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078 幼女は親友が羨ましい

 腰を抜かした審査員の前に移動して、私はメールと睨み合う。

 すると、メールが手を叩き、何処からともなくスーツに身を包む魚人の男達が現れた。

 スーツ姿の魚人達は全員サングラスをかけていて、頭も綺麗なスキンヘッドでへの字口。

 そんな強面こわもてな魚人達は、メールの前に立って、メリケンサックを手にはめた。


「この子達は、私に服従するこの町の子達なの~。言わば私のボディーガード。あなた達の相手は、この子達で十分でしょう?」


 ごくりと、私は唾を飲み込んだ。

 スキンヘッドでサングラスをかけたスーツ姿のボディーガードを見て、こう思わずにはいられなかった。


 か、かっこいい!


 そう。かっこいいのだ。

 強面でへの字なお口が相まって、更にかっこよさが際立っている。

 くどい様だけど私の前世は男でおっさん。

 おっさんだったからこそわかる。

 スキンヘッドでサングラスをかけたかっこいい男達の良さがわかるのだ。

 と言っても、おっさんじゃなくてもわかる人にはわかるとはって、今はそんな事を言っている場合では無いよね。


 私が目を輝かせて、若干興奮気味にスキンヘッドな男達を見ていると、またもや何処からともなく今度はブレードシャークの群れが現れた。

 トンちゃんがブレードシャークを見て、加護の通信で私に話しかける。


『ご主人、気をつけるッスよ』


「え?」


『このブレードシャーク達は、外にいたやつより多分強いッス』


「どういう事?」


『多分ポセイドーンの加護を受けているッス』


「そうみたいね。外のブレードシャークと比べて、魔力が明らかに違うわ」


「そんな……って、あれ? リリィ?」


 おかしいな。

 トンちゃんは今は直接お口でお話してるわけが無いから、聞こえない筈なんだけど?

 気のせいかな?

 まるでトンちゃんのお話を聞いていた様な受け答えしなかった?


「何かしら?」


「えっと……私とトンちゃんのお話聞こえてた?」


 私は恐る恐るリリィに確認してみた。

 するとリリィは、まるで当然かの様に答える。


「え? そうね」


 ……はい。

 うん。知ってた。

 リリィって、本当に何でもありだよね。

 普通は聞こえないんだよ?


 私は追求する気にもなれず、もう、そう言うものだと思う事にした。

 トンちゃんも私と同じ気持ちな様で、リリィをジト目で見つめて何も言わなかった。


『がおっ』


 ラヴちゃんが私の太ももをちょんと叩き指をさす。

 ラヴちゃんがさした指の先を見ると、ブレードシャークが私達に向かって襲い掛かろうとしていた。


 速い!


 ブレードシャークの動きは恐ろしい程に速く、一瞬にして距離を詰められる。


「幼女先輩を襲おうだなんて、身の程を知れなのよ!」


 スミレちゃんが襲いくるブレードシャークを返り討ちに――出来ませんでした。

 ブレードシャークの前に出たスミレちゃんは殴りかかったのだけど、悲しい事にブレードシャークの方が上手だったようで、大口を開けられて丸呑みされてしまいました。

 って、そんな悠長なこと言ってる場合じゃない!


「す、スミレちゃあーん!?」


 私が顔を真っ青にして叫ぶと同時に、リリィがスミレちゃんを丸呑みしたブレードシャークに一瞬で近づいてお腹を蹴り上げた。

 ブレードシャークは白目をむいて、スミレちゃんが吐き出される。

 スミレちゃんは吐き出されると、大泣きしながらリリィに抱き付いた。


ごわがっだなのよー! もう駄目だど思っだなのよー! リリィありがどうなのよー!」


「はいはい。わかったから離しなさいよ」


 ホッと胸を撫で下ろし2人の様子を見た後に、メールに視線を移して、その時私は気がついた。

 メールの驚いた表情、そして、メールの側にいたスキンヘッドの魚人達が全員気絶している姿に。

 更には、いつの間にか、リリィが蹴り上げたブレードシャーク以外のブレードシャークも気絶していた。


 何があったのかと考えて、アマンダさんが援護すると言っていた事を思い出す。

 私はアマンダさんがいる出入口の方に視線を向けた。


 アマンダさんは真剣な面持ちで銃を構えていて、私が視線を向けた事に気が付くと、私と目を合わせて柔らかく微笑む。


 か、かっこいいいー!

 やっぱりアマンダさんって凄くかっこいいよぉ!


「仕方が無いわね~」


 メールが呟き、観客席に座る海猫ちゃん達に視線を向ける。

 海猫ちゃん達はメールに視線を向けられると、一斉に背筋を伸ばした。


「お仕事よ~」


「「「なーごおおっ!」」」


 海猫ちゃん達が一斉に泳ぎ出して、アマンダさんとリリィを囲んだ。


「リリィ!」


 そんな……っ!


「ちょっと! なんなのよ!?」


 流石のリリィも可愛い海猫ちゃん達を蹴り飛ばす事が出来なくて、囲まれるがままになってしまった。

 アマンダさんも同様で、なす術無く囲まれる。


「ジャスミン、悪いのだけど、この海猫達をどうにか――」


「ズルいよリリィ! 私も海猫ちゃん達に囲まれたい!」


「じゃ、ジャスミン?」


 良いな良いなぁ。

 リリィばっかりズルいなぁ。

 私もあの中に入りたい!


『ご主人しっかりするッスよ! そんな事言ってる場合じゃないッス!』


『がおー』


 そんな事言われたって羨ましいんだもん。

 良いな良いなぁ。

 海猫ちゃん、私の所にも来てくれないかなぁ。


「こうなったら、可哀想だけど海猫を――」


「ダメだよ! リリィ、そんな事したら海猫ちゃん達が可哀想でしょ!?」


「え? ええ。わ、わかったわ……」


 もうっ。

 リリィってば、絶対に今海猫ちゃん達に暴力しようとしたもん。

 そんな事、絶対ダメなんだからね!


「あ、あら~? 思ったより効果があったわね。まさか、本当にこんな事で動きを止められるなんて思わなかったわ~」


 メールが困惑しながらも、ニヤリと笑みを浮かべた。


『もう駄目ッス。ご主人がアホなせいで、ハニーが身動きとれなくなってピンチッスよ』


『が、がお』


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