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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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「こ ども たち」

 女王の一言で、ドアが開くと、小さな子供から中学生くらいの子までが次々と部屋に入ってくる。


「初めまして。こんばんは」

 一番背の高い男の子がリナたちに挨拶してくれる。


「こんばんは。初めまして。リナと言います」

「僕はローガンです。ほかの子供たちは、みんな外の大人と話すのが苦手です。すみません」

 中学生か、高校生くらいだろうか。しっかりとしていて大人のように話す。

「そうなの?じゃあ可愛くても構わないほうがいいのね」

「そうしてもらえると嬉しいです」

 ローガンは抱いていた一番小さなウサギ耳の赤ちゃんを女王に抱かせて、自分は子どもたちの真ん中に座った。


「りな たく さんたべ て」

「ありがとうございます」

 机の上にきらびやかに並べられたキャンドル。

 柔らかく照らされる前菜の美しいこと。


 リナははたと自分のテーブルマナーに意識が向いた。

(前の世界と同じでいいのかしら)


「リナ。好きなように食べろ。女王は気にしない」

「うん。ありがとう」


 レースで一杯のドレスを着た、垂れたウサギ耳のかわいい赤ちゃんは、真っ赤な瞳が宝石のように輝いている。ちいちゃな口に哺乳瓶を咥えさせて、女王は楽しそうだ。


 子どもたちは女王と、食事に感謝する挨拶を述べて、食事を開始した。


「レオナルドさんは、冒険者ギルドでトップなんですよね?」

 ローガンが嬉しそうに話しかけてくる。


「そうだな。でも、トップの枠の中にいるが、1番じゃない」

「それでもすごいです!僕もここを出たら冒険者になりたいんです!」

 瞳を輝かせて話しかけるローガンは年相応に見える。

「そうか。励めよ」

「ありがとうございます。あとで手合わせしてもらってもいいですか?」

「いいぞ。未来の冒険者の実力を見てやる」

「ありがとうございます!」

 顔を赤くしたローガンも可愛い。


「ローガン、こぼれちゃった」

「ああ。大丈夫だよ」

 ふきふきハンカチで口周りを拭いてあげる。

「ローガンエビ食べたい」

「うん。剝いてあげるよ」

 隣の子供達からどんどん甘えられるけれど、ローガンは嬉しそうに応えてる。

 ローガン以外の子供たちは、獣の特徴がある子供が多い。

 角が生えてる子が何人かいて、本当におとぎ話みたいで可愛いのだ。


「リナ。うまいか?」

「うん!美味しい。きれいで食べるのがもったいないくらい」

「ははは。飯は食ってこそだろ?」

 ほらっとリナが好きなローストビーフを食べさせてくれるレオ。

「おいひぃ」

「よかったな」


「りな あー ん」

 それを見た女王も、赤ちゃんを抱っこしながらリナにくるりと巻いたパスタを差し出してきた。


「え? え? レオ?」

「食べてやってくれ。女王は食べさせるのが好きなんだ」

「あ、はい。頂きます」

 ぱくっと食べると鹿のお面の向こうから、ぱあっと明るい顔が見えるように喜んでくれた。


「かわい い」

 なでり、なでり、とゆっくり頭を撫でられる。


「あーん。じょうおうちゃま。シーシもなでなでちてよ~」

 くるりと巻いたひつじの角が重そうなおチビが、女王に駆け寄っていく。

「しー し かわいい」

 首ががくがくしないように優しく優しく撫でると、シーシはむふーっと満足して席に戻った。

 プルプルしたほっぺた。みんなきれいな服を着て、元気いっぱいだ。



 賑やかな食事が終わると、大広間に子供たちが並ぶ。

 レオとローガンの手合わせを見学するのらしい。


 木剣を持った2人は最初、気軽に構えていたが、女王の手がパンと始まりの合図を出した瞬間、姿が消えてしまった。


 ガツガツと木剣が打ち合う音がするが、リナの目には二人の姿が目で追えない。

 ぽかんとしていたら、シーシが「見えないの?」と寄ってきた。


「全然見えないわ」

「シーシ、見えるにょ」

「すごいのね」

「ちょうよ。シーシすごいにょ」

 むふーっと鼻息荒く言うシーシは可愛い。思わず頭を撫でたくなるが、あんまり外の人に慣れてないと言われていたので触らずにいる。

 しかし、シーシは椅子に座るリナによじ登ってきた。思わず抱き上げて膝の上に乗せる。

 むふーっと嬉しそうに座ると、シーシが「なでなでちないの?」と聞いてきた。

 どうやら、撫でてほしいのらしい。

「シーシ。かわいいでちょ」

「かわいい!大好きよ、シーシ」

 きゅうと抱きしめると、子供特有の熱。懐かしい。

 施設ではこういう小さな子供も多かった。


 リナがシーシの巻き毛をくるくる撫でてる間に、勝負が決まったようだ。

 カン!と片方の木剣が弾かれて飛ばされる。

 片膝をついて、ぜえぜえと息をするローガン。目の前に木剣を突き付ける息も乱していないレオ。


「参りました」

「ああ。強かった」

「いえ、全然敵いませんでした」

「そらそうだ。俺も負けるわけにいかない」

 握手して笑いあう2人。


「お前は強い。このままいけば、中級の魔物と戦えるくらいになるだろう」

「本当ですか?」

「実戦経験がないのはこれから積むしかないが、センスがいい。しかし、剣が素直だな。人と戦うときはもっと人の嫌がることを考えて攻めてみろ」

 人の嫌がることをしろ、と教えるレオはいたずらな顔だ。


「ありがとうございました!」

 ぴっときれいなお辞儀をするローガンに、子供たちが駆け寄っていく。シーシもぴょんとリナの膝の上から降りて、走って行ってしまった。


「リナ」

 近づいてくるレオに笑顔を向けると、

「お前、全然見てなかったな」

 と言われてしまった。

 目で追えないのでシーシの髪をくるくるしていたのがばれていたようだ。


「ばれてたか」

「当たり前だ」

「お疲れ様」

「俺の頭も撫でてくれ」

「ふふ。レオ、がんばったね」

 レオは汗もかいていない。本当に強い人なんだなと実感した。


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