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番外編 幼女のハッピーハロウィン!お菓子くれなきゃイタズラするぞ~

 ハッピーハロウィ~ン!

 と言う事で番外編です。本編とは関係ないお話ですが、楽しんで頂ければと思います。

「ハロウィン?」


「うん。私の前世の世界で、毎年開かれる楽しいお祭りなんだよ」


 麗らかなお昼。

 爽やかで気持ちの良い風が私の頬を撫でる。

 そんな素敵に包まれながら、村の近くにあるお花畑のフラワーサークルで、私はリリィや精霊さん達と一緒にお弁当を食べていた。


「ご主人、もしかしてハロウィンしたいんスか? 残念ッスけど、この世界には横転させられるトラ――」


「そんな事しないよ!」


あるじ様、ハロウィンしたくないのか?」


「したくないのはそっちじゃなくて……うーん。まあいいや。とにかくだよ!」


 私はお箸をおいて立ち上がる。

 ご飯中に、はしたないのは無礼講って事で許して下さい。


「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ~。が、やりたいの!」


 がお~! っと、ハロウィンの時期になると、イラストなんかでよく見る狼のポーズをして訴える。


 思えば、前世ではハロウィンのイベントなんて私には無縁だった。

 元々どの位盛り上がっていたのか知らないし、たまたまそう言う環境で育っただけかもしれないけれど、今となっては分からない。

 とにかくだ。

 前世の私が小さい頃は、ハロウィンで盛り上がるなんて無かったのだ。

 それならば、せっかく子供な今の内に楽しまないと損である。


 不老不死だからずっと子供のままだろうって?

 何を仰いますか!

 見た目は子供でも年齢は大人になっちゃうのだ!

 子供なお婆ちゃんになってからでは、きっと楽しめません!


「ジャスの場合、そんな年齢でも楽しめると思うです」


 うっ、流石はラテちゃんだよ。

 私の顔の表情で、見事に考えている事を当てるなんて。


「イタズラって何をしてくれるの?」


「え? って、り、リリィ!?」


 気が付くと、リリィが食い気味に私の顔に顔を近づけて――って言うかなんか怖い!


「ジャスミン! イタズラって何をしてくれるの!?」


 リリィ落ち着いて?

 凄く目が怖い事になってるよ?


「これ、リリーよさぬか。ジャスミン様が困っておろう」


「……そうね。ごめんなさい、ジャスミン」


「う、ううん。気にしないで」


 フォレちゃんありがとー!

 助かったよぉ。


「して、ジャスミン様」


「うん?」


「お菓子を与えぬとご褒――イタズラとはどういう事ぢゃ?」


 今ご褒美って言いかけたよね?


「がお?」


「えーとね。ハロウィンではって、あれ? 契約した時に私の前世の記憶を知ったんじゃ……?」


「それは解っておる。妾が聞きたいのは、ジャスミン様が何のご褒美をするのかと言う事ぢゃ」


 今度は普通にご褒美って言っちゃってる。

 って言うか、多分言っちゃった事に気がついてないんだろうなぁ。

 でも、そっかぁ……確かに、イタズラの事は何も考えて無かったかも。


 私は「う~ん」と頭を悩ませる。


「ラテはイタズラよりパンケーキが良いです」


「アタシもパンケーキが良いんだぞ」


「がお」


「ボクはハニーのおっぱいの間に挟まって眠るイタズラをするッス」


「別に良いわよ」


「マジッスか!? やったッス~」


「ふん。全く嘆かわしい。ドゥーウィン、其方は少し節度をわきまえよ。妾なら、ジャスミン様が穿いたパンツをハンカチの代わりに使うのぢゃ」


「どっちもおバカです」


「え!? ボクとフォレ様って同レベルッスか!?」


「がお?」


「アタシなら~……主様の頬っぺたを後ろからつついて脅かすんだぞ」


「がお~」


「それイタズラなんスか?」


 イタズラ、イタズラ~……あ、そうだ!


