064 幼女は新たな猫耳と出会い王女様と再会する
白い砂浜、青い海、キラキラ輝く満面な笑顔の子供達とマモンちゃん。
私は今、天国にい――
「アマンダの隠れ家? そう言えば、そのアマンダは何処よ?」
「言われてみれば姿が見えないッスね」
「多分今頃は――」
「ぎゃあああああっ!」
スミレちゃんが説明しようとしたその時、突然マモンちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
私は正気を取り戻してマモンちゃんの悲鳴が聞こえた方へ視線を向ける。
するとそこには、猫耳少女にチョークスリーパーを決められているマモンちゃんの姿が。
誰?
マモンちゃんにチョークスリーパーを決めている猫耳少女に、スミレちゃんが慌てた様子で話しかける。
「ナオちゃん! その子は魔族だけど味方なのよ!」
「にゃ!? そーなのかにゃ?」
猫耳少女はチョークスリーパーを解き、私達に近づいて来た。
私達はスミレちゃんを通して自己紹介をする。
スミレちゃんにナオちゃんと呼ばれた猫耳少女。
名前はナオ=キャトフリーで、12歳の猫の獣人の女の子。
真っ赤な髪の毛の前髪はパッツンで、髪の長さは肩までかかる位の長さでおさげにしている。
瞳の色は緑みの鮮やかな黄色、刈安で、眼球は猫ちゃんの様に細長い。
服装は乳ベルトに短パンで、腰には鉤爪の様な物騒な武器がぶら下がっていた。
そして、胸は見事な絶壁を描いていた。
そんな素敵な猫耳少女のナオちゃんは、お話によるとアマンダさんの仲間らしい。
今はお留守番をしていて、魔族のマモンちゃんを見て、敵襲だと思って攻撃したのだとか。
腰にぶら下げた武器を使わなかったのは、マモンちゃんを脅威と感じなかったからだと言っていた。
マモンちゃんって、確か魔族の中でもかなりレベル高いって話だったよね?
それを脅威に感じないって、ナオちゃんってかなり強い子なのかな?
実際にさっきマモンちゃん涙目だったし……。
「そう言えばスミスミ~、姉様がまだ帰って来ないにゃ。お腹空いたにゃ」
「あ、そうなのよ。アマンダさんはお昼ご飯の買い出し中に、私の緊急事態で手伝って貰ったなの」
「にゃ?」
「スミレ、どういう事よ?」
「そう言えば、説明の途中だったなの」
スミレちゃんから説明を受けて、成程と納得した。
と言うか、何やら大変な事になっている様だ。
スミレちゃんのお話を簡単にまとめるとこうだ。
海猫ちゃんを捜しに来たスミレちゃんは、偶然アマンダさんと再会してポセイドーンの事を聞いた。
どうやら、ポセイドーンは南の国でアレースと一緒に戦争を起こそうとしていて、実力者を集めている様なのだ。
アマンダさんがその情報を掴んだのは、仲間のナオちゃんがスカウトを受けたかららしい。
当然ナオちゃんは断ってアマンダさんに報告して、それでアマンダさんがポセイドーンの動向を探る事になったのだとか。
それを聞いたスミレちゃんは、困った時はお互い様だと言って手伝う事にした。
スミレちゃんが音信不通だったのは、連絡を入れるのを忘れて、そのままポセイドーンの仲間入りをしたからだ。
ポセイドーンの仲間になる事で、スミレちゃんはスパイ活動をしていたのだ。
そう言うわけだから、下手に動いてポセイドーンやその仲間に気がつかれたら、全部無駄になってしまうので連絡がとれなかったようだ。
そして今日、私達の登場で事態は急変してしまった。
「何だか悪い事しちゃったね」
「そんな事無いなのですよ。暫らく会えなかったから、幼女先輩に会えて嬉しいなのです」
「スミレちゃん……。私も嬉しいよ」
私はスミレちゃんの手を握って微笑み合う。
「にゃー。姉様お帰りにゃー」
姉様?
私はナオちゃんの言葉を聞いて振り向く。
するとそこには、アマンダさんが歩いて来る姿が見えた。
「お待たせ。少し遅くなってしまったわ」
アマンダさんだぁ!
