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091 幼女と会話する下半身

「もー! お姉ちゃんでちょー!」


 私がハッカさんと呼んだ事に、幼児化したハッカさんが怒って頬をふくらます。

 ハッカさんの凄く可愛らしいその顔を見て思わず顔がニヤケそうになったけど、今はそれどころではない。

 フォレちゃんがわざわざ持って来てくれた小瓶からハッカさんがお洋服と一緒に飛び出したものだから、私の頭の中は混乱しているのだ。

 私はフォレちゃんが連れて来たのかもと思ったのだけど……。


何故なにゆえ其方が小瓶の中に入っておったのぢゃ!?」


 フォレちゃんも驚いてる!?

 それって、フォレちゃんも知らなかったって事で……。


 ごくり。と、私は唾を飲み込んでハッカさんに視線を向ける。

 ハッカさんはニコニコの可愛い笑顔で私を見つめている。


 可愛い……って、そうじゃない。

 じゃあ、ハッカさんは黙ってついて来ちゃったって事だよね?


 そしてこの時、突然のハッカさんの登場に驚きまくりで大変だと言うのに、更に追い打ちがやって来る。

 私が持っている小瓶の中から突然何かが飛び出したのだ。

 その何かは私の知る人物。

 もの凄いマッチョな筋肉全開で上半身が裸の大精霊ノームと言う名のエロ爺。

 茶色い髭をなびかせて、私の目の前に着地した。


「ふー。やれやれ、やっと外に出られたわい。む? 近くにウンディー……」


「ノーム!? 何故其方が!?」


 ハッカさんに続きエロ爺の登場で、私は驚きのあまり絶句して言葉を失った。

 と言うかだ。

 エロ爺に至ってはハープの都でアプロディーテーさんのマッサージ店以来、全く会っていなかったのに、何故小瓶の中にいたんだと言いたくなる位に意味不明だ。


「がっはっはっはっ! どうだ驚いただろう? 作戦は大成功だなハッカよ」


「うん! ジャチュミンちゃん、びっくりちた~?」


「う、うん……」


 って言うか、本当に何がどうなってるの?

 どうしよう?

 今はセレネちゃんの事もあるし、それどころじゃないのに無視出来ない案件だよ?

 もう何が何やらだよぉ……。


「おいノーム。何故其方がおるのかと聞いておろう」


 フォレちゃんがエロ爺のお腹を、魔法で作り出した木の根でガスガスと叩く。


「話すとちと長くな――」


「短くまとめよ」


 フォレちゃんがエロ爺を睨みつける。


「そ、そうだな。実はハープで……」


 エロ爺には悪いけど、今はそんな事はどうでも良い。

 私が気になっているのはハッカさんだ。

 エロ爺がフォレちゃんに説明を話し始めた横で、私はしゃがんでハッカさんに話しかける。


「ねえ、お姉ちゃんはどうして小瓶の中に入ってたの?」


「ジャチュミンちゃんに会いに来たんだよ~」


 ハッカさんがニコッと笑顔を見せて超可愛い。

 って、いやいやいや。

 可愛いとか考えている場合じゃない。


「駄目だよ小瓶の中に入っちゃ。危ないでしょう?」


「うん。ノームたまにおとと出ちゃだめって言われたー」


「え?」


 首を傾げてからエロ爺の顔を見上げると、フォレちゃんへの説明を終えたのか、エロ爺が私と目を合わせて話し出す。


「ハッカが海の中にいるにもかかわらず小瓶から出ると言い出した時があってな。その時に、空気も無いし水圧で押し潰されるから出るなと止めたまでだ」


「そうだったんだ……」


 エロ爺……ううん、大精霊のノームさんのおかげで、ハッカさんが海の中で小瓶から出なくてすんだんだね。


「ありが――」


「がっはっはっはっ! ハッカが最初に小瓶に入った時に、共に小瓶の中に潜んで驚かせようと提案したのは儂だからな! 儂のせいで死なれても困るから気にするでない!」


 ありがとーノームさんとお礼を言おうとしたけどやーめた、と、私はニッコリ笑顔のまま眉根を上げて眉間にしわを寄せる。


 このエロ爺。

 ここで止めをさしてあげようかな?


