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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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 次の日、目が覚めたら、レオにがっちり抱き着かれていた。

「おはよう、レオ」

「おはようリナ」

 ちゅっとキスされる。

 レオの行動が全部甘い。


 顔を洗って、身支度だ。

 ベルでモーラを呼んだら、着替えの準備を手伝ってくれた。

 こちらで着ているものは、紐で止めるものなどが少ないので、基本的にはモーラには「今日着る服はどれがいいかなー」って一緒に選んでもらうだけだ。


 選んだのは薄緑のドレス。

「聖女様、妖精のようです」

「ありがとう」

 照れながらもお礼を言う。


「着替えたか?」

 ドアがノックされたので、モーラがドアを開けるとレオが入ってくる。


「子供たちもみんな聖女様と食事するのを待ってますよ」

「ブフーーーーーー」

「トーマス!!」

 ドアの向こうにトーマスが立っている。


「トーマス!ああ、会いたかった」

「ブフブフ」

 首に抱きついて頬ずりすると、暖かい毛皮の感触が気持ちいい。

 トーマスもリナの髪をハミハミしてくれる。


「トーマスさん!聖女様の髪が乱れます」

 モーラはぷんすか怒りながら、また髪を整えてくれる。


 皆で食堂に移動すると、女王様と魔王様が先に待っていてくれていた。


「おはようございます。魔王様、女王様」

「おはよ う。りな れおな るど」

「おはよう。聖女リナ。体調はいかがかな?」

「もうすっかり」

「おお。それはよかった。聖女リナ。席についてくれ」

 リナは女王様の隣に座る。

 その隣はレオだ。


 きらびやかな食事の数々。相変わらず北の深層世界の食事は、栄養を考えられた適量が一人一人に割り当てられている。


「子供たちが来ました」

 モーラが扉を開けると、弾丸のような影がリナに走り寄ってくる。


「リナーーーー!」

「シーシ!」

 巨大な影のひつじに乗ったシーシがぴょーんとリナに向かって飛び込んできた。


「リナ~!シーシ、リナ守ってあげられにゃくてごめんにぇ」

「シーシ。そんなこと気にしないで。私、無事に帰ってきたのよ」

「うん。おかーり、リナ」

「ただいま。シーシ」

 きゅうと抱き合う2人。


「しー し せきに すわり ましょ う ね」

「はあい」

 片手をピッと挙げて、シーシは自分の席に座る。


 ローガンを筆頭に、子供たちがぞろぞろとやって来て、リナに「おはよう」と「お帰り」を言ってくれる。なんて安心する言葉だろうか。


 リナは大人になってからは一人暮らしで、お帰りを言ってくれる人がいなかった。

 お帰りは、こんなにも心が安定するものなんだと実感できた。


「モーラ。私の世話はいいから、モーラも席に座って」

「はい」

 モーラは天空都市で、三度の食事をリナととっていた。ここはお代わりなどは自分で取りに行くのが規則だ。残念ながら、モーラの出番は少ない。


「それでは、子供たち。食事を始めよう」

 魔王様の掛け声で、「いただきまーす」を言って食事を始める。

 みんな朝から食欲旺盛だ。

 その光景に、涙が出そうになる。


 みんな元気で、大きな子は小さな子の世話をして、一生懸命に食べている。

 それだけで尊いものに感じる。


 少々食べすぎた感はあったが、リナは満足いくまで食事を楽しんだ。

 そして、子供たちが勉強しに行っている間に、魔王様と女王様とレオで談話室へと移動した。


「聖女リナ。改めて礼をいう。貴方の力で助けられた」

 頭を下げる魔王様と女王様。


「頭をあげてください。私、思いついたまま行動しちゃって…。魔王様を助けられたのは本当によかったのですが、あれでよかったのか…。まだ考えがまとまらなくて」

「リナ」

 レオがリナの頭にぽんと手を置いてくれる。

「リナ。難しく考えることはない。魔王を解放できた。ただ解放するだけではこんな風に平和に終われなかったかもしれない」


「そうだな。あの恨みのまま春の土地を壊し、春の魔王との戦いになっていたかもしれない。そうなればもっと犠牲者が出た」


 春の土地を司る魔王は、ほとんど眠っていて、土地の危機に瀕した時にしか目を覚まさないらしいが、強大な力を持っている。

 手負いの冬の魔王とはいえ、死闘を繰り広げていればあの土地は無事では済まなかっただろう。


「ただ、聖女リナの身内である天使に罰を与えることになったのは、心苦しいところではある」

「いえ。アリステッドはあの天空都市の破壊を、自分の終焉を考えていました。私のことはきっかけかもしれませんが、終わらせようとしていたのは分かっています」

 あんな苦しみを負っていたのに、アリステッドに罰を与えることを心苦しいと言ってくれた魔王様。本当に優しい方だ。


「天使の終焉か…」

 結果的に冬の魔王様が天使という生き物を終わらせることになってしまった。

 リナは天使には羽化しないらしいし、一つの種族が終わるというのは悲しいことだ。


 本当にアリステッドがすべての天使を終わらせて、天空都市を落としたことが正しかったのかはわからない。

 他の方法があったのかもしれない。


 しかし、もう異世界から召喚される人はいなくなる。

 幼い子供が誘拐されないだけでも、よかったのだろう。


 リナはこの世界で生きていく。

 レオナルドという家族とともに。


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