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095 幼女はおかしな状況に困惑する

 トンちゃんと上半身のセレネちゃんを連れて東塔まで戻って来ると、何やらおかしな事になっていた。

 どんなおかしな事になっていたのかと言うと……。


 まず、鬼人のロークと大精霊のウンディーネさんが氷の様な縄で縛られていたのだけど、その目の前にアマンダさんが鬼の形相で仁王立ちしている。

 そしてその横では、ハッカさんがアマンダさんの真似っこをしていた。可愛い。

 とまあ、それはおかしな事でもないかもだけど、そのアマンダさんとハッカさんの周りにいる2人(・・)がまずおかしい。

 その2人とは、マモンちゃんとナオちゃんの事だ。

 2人は何故か、アマンダさんを中心にして、お互いの猫尻尾を四足歩行でグルグルと追いかけっこしていたのだ。

 しかも凄い笑顔。

 可愛いなぁなんて思ったりもしたけれど、冷静になってみると本当に何してるの? って感じだよね。


 それから次は、ラヴちゃんとフォレちゃんと下半身のセレネちゃんとノームさんだ。

 セレネちゃんは床に座っていて、セレネちゃんのモフフワの所にラヴちゃんとフォレちゃんが座っていて、4人で楽しくお喋りしていたのだ。

 実はおかしさで言えばこっちの方が上だった。

 だけどそのおかしさは、何やってるの的なおかしさとは違う意味のおかしいだった。


 目を疑った。

 ラヴちゃん達4人の所には、もう一人、ここにはいない筈の人物がいたのだ。

 しかもそれは私がよく知っている人物で、暫らく会っていなかった男の子。


 私が暮らしている緑豊かな村トランスファには、ラークスパーと言う名前の男の子がいる。

 皆からは「ラーク」と呼ばれている私と同じ年の子で、村長のお孫さんで少し偉そうな喋り方をする子だ。

 ラークと私はとくに仲が良いと言うわけでもないけれど、ハープの都で会ったオぺ子ちゃんが片思いをしている子だから、よく一緒に遊んだりもしている。


 そのラークが、何故かいたのだ。

 そう。

 ラヴちゃん達と楽しそうにお喋りしている中にいたもう一人とは、ここにいる筈のないラークだ。


 東塔に戻って来たにもかかわらず、私は驚きのあまりその場で一歩も動けなくなる。

 トンちゃんも同様で、私の肩の上で驚いていた。 


「どーしたの?」


「え? あ、うん……」


 セレネちゃんの質問にそれしか答えられなくてその場で立ち止まっていると、下半身のセレネちゃんが立ち上がり、私の許まで歩き出す。

 すると、ラヴちゃんとフォレちゃんが私に気がついて笑顔になる。


「ジャチュ~」


「ジャスミン様、こちらは片付いたのぢゃ。西塔はどうであった?」


「う、うん。向こうも終わったよ」


 質問に答えてラークに視線を移すと、ラークと目がかち合った。


「ジャスミンか! ひっさしぶりだなー! お前も捕まってたのか?」


「え? 捕まってた?」


 首を傾げて聞き返すと、私の側まで来たフォレちゃんが答える。


「あの者、ラークと言ったか? ロークの能力のマトリョーシカの中に閉じ込められて捕まっておったのぢゃ」


 あぁ、そう言う事かぁ。

 何でいるの? って思って本当にびっくりしちゃったよぉ。

 でも、何で捕まってたんだろう?


 疑問に思うと、私の疑問に答える様にラークが説明する。


「リリオペが村に猫喫茶とか言う意味わかんねーもん作るって言って、村から出て行ったから追いかけたら捕まっちまったんだよ」


「そうなんだ?」


 まあ、ラークなんてどうでも良いや。

 どうせラークの事だから、ロークに見境なく喧嘩でも売って捕まったんだろうし、考えても疲れるだけだもん。

 それより先に……。


「ラヴちゃん、フォレちゃん、セレネちゃんの上から降りてもらっていいかな?」 


「がお」


「承知したのぢゃ」


 ラヴちゃんとフォレちゃんが返事をしてセレネちゃんの下半身から降りると、私はセレネちゃんの上半身を下半身にくっつけた。


「どう? セレネちゃん」


「え? あー……そーね。くっついたんじゃん?」


 セレネちゃん?


 上半身と下半身がくっついて元に戻ったセレネちゃんだったけど様子がおかしかった。

 セレネちゃんの事だから私はもっと喜ぶと思ったのだけど、実際にはそんな事は全くなく、それどころか心ここにあらずな感じでボーっとしている。


 ……違う。

 ボーっとしていると思ったのだけど、どちらかと言うと考え事をしていた。

 そう感じた時、私はセレネちゃんの視線の先に気がついた。


 ラークを……見てる?


 セレネちゃんは何故かラークをじいっと見ていたのだ。


 何でラークを……あれ?


 疑問に思ったその時だ。

 私は突然の違和感を覚えた。

 それは妙な感じで私の頭の中をぐるぐると回り始め、そして違和感の正体に気が付いた時、私は焦りの様なものを感じていた。


「危うく騙されるとこだった。やっぱ下半身で感じ取れるには限界があるって事ね。ちゃんと目で見て耳で声を聞いて、よーやくわかった」


 セレネちゃんが呟き、ラークを睨みつける。


 もっと早く気付くべきだった。

 今にして思えば、何故あの時気がつかなかったのかと疑問に思う。

 ラークは私にとっては、こう言ってはなんだけど、凄くどうでも良い存在だ。

 仲の良いお友達のリリオペこと男の娘オぺ子ちゃんの想い人だから、一緒に遊ぶのも構わないと言う程度の相手。

 だけど、それでも付き合いは長いのに気がつかないなんてと、流石に自分の記憶力の無さにがっかりだ。


 セレネちゃんがラークに指をさして大声で言い放つ。


「見つけたわよアレース! ここで息の根を止めてやるわ!」


 そう。

 この東塔で見た神が描かれていた壁画。

 そこに描かれたアレース神の姿は、ラークを大人にした様な姿をしていたのだ……。


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