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057 精霊は月夜に照らされ談笑する その2

 マッサージ店が半壊して、私が新たに【半裸の痴幼女】と言う二つ名を手に入れたその日の夜、今日も可愛らしい精霊さん達が月夜に照らされ談笑する。

 場所は元マッサージ店のあった場所。

 私とフォレちゃんが魔法を使って木造住宅を作り上げて、アプロディーテーさんにごめんなさいをしてプレゼントしたお家の屋根の上。

 ここには今は精霊さん達しかおらず、私やリリィ達の姿は無い。


 精霊さん達は今日あった出来事を笑って話し合い、お話はリリィの記憶喪失の話題となった。


「リリさん、記憶喪失の原因は女の子の日だったからみたいだぞ」


「女の子の日って、生理って事ッスよね? マジッスか?」


「だぞ。終わったと思って油断したって言ってたんだぞ。だから、主様には余計な心配はかけさせたくないから黙っていてって言われたんだぞ」


「そんなのいつ聞いたんスか?」


「今日リリさんが気絶から目を覚ました時に、まだ調子が悪いのかしらって呟いていたのを聞いて、主様がいない時にこっそり聞いてみたんだぞ」


「なるほどッス」


「どうでも良いですけど、それで記憶を無くしていたら、世の中の女の人は皆記憶喪失です」


「そうッスね」


「が、がお」


 確かにと、トンちゃんとラヴちゃんが頷く。

 すると、フォレちゃんが扇子を持ち、口元を隠しながら微笑んだ。


「いや、ラテール。そうでも無いかもしれぬぞ」


「どう言う事です?」


「妾達精霊は、其方等も十分解っておると思うが、自然の加護の恩恵を受けて生を成す。それ故、人間達の様な子を産むと言う行為がない」


「そうッスね。でも、それが何か関係があるッスか?」


 トンちゃんが訊ねると、フォレちゃんは頷いた。


「左様ぢゃ。それは個人によって症状が様々。激痛で動けなくなる者、情緒不安定になる者や、逆に活気づく珍しい者も稀におると言うではないか。ならば、リリーの記憶喪失も、その稀に分類されるのではないか?」


「なるほどッス! 確かに、ご主人も不老不死を目指した原因が初潮を迎えたくなかったからッス! そんな恐ろしい物なら納得ッス!」


「あり得る話です。リリィはおバカだから、きっとおバカな事になったです!」


「きっとそうなんだぞ。リリさんは優しいから、主様に心配かけさせない為に無理をしすぎちゃったんだぞ」


「がお?」


「そういうものですの?」


 皆バラバラの意見ではあったけれど、一部の者を納得させたフォレちゃんは得意気に微笑する。


「ボク、ハニーに生理と記憶喪失の関係の真相を聞いて来るッス!」


 トンちゃんが宙を舞おうと羽を広げる。

 すると、フェルちゃんが慌ててトンちゃんの腕を掴んだ。


「落ち着きますの! ドゥーウィン、そう言うデリケートな事は、むやみやたらと本人に聞かない方がいいですわ!」


「えー、そうッスか? ハニーなら別に生理の事を聞いても気にしないと思うッスよ?」


「実際隠していたのは事実ですのよ! そもそも、その生理生理言うのをやめますの! はしたないですわよ! オブラートに包んで、他の方々の様に女の子の日と言ってほしいですわ!」


「えー? フェールは気にしすぎッスよ」


「ドゥーウィンが気にしなさすぎなのですわ!」


 トンちゃんとフェルちゃんが言い合いをしていると、ラヴちゃんが「がお!」と、可愛らしく元気に手を上げる。

 ラヴちゃんが手を上げると、トンちゃんとフェルちゃん、そして皆がラヴちゃんに注目した。


「ホットミルクちゅくった」


 ラヴちゃんが、私が昨日のサウナ我慢大会で優勝して手に入れた商品の牛乳を温めて、それを入れたコップを皆に差し出す。


「気が利くッスね」


「ありがとうですわ」


「ラヴは良い子です」


「ありがとなんだぞ」


「うむ。ありがたく頂くのぢゃ」


 ラヴちゃんの活躍で、皆はお行儀よくちょこんと座ってホットミルクを飲み始める。可愛い。


「そう言えば、まだ聞いてなかったですけど、フェールは何でアプロディーテーの言う事を聞いていたです?」


 ホットミルクを飲みながら、ラテちゃんがフェルちゃんに訊ねると、フェルちゃんはホットミルクを飲むのを止めて肩を落とす。


「大精霊ノーム様ですわ」


「ノーム様です? そう言えば、ノーム様も言う事を聞いていたみたいです」


「何かご主人にエロ爺って言われて、昼間こき使われてたッスね」


「そうぢゃな。ノームも気色悪い顔ではいはい言っておって、気味が悪かったのぢゃ」


「主様に完敗して、その強さに惚れたって言ってたんだぞ」


「ジャチュ、ちゅよーい」


「そうですわね。その大精霊ノーム様と、レオが強制的に契約を交わしたのですわ。それで、わたくしは脅されていたのですわ。大精霊ノーム様の力で、ドワーフの国を滅ぼされたくなければ言う事を聞けと」


「成程のう。確かにノームの力があればドワーフの国など一瞬にして滅んでしまうのぢゃ」


「ドワーフの国は鉱山の地下にあるッスからね~。生き埋めにされちゃうッス」


「でも、それももう心配の必要が無くなりましたわ。ジャスミンには本当に感謝していますの。もしドワーフの国に男の子が生まれたら、きさきとして是非迎え入れたいですわ」


 フェルちゃんが楽しそうに笑顔で話すと、トンちゃんが眉根を下げる。


「それは……絶対ハニーが国を滅ぼしに行く案件になるッスよ」


「いや。そうなれば、リリーより先に妾が滅ぼしに行くのぢゃ」


 フォレちゃんがトンちゃんに続いて話すと、フェルちゃんが冷や汗をかいて苦笑した。


 それからも、精霊さん達はお話を続ける。

 次の目的地は南の国。

 海猫ちゃんを見たいと言う私の我が儘もそうなのだけど、音信不通のお友達スミレちゃんを捜しに向かう。

 精霊さん達は昨日と今日の失敗を踏まえて、次こそは私の役に立つんだといったお話で盛り上がる。


 精霊さん達は温かいミルクを飲みながら談笑する。

 笑顔が絶えない精霊会議はまだ始まったばかりだ。

 こうして精霊さん達の楽しい夜は続いていき、今日も夜は更けていくのでした。


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