「お菓子を盗んじゃえばいいんだよ!」


 イタズラも出来て、お菓子も食べれて一石二鳥だもん。

 ふっふっふ~。

 私冴えてるかも!


「主様、人の物を盗んだら駄目なんだぞ」


「う、そっかぁ。そうだよね。でも、後から盗んでごめんなさいって謝れば、お菓子を用意してくれてたなら許してくれるかな?」


「用意してなかったらどうするんスか?」


「え?」


 うぅ……。

 そのパターンは考えてなかったよぉ。

 うーん…………。


「よく分からないけれど、良いじゃない。ハロウィンっだっけ? やりましょうよ」


「リリィ……」


 リリィが優しく微笑んで、私は嬉しくって抱き付いた。


「リリィありがとー!」


「ご主人は単純ッスね~」


「おバカなんてこんなもんです」


「嬉しそうなんだぞ」


「ジャチュ、ニヨニヨ~」





 ハロウィン当日。

 リリィが村の皆にハロウィンの事を説明してくれたおかげで、村全体がハロウィン一色に染まっていた。

 カボチャのランタンや街灯。

 顔の描かれたカボチャや白い布を被ったようなお化けなどが描かれたオレンジと紫の旗。

 他にも様々な装飾が村を包み込む。


 村の中で一番大きな広場では、村長さんが子供達にお菓子を配ってパーティを開いている。

 リリィとこの広場で待ち合わせをしていた私は、パーティに参加しながらリリィを待っていた。


「あ! リリィ、ハッピーハロウィ~ン!」


「ええ。ハッピーハロウィ……ン。ジャスミン、その格好は?」


 広場にリリィがやって来たのを見つけて、私が駆け寄って挨拶をすると、挨拶を返したリリィが何とも言えない表情で訊ねてきた。

 私は待ってましたと言わんばかりに、無い胸を張って答える。


「ミイラの仮装だよ!」


 そうです!

 私の今の姿はミイラなのだ!

 一度包帯を全身にグルグル~って巻いてみたいと思っていた私は、今回の絶好の機会を逃さない。

 こんな機会でもないと、包帯がもったいなくて使えないもんね。

 ちなみに、下着は着けてません。

 最初は着けてたんだけど、パンツのラインが見えちゃって恥ずかしかったのだ。

 どうせ包帯を取る事なんて無いし、穿かなくてもいいやって感じ。

 そんなわけで、今の私が身に着けているのは包帯だけなのだ。

 皆には内緒だけどね。


 私がミイラと答えると、リリィはあからさまに不服そうな表情で顔を曇らせる。

 と言うか、リリィにしては珍しくため息までついちゃってる。


「リリーよ。解るぞ其方の気持ち。妾もジャスミン様のこの姿を見た時は、同じ気持ちになったものぢゃ」


 ええぇー。

 そんなに駄目かなぁ?

 これはこれで可愛いと思うんだけどなぁ。

 って、そんな事よりだよ。


 私はリリィの仮装を見て目を輝かせた。

 リリィは狼少女の姿で、つけ耳とつけ尻尾に、下着なんじゃって思えるような面積のもこもこした物を着ていた。

 もう本当に可愛くて、思わず抱き付きたくなる気持ちを私は抑えながらニッコリ笑う。


「リリィ可愛いね」


 リリィの曇った顔が晴れ模様になり、眩しい笑顔を私に向ける。


「ありがとう、ジャスミン。嬉しいわ」


 本当に可愛いなぁ。

 やっぱりリリィって、変態さんだけど顔は綺麗な美少女だから、笑顔が素敵に可愛いよね。


「ご主人、早くお菓子を貰いに行くッスよ!」


「ラテはもう待ちくたびれたです!」


「楽しみなんだぞ!」


「がおー!」


 ヴァンパイアの格好をしたトンちゃんと、カボチャを被ったラテちゃんと、魔女の格好をしたプリュちゃんと、悪魔の着ぐるみパジャマのラヴちゃんが私を引っ張る。


「あはは。うん。そろそろ行こっか」


 実は村長さん意外の大人達も、この日の為にお菓子を用意してくれていて、お家まで行くとお菓子をくれるのだ。

 明るい時間の内は、子供達がお菓子を貰いに一軒一軒まわる。

 暗くなってきたら広場に集まって皆でパーティを楽しもうと、村長さんが提案してくれたのだ。


 おかげで村の子供達は大喜びして、皆楽しそうにお菓子を貰いにお出かけ中だ。

 私もリリィと合流できたので、早速お菓子を貰いに歩き出す。


「むむ? ジャスミン様、包帯が少しほどけているようぢゃ」


「え?」


 どこだろう?


