055 幼女のパンツは特注品
私が大精霊ノーム――エロ爺の身動きを封じると、今まで黙って様子を見ていたアプロディーテーさんが、ついに動き出す。
アプロディーテーは怪しく笑みを……本当に怪しい。
何故だろうか?
アプロディーテーさんの怪しい笑みは、物凄くニヤニヤなのだ。
って言うか、何か凄く私を見てる。
「よ、夜這いをしに来てお友達と言ったわね?」
え?
夜這い?
何の話って、あぁ、そう言えば扉に書いてあったね。
私が扉の事を思い出していると、私の代わりにプリュちゃんが笑顔で答える。
「そうなんだぞ」
プリュちゃん、夜這いの所は否定して?
プリュちゃんが答えると、アプロディーテーさんの様子はいよいよ怪しくなり、わなわなと震えだす。
すると、今まで眉根を下げて様子を見ていたフェルちゃんが、アプロディーテーさんに話しかける。
「ウェヌス、落ち着いて下さいですの」
「これが落ち着いていられるもんですか! パンツの幼女が私を夜這いしにきたのよ! つまりこれはセフ――」
「ちっがーう! 夜這いなんかしに来てないよ!」
私は慌ててアプロディーテーさんの言葉を遮って叫ぶ。
しかし、アプロディーテーさんの暴走と言うか妄想は止まらない。
「いいわ~。いいわよパンツの幼女。いいえ、ジャスミンちゃん! そーいう淫らで爛れた関係も大歓迎よ!」
そんな関係は歓迎しません!
って言うか、パンツの幼女って言わないでくれるかな?
まあ、ジャスミンちゃんって言い直してくれたから良いけど。
「役にも立たない男共はそこら辺に捨てて、今から二人でベッドの上で運動会ね!」
ベッドの上で運動会なんてしません!
「ちょっと~、私がいる事忘れてない? ちょームカつくんですけど」
セレネちゃんがアプロディーテーさんを睨み一歩前に出る。
私はそれに合わせて、セレネちゃんの胸を隠したまま慌てて動く。
そしてその時気がついた。
自称勇者の能力で着ているお洋服が無くなってしまったのだけど、パンツだけは無事だった。
だからこそ、私はセレネちゃんの大きなお胸を隠しているわけなのだけど、よく見るとセレネちゃんはパンツを穿いていないのだ。
私は首を傾げてセレネちゃんに訊ねる。
「セレネちゃんってパンツ穿かないの?」
「そんなわけないじゃん、ってあれ? ジャスのパンツは消えてないね」
「うん」
私とセレネちゃんが2人揃って首を傾げる。
すると、アプロディーテーさんが私の穿いているパンツを見て、目を見開いて驚いた。
「そのパンツは! まさか、ハッカが私を裏切ったの!?」
アプロディーテーさんの言葉を聞き、セレネちゃんがニィッと笑って八重歯を見せる。
「へ~。そー言う事ね~。アプロディーテーの加護を受けたあの女の作ったパンツだから、ジャスのパンツは消えないってわけか~」
なるほど。
ハッカさんのおかげで私の下半身はギリギリ守られたんだね!
って言うか、セレネちゃん、早く下を隠して?
流石に私がそこを手で触って隠すのはアウトだと思うの。
「まさかハッカが裏切るなんて。そんな……」
アプロディーテーさんが悲しそうな表情をして、私をと言うかパンツを見る。
そして、一度首を傾げてから、小さく手を上げた。
「ねえ、アルテミス。ジャスミンちゃんが大変そうだから、貴女ちょっと元に戻ってくれない?」
「は? いーけど」
セレネちゃんが元に戻り、可愛らしい6歳の女の子の姿になる。
私は安心して、セレネちゃんの可愛らしくなったお胸から手を離して考えた。
あれ?
一瞬安心して手を離しちゃったけど、これはこれでアウトなのでは?
「やっぱりそうだわ!」
突然アプロディーテーさんが大声を上げた。
セーフかアウトかを考えだした私は驚いて、ビクリと体を震わせてアプロディーテーさんに視線を向ける。
「どうやら、ハッカは私を裏切ったわけでは無いみたいね」
アプロディーテーさんが微笑んで言葉を続ける。
「流石はパンツの幼女と噂に違わぬジャスミンちゃんね。これはこれで最高よ! 脱がしたくなる可愛さね」
やめて?
「そんな事よりさ~。アプロディーテー、アンタってジャスを殺すんじゃなかったの?」
「殺す? 確かにそうね。だけど気が変わったのよ」
「じゃあ、もう主様をいじめたりしないのか?」
プリュちゃんが眉根を下げて訊ねると、アプロディーテーさんが爽やかに微笑んで答える。
「そうね。むしろいじめてほしいくらいよ」
それ違う意味のいじめるだよね!?
そんな事しないよ!
「いじめは良くありませんわ」
「ジャスさいてー」
「え!? 私!?」
何故か私が悪い人みたいな雰囲気になり、思わず声を出して驚いた。
するとその時、突然の来訪者が現れた。
「ジャスミン! 助けに来たわよ!」
「り、リリィ!?」
そう。
突然の来訪者とはリリィの事だ。
リリィは窓を蹴破り、窓ガラスの破片を床に散りばめながら勢いよく着地して、大きな鞄を持って現れたのだ。
アプロディーテーさんとフェルちゃんが、突然窓を蹴破って入って来たリリィに驚いて視線を向ける。
「お前は!?」
「リリィですの!?」
リリィはアプロディーテーさんを睨みつけ、私の側まで一瞬で近づく。
そして、パンツと腰かけポーチしか身に着けていない私の姿を見て、リリィは鼻血を流した。
「フォレに言われて先に来て正解だったわね」
「リリィ、来てくれてありがとー」
私はリリィが駆けつけて来てくれた事に感謝して、リリィの鼻血を拭う。
すると、リリィは私に柔らかく微笑んで、鞄の中からガーターベルトとガーターストッキングを取り出した。
「ハッカから聞いていた通りね。自称勇者の能力が変態野郎な能力ってわかって、念の為にベルトの方も用意したのよ」
「あ! そうだよ! リリィ、ごめん! せっかく誕生日にプレゼントして貰ったのに、無くなっちゃったの」
私がリリィの言葉で気がついて、リリィから貰った大事なガーターベルトを失ってしまった事を謝ると、リリィは首を横に振った。
「そんなの良いわよ。それより、早くこれを今から着けて?」
「え? あ、うん」
何故今? と思いながら、私はリリィが取り出したガーターベルトとガーターストッキングをその場で身に着ける。
私が言われて身に着けたのは、白くて可愛いガーターベルトとガーターストッキング。
両方ともレースがついていてとても可愛らしく、何よりも、私の大好きなデザインがついていた。
そう。
私が大好きなデザインとは、勿論天使の羽のデザインだ。
そして、私を象徴するかのように、デフォルメされたジャスミンの花も勿論ついている。
本当に凄く可愛くて、私は思わず目を輝かせた。
「リリィ、着けたよ。凄く可愛いね」
笑顔をリリィに向けたその時、私は気がついてしまった。
「主様、リリさんとアプロディーテーさんが気絶してるんだぞ」
はい。
ちょっと意味が分からないのだけど、何故かリリィとアプロディーテーさんの2人は本当に凄く良い笑顔を私に向けながら、立ったまま気絶していました。