すっごく久しぶりだなぁ。
って言うか、姉様って呼ばれてるんだ。
この南の国、海底国家バセットホルンの王女様アマンダ=M=シーさん。
私が不老不死になる前に、何度か私を助けてくれた素敵なお姉さんだ。
髪の毛はとても綺麗な空色でポニーテール。
細い目に宿る瞳の色は綺麗な赤紫。
相変わらずメイド服で身を包んでいて、とても綺麗な姿勢なのでモデルさんの様だ。
背中に大きな銃を身に着けていた。
多分、この銃で私達を助けてくれたのだろう。
アマンダさんは両手に買い物籠を持っていて、中には沢山の食料が入っていた。
「アマンダさん。久しぶりだね」
「ええ。ジャスミンお久しぶりね。元気そうで何よりだわ。それにリリィと精霊達も」
「久しぶりアマンダ。アマンダって、この国の王女よね? 自国の兵を使わないの?」
「兵に任せるより、私とナオで動いた方が効率がいいのよ」
「確かにそうなのかもね。前会った時より、凄く強くなってるみたいだし」
え?
そうなの?
「そうね」
リリィとアマンダさんが苦笑し合う。
ごくりと私は唾を飲み込む。
な、なんだか、強者達の会話って感じだよ。
「姉様、本当にスミスミ以外からもアマンダって言われてるにゃ」
ナオちゃんが何故か笑いを堪えながら喋りだして、アマンダさんがナオちゃんを睨む。
だけど、ナオちゃんはそれに慣れているのか、とくに気にした様子も無くアマンダさんが持って来た食料をあさりだした。
「一国の王女様に向かって、名前で呼ぶのは失礼になるんスか?」
「魚人はお堅いですし、あり得る話です」
「そうなのか? だったら、アタシ達とっても失礼な事をしてたんだぞ」
「妾からすれば魚人なぞ他の種族とたいして変わらん。ジャスミン様以外は全てたかが人の子ぢゃ」
「がお?」
精霊さん達が思い思いにお話していると、アマンダさんがそれを可笑しそうに笑って話し出す。
「そう言う事では無いのよ。まだ言った事が無かったけど、私は普段アマンダ=M=シーではなく、メレカ=スーと名乗っているの。私のミドルネームのMはメレカで、普段は身を隠す為にメレカ=スーと名乗っているの」
「え? そうなの?」
「ええ。だから、この国以外で私を知る人の殆どは、私の事をメレカと呼んでいるわ」
「私も最初聞いた時は驚いたなのよ。でも考えてみれば一国の王女様が偽名も使わずに、護衛の兵も連れずに外に出歩くのは危ないなのよ」
言われてみれば確かにそうかも。
普通に考えたら、護衛をつけないってだけでもおかしいのに、偽名を使わないなんて絶対危ないよね。
私がスミレちゃんの言葉で納得していると、アマンダさんは私の顔を見て苦笑した。
「あ、思い出した! ナオって名前を何処かで聞いた事あると思ったら、そう言う事か!」
突然マモンちゃんがお魚をお口にくわえながら大声を上げた。
お魚はまだ生きている様で、ピチピチともがいている。
海で捕って来たのかな?
「メレカにナオって、魔族の間では出会ったら最後、確実に殺されるって有名なヤバい奴等だわ!」
そうなの?
「ナオが先手必勝と言って、見つけ次第魔族に襲い掛かるのよ」
え? 何それ怖い。
「当然にゃ。魔族はぶっ殺すに限るのにゃ」
この子すっごい怖い事言ってるよ!?
「私もアマンダさんがいなかったら、殺されかけてたなのよ」
スミレちゃんが肩を落として顔を真っ青にさせる。
殺されかけちゃったんだね。
生きて再会できてよかったよスミレちゃん。
「にゃー。そんな事より姉様、ニャーの頼んだ猫缶がないにゃ!」
人を殺しかけておいて、そんな事って軽すぎだよ!
って、え?
猫缶?
「売り切れてたのよ」
「にゃー!? 酷いにゃぁ……。海猫も飛びつく美味さって聞いてて、凄く楽しみにしてたのににゃ」
ナオちゃんが尻尾をだらんと下げて、もの凄く落ち込みだす。
う、うーん。
見えない。
出会ったら殺されるなんて、そんなヤバい子には見えないよ?
とっても可愛い猫耳少女にしか見えないんだもん。
でも本人がぶっ殺すとか言っちゃってるし……て言うか、ナオちゃん猫缶なんて食べるの?
私が困惑していると、リリィが食料を見て頷く。
「丁度良いわ。私達もお昼ご飯を食べ損ねていたのよ。この食材使っていい? 私が腕によりをかけてお昼ご飯を作ってあげるわ」
そう言えば、お昼ご飯食べてなかったもんね。
なんだかお腹が空いてきたよ。
そんなわけで、私達はお昼ご飯を取る事にした。




