱きしめるように定位置に。


「おやすみ。リナ」

「おやすみなさい、レオ」


 しばらくレオは、教会の上層部と天空都市の代表、春の町の折衝をなぜか見守る役になり、リナとの接触時間が短くなる期間が伸びた。

 それにあわせて不機嫌を顔に出すようになり、結果的に教会も町の住人たちも、お互いにびくびくとしながら最大限譲歩した話し合いがなされることになった。


 レオの(不機嫌顔の)お陰である。


「ご苦労様、レオ」

「ああ。労ってくれ。俺は疲れた」

 夜更けに帰ってきたレオはソファに座り、リナを膝に乗せてすりすりと顔を撫でる。


 後半はただの見守り役になっていたが、何とか話はまとまった。


「春の町は山の麓に天空都市の住人たちが村を作ることを許してくれた」

「ホントに?」

「ああ。元々魔力を拒否して暮らしていた天空都市の住人だからな。春の町に溶け込むのは難しいという判断だ。しかし、希望があれば受け入れてくれるそうだ」

「よかった…」

「そして、教会の上層部は、山の聖地化を諦めることになった」

「え? そんな簡単に?」

「簡単じゃなかったんだよなぁ…」

 レオはぼんやり考える。


 結果から先に言うと。

 春の魔王が目覚めて、残った天空都市を壊して回ったのだ。


「五月蝿くて眠れない」

 というのが理由だった。


「あの大きな島を、壊しちゃたの?」

「ああ。粉々だ」

「こなごな…」

 そして、世界にむかって破片を撒いてしまったのだ。

 風に乗って撒かれた破片。


「これでどの世界も聖地である」

 と言い残してまた眠ってしまったのらしい。


「なんだかとっても乱暴な…」

「まあ、寝ぼけてたんだろうな」

 春の魔王は温和で多少のことは気にしない性格だという。

 睡眠を邪魔されたとき以外は。


 教会の上層部は破片となった岩を分け、各地の教会に持ち帰っていったのだという。

 またそれを大事に拝むんだろうなぁ、とは思うが、リナは教会とは関わらない。

 祈る対象が心のよりどころとなればいいと思う。


「リナ。これで心配事が片付いたろ?」

「うん。ありがとうね、レオ」

「じゃあ、安心して俺の花嫁になってくれるな?」

「…うん」

 レオはリナを立たせて、地面に跪いた。


「リナ・トオノ。俺と結婚してくれ」

 捧げられた手には婚約指輪がきらきらとランプの光を反射して輝いている。


「レオナルド。もちろんです。私をお嫁さんにしてください」

「やった!」

 リナの指に、指輪がはめられる。


「サイズピッタリ」

「当たり前だ。寝てる間に測ったからな」

 自慢げなレオ。珍しく子供みたいな笑顔を見せる。


「何故か、モーラが詳細なリナのサイズ表を持っていた。それで結婚式のドレスを作ることにした」

 ああ、あのアリステッドに見守られながら測ったやつかと思い当たる。

 モーラに渡していたとは。


「ドレスの色は?」

「勿論、真っ白よ!」

「覚えてる。リナの世界での白に意味はあるのか?」

「スタートの色。あなた色に染まりますとかって意味があるみたいよ」

「…そんなことを言われると――」

 珍しくレオが目元を赤くした。


「心臓を鷲掴みにされた気持ちになる」

「レオも可愛いのね」

 少し伸びたレオの黒髪を撫でて、リナは頬に口づけた。

 リナも自分からキスしたのに真っ赤だ。


「レオ。明日も早いから、もう寝ましょう」

「ああ。そうだな。明日からは結婚式の準備をしよう」

「うん!」

「リナ。愛してる」

「私だって、レオを愛してる」



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