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068 幼女を家宝にしてはいけません

 私の太ももを見て舌なめずりをした龍族のお姉さんメールが、スミレちゃんに視線を移す。

 スミレちゃんとメールが視線を合わせて睨み合う。


「スミレ、ポセイドーン様が怒っていたわよ~。でも、ポセイドーン様は貴女の能力を評価しているから、今ならまだ間に合うわ~。私と一緒にいらっしゃい? 私が取り持ってあげる」


「お断りなのよ! どうせそんな事言って、私の太ももが目当てなのよ!」


「あ~ら。ばれちゃった~? うふふ~」


 うぅ。なんか、このお姉さん怖いよ。

 さっきから何度も私だけじゃなくて、皆の太ももに視線をちらつかせて目を光らせてるんだもん。

 あれ絶対品定めしてる野獣の眼光だよ。


「ご主人、やっぱり関わらない方がよくないッスか? ご主人の嫌いな変態ッスよ?」


 わかってるよぅ。

 でも、アマンダさんのお手伝いがしたいし……。


「アンタ、メールとか言ったわね」


 リリィがスミレちゃんの前に出て、メールを睨みつける。

 リリィとメールの目がかち合い、メールがリリィの太ももを見た。


「随分と太ももに自信があるみたいだけど、私から言わせてもらえば、ジャスミンの太ももに敵う者なんていないわ」


「そうかしら~? 魔性の幼女の太ももは~、確かに魅力的でかぶりつきたい気持ちになるわ。でもお、世の中には上には上がいるのよ~。でもお、そうよね。味見しちゃおうかしら~?」


 ひいぃ!

 怖いよぉ。

 かぶりつかれるよぅ。


「確かにアンタの言う通り、ジャスミンの太ももはかぶりつきたくなる程に魅力的よ。ジャスミンさえその気になってくれるなら、私はいつでもかぶりつく準備が出来ているわ」


 やめて?

 かぶりつかなくて良いからね?


「うふふ~。もう勝った気でいるのかしら?」


 あれ?

 私お話聞きそびれたかな?

 さっきの会話で、どうやってそこにいきつくの?


「勝った気でいる? 違うわね。既に勝っているのよ」


 リリィが勝気に微笑み、私の背後に回る。


「え? リリィ?」


「まさか!?」


 まさか?


 何かを察したのか、メールが驚愕して私の太ももに視線を向ける。

 しかも若干目が血走ってて怖い。

 そして、リリィが私のガーターベルトを勢いよく一瞬で取り外した。


「きゃああああーっ!? え!? 何!? なんなの!? って、あれ? ベルトだけ?」


「ご主人、変態を見るッス!」


 え?


 トンちゃんに言われてメールに視線を向けると、メールは何やら口――鼻かな? を押さえて凄く怖い感じに血眼になって私の太ももを見て息を荒げていた。

 と言うか、さっきより怖い。

 そして、メールが声を絞り出すかのように声を出す。


「そんな……こんな事が…………っ!」


「流石リリィなのよ」


 え? 何が?

 どうしよう?

 私、全然ノリについていけてない。

 そうだ!

 アマンダさんとナオちゃんなら!


 私はアマンダさんとナオちゃんに視線を向けるとって、あれ? いないよ?


「ジャチュ。アミャとニャオ、町のようちゅ見に行った」


 あ、うん。

 そうなんだ?

 流石だよアマンダさん。

 行動が早いね。


「スミレ、勘違いしないでもらえる? 流石なのはジャスミンよ」


 いや、私何もしてないよ?


「確かにそうなのよ。流石は幼女先輩なのですよ」


 どうしよう?

 ついていけない。

 ガーターベルトを外したから何だって言うんだろ――あ、もしかして……。

 えぇぇぇ……いやいやいやいや。

 ないない。


 メールが鼻を押さえるのを止めて、もの凄く息を荒げながら私を見た。

 ちょっと……ううん。かなり怖い。

 って言うか、そのよだれどうにかしてくれないかな?

 水中なのに分かる位に禍々しく光ってて凄く怖いの。


「まさか、ベルトに隠れていた太ももを見せられただけで、これ程の威力とは思わなかったわ~。うふふ~。お持ち帰り決定ね。家宝にするわ~」


 ひぃぃっ!

 お持ち帰りはお断りです!

 家宝にしないで下さい!


「ふん。そんなの、させてあげるわけないでしょ?」


「全くその通りなのよ。幼女先輩に持ち帰って貰って良いのは、ペットである私だけなのよ!」


 ペットにした覚えは――って言うか、論点がずれてるよ、スミレちゃん。


 睨み合う三人。既に場のノリについていけない私。

 最早意味の分からない状況に陥ってしまったこの場に、天使の様な生物が舞い降りた。


「なーご~」


 舞い降りたのはポセイドーンの様に、尻尾の先がイルカさんの尾の様な形をした猫ちゃん。

 全身が薄目の水色で、スイスイと泳いでいる。

 ポセイドーンと違って見た目は尻尾以外は普通の猫ちゃんで、身の丈もポセイドーンより小さい普通の猫ちゃんだ。


 きゃー!

 可愛いー!


 どっからどう見ても愛くるしいその猫ちゃんは、鳴きながらメールの周りをクルクル泳ぐ。

 すると、メールは顔を顰めて気だるそうに呟く。


「わかったわよ~。行けばいいんでしょ行けば」


「なーご」


 猫ちゃんはメールの肩に乗り、メールは私の太ももに一瞥してから、名残惜しそうに後ろを向いた。


 良いなぁ。

 私もあの猫ちゃんとお近づきになりたいよぅ。


「ちょっと、逃げる気?」


 リリィが声を上げると、メールは振り返らずに答える。


「そーそー逃げますよ~」


「はあっ?」


 リリィが顔を歪ませて、メールはそのまま凄いスピードで去って行ってしまった。


 なんだったんだろう?

 って、それよりガーターベルトを着けよう。

 凄く恥ずかしいけど、あんな反応をされたら外せないよ。

 危うく誘拐されるとこだったんだもん。


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