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第50話 くじける最っょ その2

「今日はもう終わりにする」


 レオの、その言葉だけで、失望されたのだと俺は悟った。


 帰りも走るが、首輪はない。俺が手ぶらで行きと同じく全力で走る後ろに、猪2頭を担いだエルフが息も切らさず走っている。彼我の実力差は比べるのもおこがましいほどで、レオにもエルフ少女にも敵わないのだと、これまでの自信などもはや微塵もなくなってしまった。




 翌日、俺はとうとう店に行かなかった。


 仕事が終わって鍛錬場に行くこともなく、ベッドに転がる。


 もうビキニアーマーもつけていない。というかなんの意味があったのか。圧倒的格下に恥ずかしい恰好をさせて喜んでいたのか。


 そんな日を何日か続けて、借り物のビキニアーマーだけは返しておかないとと、外からレオがいない事を確認してから武器屋の扉をくぐる。


 カランカランと鳴る扉を通りダリルの元に行く。


 今日はどういうわけか、無表情のダリルの膝に桃色の毛のキツネ獣人が座っており、ダリルの持つ本は可愛らしい絵本になっていた。


「ダリル、これを返しに来た」


 そう言ってカウンターにビキニアーマーを置く。ちゃんと洗って乾かしてあるから臭いはしないだろう。


 ダリルは鎧を一瞥しただけで関心を示すことなく、絵本のページをめくって少女に見せている。剣士と魔法使い、棍棒を持つ巨人が仲良く歩く絵だ。




「ダリル、これって魔道具かい?」


 いつのまにか隣にいた青年がビキニアーマーを手にそう言う。この青年は人間……なのか? 優しげな顔に纏う雰囲気は穏やかではあるが、異質。


 何がとはわからないが、今この時に不意打ちで襲えども返り討ちに合うと確信してしまうような異質さ。


「じゃあこの立派な体格の人もダリルのお客さんなんだね」

「──ああ、だがどうも諦めたようだがな」


 ページがめくられる。大きな怪物に慌てる剣士と棍棒で殴りかかる巨人が可愛く描かれている。


「次めくってー」


 なぜか少女は俺にねだってきた。仕方なくめくると、巨人は敗北し、涙を流していた。筋骨隆々の巨人が挫折して、それでも諦めず立ち向かうページだった。


 満足そうにキツネ獣人の少女はダリルの膝の上で文字を追いかけている。




「あんたも何かに負けたのかもしれないけど、もう一度この魔道具をつけて挑戦してみてもいいんじゃないかい?」


 訳知り顔の青年の言葉に俺は思い直す。


 そもそもあのレオに完膚なきまでに負けたのに、このダリルも岩を軽く持ち上げてエルフ少女にも敵わないけど、そんなのは全て……己の弱さを知らされるというのは、むしろまだまだ強くなれると言う事っ!


「持ち直したか、単純なヤツだ。──では猪を狩ってこい」


 いつの間にいたのか、レオの言葉はそれだけだ。


 男に多くの言葉はいらない。店を出て、置き忘れたビキニアーマーを取りに戻りまた店を出て走り続けた。


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