074 幼女も時にはぶれるもの
ロビーのソファーに座っていると、リリィがスミレちゃんと一緒にロビーに現れた。
2人はアマンダさんと旅館の亭主さんに軽く挨拶すると、私を見つけて早足でやって来る。
リリィは私の横に座って、眉根を上げてジト目する。
「ジャスミン、スミレが役に立たないわ」
「え?」
私は何の事かよくわからず、首を傾げて目を丸くする。
「ハニー、どういう事ッスか?」
「がお?」
「さっき話したのよ。アンタの嗅覚で捕らえられた人を捜して、さっさと助けに行くわよって」
うんうん。
スミレちゃんの嗅覚なら余裕かも。
「そしたらスミレ、なんて言ったと思う?」
「え?」
うーん……何だろう?
私が首を傾げて考えていると、スミレちゃんが私の隣、リリィとは逆側に座って答えを話す。
「女の子が殆ど誘拐されていないから、匂いを嗅いでも分からないって言っただけなのよ」
あぁ、なるほどだよぉ。
私は納得して頷いた後、直ぐに首を傾げた。
何故なら、なんで女の子が殆ど誘拐されなかったのか疑問に思ったからだ。
やっぱり女の子は太ももを手入れするのが普通な所もあるし、そう言うのも関係があるのかな?
ちなみに私は何もしてません。
と言うか、まだ子供だし、体のケアなんて必要ないのだ。
化粧とかにはちょっと興味あるけど、前世の私が言っている。
元が良いから余計な事をするな!
と。
そう。
前世ロリコンだったからこそわかる。
ありのままの姿が一番可愛いのだ! 異論は認めます!
などと私がおバカな事を考えている間も、私を挟むリリィとスミレちゃんが言い合い続ける。
リリィはスミレちゃんを睨んで、スミレちゃんは眉根を下げてリリィに反論していた。
「仕方が無いなのよ。メールは私の嗅覚の事を知っているなの。だから、きっと女の子達を捕まえない様にした筈なのよ」
うーん。
それはあるかもだよね。
女の子を捕まえて一か所に集めちゃったら、絶対スミレちゃんに見つけられちゃうもん。
海の中なのに匂いが~とか言っちゃうくらいには、スミレちゃんの嗅覚ってヤバいもんね。
「そんなの関係ないわよ。アンタは嗅覚で女の子の状態を確かめられるんでしょう?」
え?
そんな事出来るんだっけ?
「それはそうなのだけど、どうしても久しぶりに会った幼女先輩の匂いを嗅ぎたくて、そっちの嗅ぎわけに集中したくないなのよ」
「それって、アンタのただの我が儘じゃないの」
「その通りなのよ!」
スミレちゃんのそう言う正直な所、私結構好き。
リリィとスミレちゃんが私を挟んでギャーギャーと騒ぎ続けるのを微笑んで聞いていると、トンちゃんが私の耳元で呟く。
「ハニー楽しそうッスね」
「そうだね。リリィって、結構スミレちゃんの事好きだもんね」
声を潜めてトンちゃんに答えると、ラヴちゃんも2人を見て楽しそうにニコニコ笑顔になる。可愛い。
「なかよち~」
「そうだねぇ」
リリィってば、本当に楽しそう。
何だか妬けちゃ――
「そう言う事でしたら、わたくしがご案内します、はい」
いつの間にかリリィとスミレちゃんのお話を聞いていた様で、アマンダさんと一緒に亭主さんが私達の側までやって来ていた。
私はソファーから立ち上がって、亭主さんの顔を見上げる。
「せっかく戻って来れたのに良いの?」
「もちろんです、はい」
「ありがとー!」
嬉しくて亭主さんに抱き付くと、亭主さんが苦笑しながら頭をかいた。
それから、ナオちゃんが起きてくるのを待ちながら朝ご飯を食べて、捕まっていた時に何をされていたのか亭主さんに質問する。
捕まっている人達は、本当に太ももを綺麗にする為に色々とやらされている様で、亭主さんもここに戻って来る為に一ヶ月もかかったらしい。
試しに亭主さんに頼んで太ももを見せてもらったら、それはもうなんと言うか、凄く素敵に綺麗で美しい太ももでした。
ナオちゃんが起きてくると、ナオちゃんがご飯を食べている間に、ソファーに座って作戦会議を開始する。
亭主さんから聞くところによると、今から向かう町の人が捕まっている場所にはブレードシャークの群れがいて、近づく者を容赦なく襲うらしい。
問題は、ブレードシャークに襲われる事では無く、襲って来たブレードシャークがリリィのせいで可哀想な事になる事だ。
私は昨日のブレちゃんの事を思い出す。
普段は凶暴でも、懐くとあんなにも可愛いのだ。
そんなブレードシャーク達を、酷い目になんて合わせられない。
私はブレードシャーク達の安全確保に闘志を燃やす……のだけど、全くいい案が浮かばない。
どうしたものかと考えていると、ナオちゃんが朝ご飯を平らげてから、笑顔で提案する。
「ブレードシャークの群れは、ニャーに任せておくにゃ」
「え? 良いの?」
「にゃー」
ナオちゃんの提案に私が聞き返すと、ナオちゃんはニコニコと笑顔のまま頷いた。
「ナオ、一応先に言っておくけど、ブレードシャークをむやみやたらと殺しては駄目よ。話を聞く限り誰も殺されていない様だし、無意味な殺生はよくないから」
「わかってるにゃ。姉様は心配性だにゃ~」
ナオちゃん一人で大丈夫なのかな?
でも、アマンダさんの感じからして、大丈夫そうだよね。
何て言うか、信頼感が凄いって伝わってくるもん。
「それじゃ、ナオの食事も終わったし、そろそろ行きましょ?」
「うん」
私はリリィに頷いて立ち上がる。
準備は万端。
食事も済ませて、おトイレにも行った。
これでもう昨日みたいな失態は無いはずだ。
こうして、私達はリコーダーの町の人達を助けに、亭主さんの案内で向かうのだった。
よーし!
町の皆の太ももを守――あれ?
いつの間にか私も凄く真剣になってたけど、太ももを守る意味ってあるのかな?
う、うーん……。
亭主さんの太もも凄く素敵だったし、放っておいても良いような?
って、ダメダメ!
アマンダさんのお手伝いするって決めたんだもん!
それに、嫌がってる人だって、多分きっと恐らく多少……1人くらいはいる筈だよ!
ぶれるな私!
その人の為にも、頑張らないとだよね!?




