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076 幼女と始まる第一回太もも王座決定戦

 ブレードシャークの群れをナオちゃんに任せて、捕らわれた人達がいる建物の中に入った私達。

 私はこれから始まる戦いに気を引き締めていたのだけど、一瞬にして気が緩んでしまった。


「はあ~い。遅かったわね~」


「「「な~ご~」」」


 ……何これ?

 あ、可愛い。


 建物の中は演劇などをやるステージの様なものがセットされていて、ステージの真ん中には、龍の角に尻尾と黄色の髪の毛を持つ龍族のお姉さんメールがいた。

 観客席と思われる場所には海猫ちゃん達が座っている。

 私はメールと海猫ちゃん達に迎えられて、呆気にとられて立ち止まる。


 あれ?

 よく見ると、あのステージの端っこにいるのってポセイドーン?


 ステージの端っこには審査員席と書かれた机と椅子があって、そこには魚人が2人と、カウボーイハットを被った少し大きめな海猫ちゃんがいた。

 首を傾げてカウボーイハットの海猫ちゃんを見ていると、目がかち合って、カウボーイハットの海猫ちゃんが喋る。


「待っとったで。はよう来んかい」


 あの声と喋り方。

 やっぱりポセイドーンだ。


「セレネはいないみたいね」


「え? ……うん」


 リリィの言う通り、攫われたセレネちゃんはここにいない様だ。

 もしいたら、スミレちゃんが先に教えてくれたと思うから、いないのは間違いない。


「ジャスミンお嬢様、審査員席と書かれた場所で、ポセイドーンの横に座っているあの二人は町の住民の様です」


「え? そうなの?」


「はい。この町の住民の顔と名前は全て記憶しているので間違いありません」


 凄!

 アマンダさん凄すぎだよ!

 流石は王女様だよ!


「アマン――メレカ様は凄いお方ですね、はい。この町に住むわたくしでも、住んでいる方々の名前と顔なんて全部は覚えてないですよ、はい」


「たまたまです」


 たまたまって、アマンダさん。

 町の人の名前と顔なんて、そんなフワフワした感じで覚えられっこないよ?


「ご主人、ハニーとおっぱい女が先に行ったッスよ?」


「え?」


 トンちゃんに言われてステージに視線を向けると、そこには既にリリィとスミレちゃんの姿があった。

 私は慌てて2人が立っているステージへと向かおうとして、アマンダさんに呼び止められて、耳元で囁かれる。


「ジャスミンお嬢様、私は念の為にここで待機します。危険だと感じたら、直ぐに援護射撃をしますのでご安心ください」


「うん。ありがとー。じゃあ、行って来るね」


「はい。いってらっしゃいませ、お嬢様」


「お気をつけ下さい、はい」


 リリィとスミレちゃんの所まで辿り着くと、突然歓声がステージを包み込む。


「「「なあああごおおおおー!」」」


 な、何事!?


「役者は揃おたな! 第一回太もも王座決定戦を開催するでえ!」


 え?

 第一回太もも王座決定戦?


「「「なあああごおおおーっ!!」」」


 再び湧き上がる歓声、海猫ちゃん達がプニプニと肉球を合わせて拍手する。可愛い。


 って、ダメダメ。

 海猫ちゃん達の可愛さに我を忘れる所だったよ!

 恐るべしポセイドーン!

 気を引き締めないと!

 あ、あの子子猫ちゃんだ。

 可愛いーっ!


「ふん。メール、アンタの野望はここまでよ」


「あ~ら。随分と威勢がいいわねえ。でも、最後に笑うのは私、メール様よ~」


 リリィとメールが火花を散らす。海水の中だけど。


「メール、大会の概要を説明したり」


「かしこまり~」


 メールは返事をすると、羽織っていたローブを勢いよく脱ぎ捨てる。


 わっ。綺麗。


 メールは競泳水着を着ていて、もの凄くスタイルが良くて綺麗だった。

 ローブごしにもわかる大きなお胸もかなりの迫力で、たぶんスイカくらいはある。


 だけど残念、私は貧乳派。

 綺麗と思っても、海猫ちゃん達の可愛さの目の前では、そんなものは霞んで見えるのだ。

 だから決して目を奪われる事は無い。

 そして海猫ちゃん可愛い。

 ほら見てあの子。

 にぼしみたいなオヤツをいっぱい口の中に入れて頬張る顔が凄くかわ――


「この大会の優勝賞品は町の人達の髪の毛の保証よ~。貴女達の誰かが優勝したら、町の人達の髪の毛は助かるわ~」


「ご主人、やっぱりこれ放っておいてよくないッスか?」


「え? あ、うん。そうだね?」


 えーと、うん。

 お話聞いてなかったよ。

 何の話?

 大会の説明だっけ?


 私はメールを見て驚愕する。


 え? 何?

 何でポーズとってるの?


 メールは何故か、まるでグラビアの撮影の様なポーズを審査員に向けてとっていたのだ。

 しかも、それをしながら説明をしている。


 ど、どうしよう?

 気になりすぎて説明が頭に入ってこないよ?


「そう言う事だから~、審査員の皆様~! 私の得点は幾つかしら~?」


 え? 得点?


 その時、ポセイドーンを含めた審査員が、一斉に点数が書かれた色紙の様な物を持ち上げた。

 そこに書かれた点数はポセイドーンが9点で、他の審査員は10点だった。


「あ~ら? ポセイドーン様は身内にも厳しいですね」


「あたりまえや。ワテは不正が大嫌いなんや。身内でも厳しくいくでー」


 よくわからないけど、もう始まってる?


 困惑して首を傾げていると、リリィが顔を顰める。


「やられたわね。まさかいきなりポセイドーン以外から満点を取るなんてね」


「そうッスね。先手をうたれてしまったッス」


「がお」


「幼女先輩、敵は強敵なのですよ」


 ど、どうしよう?

 本当に意味が分からないよ?


「うふふ~。気がついた様ね~」


 メールが微笑し言葉を続ける。


「私はローブを羽織っていた事で己の美を隠し、ローブを外した時のインパクトを与えたまま、大会の概要を説明しつつ審査員にアピールしたのよ~」


「何て奴なの!」


 リリィ達が苦虫を噛んだ様な顔をして、メールは愉快そうに笑いだす。

 私はと言うと、一人置いてけぼりを食らったので、観客席にお行儀よく座る海猫ちゃん達を見て心を癒す事にした。


 決めたよ!

 私、後の事はリリィ達に任せる事にするよ。

 よーし!

 とびっきり可愛い子捜すぞー!

 でもでも、皆とびっきり可愛いから迷っちゃうなぁ。


「ラーヴ、ご主人がさっきから海猫ばかり見てるのを二人でどうにかするッス」


「がお」


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