「ジャスミン様、どうやらハッカは妾達の目を盗んで小瓶の中に入った事があったようで、その時にノームに会ってジャスミン様の所まで来る為に計画を二人でたてた様ぢゃ」


 おのれエロ爺ぃ……って、今はそれよりもセレネちゃんだ。


 ハッカさんが私に抱き付き、私はハッカさんの頭を撫でながら、セレネちゃんの下半身に視線を移す。

 セレネちゃんの下半身は相変わらずバタバタと足を動かしている。


「して、ジャスミン様、これはどう言う状況なのぢゃ?」


「え? えっとぉ……実は私もよく分かってないんだよね」


「ふむ。成程のう。生命の反応はあると見える事を考えると、恐らく能力か何かの類を食らうたようぢゃな」


「うん。多分そうだと思う」


 フォレちゃんとセレネちゃんの下半身を見ながらお話していると、エロ爺がセレネちゃんの下半身に触れようと手を伸ばす。

 まったく油断も隙もあったもんじゃない。

 私はすかさずセレネちゃんとエロ爺の間に硬度の高い氷の壁を魔法で出す。

 エロ爺は私が出した氷の壁に阻まれて、手を引っ込めた。


「むむう。ジャスミン殿、この氷の障壁、触れると氷漬けにされると見た。危険極まりないので消して貰えぬか?」


「氷漬けになれば良いと思うよ?」


 エロ爺に笑顔で答えると、エロ爺が眉根を下げて肩を落とした。


「儂の魔法の力で、下半身の方にある口から言葉を交わそ――ぅがあああああっ!?」


 私は魔法で黒炎の炎を作りだし、エロ爺が話し終える前にぶつけた。

 エロ爺は黒炎の炎に焼かれ、叫びながら転がった。


 本当に油断も隙もあったもんじゃない。

 下半身の口とか、まったくもって何を言いだすんだこのエロ爺って感じである。

 え?

 下半身の口って何だって?

 そんなの、言えるわけないのでご自分でお調べくださ――


「ジャスミン殿! 儂はただ、へそから言葉を交わせるようにしようとしただけだ! この炎を消してくれ!」


 え!?

 おへそ!?

 ……うん。そう。

 おへそだよね!

 そうそう!

 下のお口って言ったらおへその事だよね!

 やだなぁもう、いったいナニと勘違いしてたんでしょうね!


 エロじ……ノームさんに放った魔法を消して、セレネちゃんの目の前に出した氷の壁を消した。


「ノーム、其方は本当に大精霊としての自覚はあるのか? 妾は同じ大精霊として恥ずかしいのぢゃ」


「ドリアードよ、そうは言うが、ジャスミン殿の魔法は我々を超える力を持っておる」


「そう言う話では無い。威厳が感じられぬと申しておるのぢゃ。それに妾は今はフォレと名乗っておる。ドリアードと呼ぶでないわ」


「ごめんねフォレちゃん、お説教は後にして、今は早くセレネちゃんを……」


「承知しておるのぢゃ。ジャスミン様~」


 フォレちゃんがニコニコ笑顔を私に向ける。

 ノームさんはフォレちゃんを見て、何か言いたげな顔をしていたけど関係ない。


「ノームさん、お願い」


「う、うむ。よかろう」


 ノームさんがセレネちゃんのおへそに触れて魔力を注ぐ。

 セレネちゃんの下半身は足をバタバタさせるのをやめて停止した。

 そして、セレネちゃんのおへそから言葉が紡がれる。


「え? 何これ? うわっマジ? 喋れんじゃーん」


 ええぇぇぇ……。

 第一声がそれなのセレネちゃん。


「てかそこにいるのジャスっしょ? 何も見えないけど、なんかめっちゃわかるの超ウケる。来んの遅すぎー」


「え? あ、うん。ご、ごめんね」


「オッケーオッケー。こっちも(・・・・)今なんか面白いから許してあげる」


「あはは。ありがとーって、私の言葉ちゃんと聞こえるんだね」


「そー言えばそーね」


 セレネちゃんの受け答えを聞きながら、私はさっきに言葉が引っかかっていた。


 こっちも?

 どういう意味だろう?


 ただ、考えてても仕方が無いし、今は触れないでおこうと疑問をしまう。

 何だか色々あって後回しになっちゃったけど、こうして私はセレネちゃんとの久しぶりの再会を遂げるのだった。


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