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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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 熱は下がった。

 比較的動きやすい格好に着替えた。

 食事もいつも通りとった。


「リナフェリックス。今日は地上からの信者が大勢やってくる日だからね。この部屋から出てはいけないよ」

 食後のお茶を飲んでいたら、アリステッドがにこにこ顔でやってきた。


「君が顔を見せたら信者が大騒ぎしそうだからね。挨拶の日はまた別に設けるから。余計なことはしないようにね」

 それだけ言い残すと、部屋から去っていった。


(気づかれてるのかしら…)

 わざわざ言いに来たってことは、何かあると勘づいてるのかもしれない。

 それでもいい。

 レオは「必ず助ける」と言ってくれた。

 それを信じる。


 カーテンが開け放たれた窓からは雲がふわふわと浮かんでいるのが見えて、高度がいつもより低いのが分かる。

 地上に近づいているのだ。


(レオ)

 リナは空を見ながら祈った。



「めでたくも聖女様のご結婚の儀に合わせて、天空都市に住まうことが許された人々よ。階段を上りなさい」

 選別が始まり選ばれた人は泣き出しそうに喜んで、天空都市から伸びたタラップを昇ってゆく。

 荷物は何も持ち込めない。

 選ばれなければ友達も、家族も置いて、1人っきりで昇ることになる。

 それでも嬉しそうな人たち。

 どんな夢を見ているのだろうか。



「合格だ」

 どういう基準化は分からない。まるで適当に選んでいるようにも見える。

 丸いガラス球に手を置いて、反応の違いで選んでいるようだが、基準が分からない。


「手を置きなさい」

 レオの順番が来た。

 レオは天使の指示に従って、ガラス球に手を置いた。


「……合格だ。階段を上りなさい」

「ありがとう、ございます」

 レオは念のため、魔力を抑えて手を置いたが、無事に合格できたようだ。


 タラップを昇り、広場のような場所に集められる。

 この場の天使の数は15人。

 蹴散らすことは可能だろう。


 なにせ、リナの魔力をずっとずっとため込んでいたのだ。


「リナを返してもらう!!」

 魔法で作り出した稲妻の剣を振り回し、レオは一番近くの天使に切りかかった。


「きゃあああ!!!」

 天空都市に選ばれた教会関係者たちが大騒ぎする。

 その混乱で天使もまっすぐレオに向かってくることが出来ない。

 レオは天使を蹴散らし、広場を混乱に陥れた。


 ひゅ!!


 弓矢が使われ、教会関係者たちにもけが人が出るが、天使たちはそれには構っていない。

 レオは弓矢も稲妻の剣で叩き落とす。


「レオ!」

「ギャリー!ここを任せる!」

「おう!」

 混乱に乗じてギャリー、クマ獣人のグリッドまでやってきた。

 2人とも地上の天使を蹴散らして、武器を持ち込んだようだ。

 上手くやってくれた。




 中庭から大きな音が響いてくる。

 リナは影に向かって声をかけた。

「ワンちゃん!」


 ぬうっと姿を現したのは、レオに譲渡されたはずの影犬だったが、大きさが尋常ではない。

 元々大きかったのが、怪獣のような大きさになっているのだ。

 決して狭くはないリナの部屋が、影犬の大きさでいっぱいいっぱいだ。


「わ、ワンちゃん…?」

「わふ」

 愛想のいい顔はそのままだが、迫力がすごい。


「り な」

「女王様!!」

 よく見ると、北の女王様が影犬の背中に乗っているのだ。


「女王様!!」

 地面に飛び降りてきた女王に、リナがわあっと抱き着くと、優しく抱きしめ返してくれる。

「むか え きた」

「ありがとうございますぅうううう」

 ボロボロこぼれる涙が止まらない。


「女王様。モーラです。彼女が天空都市の核の場所を知っています」

「モーラ。い っしょ に」

「はい!」

 女王は優しくモーラを抱きしめ、2人で影犬に乗った。


「モーラ。お願いね」

「はい!任せてください」


 ドカ!!!


 影犬はリナの部屋の扉をぶち破って部屋を猛スピードで駆け出していった。

 リナはそっと扉のあった位置から外をうかがう。


 影犬に蹴散らされた天使を見つけたが、気絶しているのか動かないのをいいことに、中庭に走った。


「リナーーーーーー!!!」

 鼓膜を震わす懐かしい声。

 リナを呼ぶ声。


「レオーーーーーーーーー!!」

 レオに向かって駆け出そうとしたところで、後ろから誰かに抱きしめられた。

 誰かなんてわかり切ってる。


「放しなさいよ!」

「リナフェリックス。おとなしくするように言ったでしょ?」

「いうこと聞くなんて言ってない」

「またそんな屁理屈言って」

 リナはアリステッドを振りほどこうと暴れるが、まったく自由にならない。


「リナを離せ!」

「悪魔。リナフェリックスはこちら側だよ。悪魔とは結ばれない」

「リナは異世界人だ」

「天使と異世界人の子だよ? 知らなかったの?」

「リナには魔法の適性がない。天使にはならない」

 リナはレオとアリステッドの話がわからない。


「…どういうこと?」

「君、天使と異世界人の子供だからね。将来は天使になるかもしれないよ?」

「は?」

「異種族間で子供を成したら、どちらか力の強いものの力を顕現する。卵からかえれば天使になるかもしれない。兄と同じ4枚羽のね」

「私、普通の人間よ?」

「どうかな? 普通の人間でいられるかな?」

 アリステッドはいつもの作ったような顔で笑った。

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