「はい。これ」


「ありが――っ!?」


 リリィが解けた包帯を手に取って、私に渡す為に目の前に持って来たその時、私の下半身で異変が起きてしまった。


 く、くいこんでる!?


 私は焦る。

 と言うか、引っ張らないで下さい!

 私の全身にグルグルと巻かれた包帯は確かに解けていたし、思っていたより解けている部分には長さがあった。

 だからこそリリィは手に取って私に渡してくれようとしたのだけど、それで引っ張られてあそこにくいこんでしまっているのだ。

 あそこってどこだって?

 言いません!

 自分で考えて下さい!


 焦る私のひたい、と言うか、全身から嫌な汗が流れだす。

 顔は赤いだろうか? それとも青いのだろうか?

 むしろ二つ合わせて紫色なんじゃないかってくらいに、私は本気で焦っていた。


「どうしたの?」


「え? ううん。なんでも――ひぅっ」


 リリィに返事をして包帯を受け取ろうとした瞬間だった。

 リリィが私に差し出した包帯の解けた部分を、トンちゃんが奪い取って上昇したのだ。

 私は変な声をらして、うずくまりたい気持ちを我慢する。


「じゃ、ジャスミン?」


 リリィが何となく鼻息を荒くしている様な気もするけど、今の私はそれどころでは無い。


「ご主人~。お菓子くれなきゃイタズラするッスよ~」


 トンちゃーん!

 もうしてる!

 もうイタズラしちゃってるから!

 引っ張らないでー!?

 これでもかってくらいに、くいこんじゃってるからー!


 私は心の中で叫びながらも、表面上と言うか顔の表情は冷静を取り繕って……うん。多分出来てる大丈夫なはずだよ。

 とにかく、取り繕ってるつもりでトンちゃんに話しかける。


「と、トンちゃん? 包帯返して?」


「そうなんだぞ。ドゥーウィン、主様に包帯をお返しするんだぞ」


「がお」


「です。こんな所で足止めを食らっている場合じゃないです。さっさと行くです」


「皆つれないッスね~」


「そう言うでない。みなも早くこのイベントを楽しみたいのぢゃ。其方もそうであろう?」


「そうッスね。ご主人、返すッスよ~」


「ありが――え?」


 その時、悲劇が起こってしまった。

 包帯が今まで引っ張られていた状態だったせいか、トンちゃんが私に包帯を返す為に下降した時に、私の体に巻かれていた包帯が緩んでしまったのだ。

 私の下半身に巻かれた包帯は緩むと、サラサラと地面に落ちていく。


 パンツを穿いてない私は、人の集まるこの広場で、見事に下半身を露出させた。

 私の全身の血液は、急上昇して顔を真っ赤に染め上げる。


「きゃああああああああああっっっっ!!!」


 私の絶叫が広場にこだまして、周りにいた人達の注目を一身に集めた私は、蹲って涙目になった。

 そして、私の目の前にいたリリィはと言うと……。


「は、ハニー?」


「し、心臓が止まってるんだぞ!? 死んでるんだぞ!」


「がお!?」


「死ぬでないリリィ! 誰か、誰か輸血出来る者はおらぬのか!?」


 リリィはとても爽やかで気持ちの良い笑顔で鼻血を噴き出して、立ったまま死んでいました。


「おバカすぎてつきあってられないです。ラテは一人でお菓子を貰って来るです」


 こうして、この世界で初めてのハロウィンは、悲しい事件で幕を閉じるのでした。


 もうやだお家帰る。

 お外怖い。


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