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059 幼女の旅立ちは美しい景色を添えて

 ハープの都、別名【乙女の園】と呼ばれているその都は、純粋な心を持つ乙女達が暮らす平和な都である。

 汚れた男など一人もおらず、乙女だけが暮らしている。

 この都に来た男達は語る。


「新しい世界が、そこにはある」


 と。




「え? お姉ちゃんとお兄ちゃんも一緒に来るの?」


「ええ。そうよ。ジャスミンちゃん達は小さい子ばかりで危ないでしょ? だから私もジャスミンちゃんのお姉ちゃん、保護者としてついて行く事にしたのよ」


 そう言って、ハッカさんが私に満面の笑みを見せる。


「ありがたく思えよチビッ子。勇者としては、お前みたいな小さい子供だけの旅を見過ごせないんだ。俺も良き兄、保護者としてチビッ子の旅について行くぜ」


 そう言って、レオさんが私に微笑む。


 さて、何が起きていたのか説明しましょう……と言いたい所なのだけど、むしろ私が説明してほしい。


 マッサージ店でアプロディーテーさんとのお話を終わらせた私は、ハープの都から旅立つ為に宿に戻っていた。

 すると、ハッカさんとレオさんの2人が喧嘩しながらやって来て、まず最初に出た言葉がこれ。


「ジャスミンちゃん。今後は私の事は、お姉ちゃんって呼んでね」


「俺の事はお兄ちゃんって呼んで良いぜ」


 そんなわけで私が2人を「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」と呼ぶと、2人が目を輝かせて、一緒に旅について来ると言い出したのだ。

 本当に意味が分からない。


 と言うか、ハッカさんは何となくわかるけど、何でレオさんまでって感じだ。

 二人は私の旅について行くと言ってから、突然睨み合う。


「レオはアプロディーテー様の為に忙しいんだから、無理に来なくていいわよ」


「あ? ハッカ、お前こそアプロディーテー様の護衛はいいのかよ? 無理に来なくていいんだぜ?」


 私は困惑しながら二人を見て苦笑した。

 するとそこで、宿のある方角からリリィとマモンちゃんが仲良くお喋りをしながらやって来た。


「あら? ジャスミン早かったわね。もうアプロディーテーと話はって、ハッカと自称勇者じゃない」


「こいつが自称勇者か? 弱そうだな!」


「今日からお前等と一緒に旅をする事にしたんだ」


「リリィちゃんおはよう。この馬鹿は気にしないで? 寝ぼけてるだけだから」


 ハッカさんとレオさんが睨み合う。

 本当にこの2人はさっきまで付き合っていたのだろうかと、私は困惑しながら苦笑する。


「自称勇者が私とジャスミンの旅について来る? そんなの認めるわけな――」


「チビッ子、ジャスミンの恋人のリリィだったよな? よろしく頼む」


「――思っていたより良い奴じゃない。歓迎してあげるわ」


 え? リリィ?

 チョロすぎじゃない?


「自称勇者は思っていたより中々やり手ッスね」


「リリィが馬鹿なだけです」


「それよりジャスミン様、全員揃った事ぢゃし、そろそろ次の目的地に行かぬか?」


「あぁ、うん。そうだね」


 次の目的地は南の国。

 なのだけど、実はその前に行かなければならない所がある。

 それは、ここハープの都に来た理由になったモーフ小母さんの所だ。

 レオさんがわたし達に同行すると言っているし、丁度良いと私は考えた。


 そんなわけで、まずはモーフ小母さんに会いに行く為に、私達はハープの都を出る事にした。

 そして、今回はセレネちゃんに我慢してもらって、飛んで行く事にする。

 ここまで歩いて来て思ったのだけど、歩くと結構時間がかかるし結構大変なのだ。


「あー。空から行くのは正直きついけど、やーっと、ここから出られる~」


「あはは。セレネちゃんは、やっぱりこの都が苦手なんだね」


「あったりまえじゃん。って、うげ! まただ!」


 空を飛んでハープの都から出ようとする直前に、セレネちゃんが何かを見ながら顔を青くさせて私の腕にしがみつく。


「え?」


 私は首を傾げてセレネちゃんの見ている方向に視線を向けた。

 するとそこには……。


「あれって、もしかしてあの時のモヒカンおじさん?」


「そーよ。ジャスは気がつかなかったみたいだけど、あんなんがうようよいんの!」


「そ、そうだったんだ……」


 私が見たのは、ハープの都に辿り着いた時に私達に絡んで来た世紀末的な格好をしていたモヒカンおじさん。

 しかし、その姿は最早別人だった。

 辛うじて私が気がついたのは、その特徴的なモヒカンがあったからだ。


 そして、私はモヒカンおじさんを見て顔を青ざめさせた。

 何故なら、モヒカンおじさんは厚化粧で女性用のお洋服を着こなして、すっかりオネエさんへと姿を変えてしまっていたからだ。


 まさか、ハープの都にこんな秘密が隠されていたなんて……。


 私は何とも言えない気持ちを抱えながら、私の腕にしがみつくセレネちゃんを連れて空高く舞い上がる。

 セレネちゃんは私にがっちりとしがみ付き目をつぶる。

 リリィはハッカさんを、マモンちゃんは重力の魔法で自らとレオさんを宙に浮かせる。


「主様、ハープなんだぞ」


「ハープ、がおー」


「え?」


 プリュちゃんとラヴちゃんの言葉を聞いて、私は上空からハープの都を見下ろした。


「わぁ。綺麗」


 私は感動して声を漏らす。

 上空から見たハープの都の姿は、楽器のハープを思わせる様な、本当にとても綺麗で美しく今にも綺麗な音色が聞こえてきそうな姿だった。

 私はその美しいハープの都の景色を見て、新たな出会いや景色に胸を躍らせた。


 ハープの都って、こんなに綺麗な所だったんだね。

 何だか、海猫ちゃんだけじゃなくて、南の国の景色も楽しみになってきたよ。

 よーし!

 南の島でも頑張るぞー!


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