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052 幼女を狙うヤバい理由

 宿の店主さんにごめんなさいをしてから、プルソンさんとオぺ子ちゃんと一緒にロビーに向かう。

 ロビーまで来ると、私は待っていてくれた皆と合流して、海猫ちゃんのお話を始めた。


「海猫ッスか?」


「うん! 南の国に行けばいるらしいんだよ! 皆で海猫ちゃんに会いに行こうよ!」


「ジャス、アプロディーテーと友達になるんじゃなかったです?」


「勿論なるよ~。だから、早くアプロディーテーさんとお友達になって皆で行こう」


「主様は海猫知らなかったのか?」


「うん。南の国って謎が多いんだもん」


「がお」


「そうぢゃな。殆どが海で覆われておるからのう。あの国は秘密主義でもあるし、知らぬのも当然ぢゃ」


「ねー。そんな事より、こいつどーすんのさ~」


 セレネちゃんが雷使いのお姉さん、エレキさんに指をさす。


 実は、エレキさんはフォレちゃんの魔法で出した木の根で縛られて、身動きとれない状態になっていた。

 この状態でよくゲーム機なんて出せたなぁ、なんて私は思いながらエレキさんを見た。


「もう帰ってもらっても良いんじゃないかな?」


 私が答えると、セレネちゃんが顔を顰めた。


「ジャスは命を狙われたのよ? それなのに逃がすって、馬鹿すぎじゃん」


「でも、私って不老不死だから死なないし」


 私が答えると、セレネちゃんが私の側まで来て、耳元で大きく怒鳴る。


「神には通じないって教えたっしょ!? 聞いてなかったの?」


「あはは……」


 私は耳を指で押さえながら苦笑した。


 あー、うん。

 そう言えばそうだっけ?

 でも……。


「エレキさんは神様じゃないし、大丈夫じゃないかな?」


「んなわけないっしょ! 馬鹿なの!? アプロディーテーの加護を受けてるから、そーいうの無効にされんのよ!」


 あー、成程って感じだよ。

 世の中そんな上手い話はないもんね。

 不老不死って言っても、私ってなんちゃって不老不死なんだなぁ。

 なんちゃって不老不死だなんて、自分で言っておいてなんだけど、何だか可笑しいね。

 何それって感じ。


「ジャス、何ニヤニヤしてんのよ! ちゃんと私の話聞いてんの!?」


「あ、うん。聞いてる。聞いてるよ~」


 でも、神様の加護の恩恵を受ければ不老不死の相手も倒せちゃうだなんて、結構何でも有りなのかもしれないなぁ。

 まるでリリィみたい。


「ジャスミンは相変わらず大変そうだね。そう言えば、リリィの姿が見えないけど珍しいね」


「え? うん」


 オぺ子ちゃんが苦笑しながら話しかけてきたので、私は返事をして言葉を続ける。


「ガーターベルト用のストッキング、えーと、ガーターストッキングだっけ? を、ハッカさんって言うお姉さんと作りに行ったんだよ」


「へ~。……え? ハッカさん? ハッカさんって、ハープの都にある有名なランジェリー専門店のオーナーの娘さんのハッカさん?」


「うん。多分その人」


「やっぱり凄いなジャスミンは。そんな有名人とも知り合いなんだね」


「知り合いじゃないよ。お友達だよ!」


「はは。そうなんだね」


 私とオぺ子ちゃんが笑い合う。

 すると、それを見ていたエレキさんが、私を睨んで大声を上げる。


「ハッカとお前が友達? 笑わせるな! ハッカのウェヌス様への忠誠心は熱い! ウェヌス様を差し置いて、お前と友達になるわけがないだろ!」


 ん?


わめくな。鬱陶うっとうしい奴ぢゃ」


 フォレちゃんがエレキさんを縛る木の根の力を込める。

 エレキさんは苦しそうに表情を歪めながらも、フォレちゃんを睨んで言葉を続ける。


「魔性の幼女はウェヌス様のものだ! ハッカのものではない!」


 誰のものでもありません。

 って、そうじゃないよ!

 え? 何?

 どう言う事なの!?


「あれ? 主様は命を狙われてたんじゃないのか?」


「命? そうね、確かに狙っているわ。魔性の幼女を殺し、ウェヌス様のものにする為に」


 ひぃぃっ!

 何それ怖い!

 物凄く怖すぎるよ!


「ご主人、良かったッスね。案外簡単に一人目の友達出来るかもしれないッスよ?」


「良くないよ!」


 って言うか、どうしよう?

 絶対お友達になる為の難易度が高いよ。

 だって、すっごく怖いんだもん!


「ジャス、やっぱお友達大作戦なんてむぼーな作戦は諦めたら? マジで絶対無理だって」


 ぐぬぬぬ。

 言い返せない。

 だって、私もそう思っちゃったんだもん。

 アプロディーテーさん怖すぎだよぅ。

 ヤンデレさんすぎるんだもん。

 貴方を殺して私も死ぬのって感じのヤバいやつなんだもん。

 あれ?

 ちょっと違う?

 って、そんな事はどうでも良いよ怖いよ!


「ジャスミンちゃん、ちょっと良いかしら?」


 頭を抱えて悩んでいると、プルソンさんが私に話しかけてきたので、私はプルソンさんを見上げて目を合わせ首を傾げた。


「本当は話す気は無かったのだけど、海猫を見に行くようだし話しておくわね」


「何かあったの?」


「そうね。実は迷子の子猫ちゃんを捜して来てほしいのよ」


 迷子の子猫ちゃん?


 私は頭にハテナを浮かべた。

 迷子になってしまった子猫ちゃんを捜すのは構わないどころか、進んで協力したいのだけど、それが海猫ちゃんに会いに行くのとどういう関係があるのかわからなかった。


「実はさ、スミレさんが海猫を捜しに行ってから消息不明なんだよ」


「なんだぁ、子猫ちゃんってスミレちゃんの事かぁ――っえ!?」


 プルソンさんの言葉を補足するようにオぺ子ちゃんが話して、私は驚いた。

 すると、驚く私を見て、オぺ子ちゃんが慌てて言葉を続ける。


「消息不明って言っても、多分大丈夫だよ! 知り合いがいるって言ってたし!」


 知り合いがいるって言ったって、消息不明なんだよね?

 大事件だよ!

 もしかして、だからさっき私がスミレちゃんの事を聞いたら、ん~って考えてから話したの?

 よく考えてみたら、ちょっとおかしかったもんね。

 皆で世界中の猫ちゃんを集めてるんだもん。

 確かとか言って言葉をぼかしてたけど、普通は行った場所位わかるはずだもん。

 だって、海猫ちゃんは南の国にしかいないんだもん!


 私が顔を真っ青にして考えていると、今まで黙って聞いていたわけでは無く、精霊さん達と一緒に寝転んでゲームを楽しんでいたマモンちゃんが立ちあがった。


「南の国に行くなら私も行ってやるわ!」


「え?」


 マモンちゃんが無い胸を張って私と目を合わす。


「私は泳ぎが得意なんだ。甘狸、感謝しなさい!」


「ありがとー、マモンちゃん」


「リリィ=アイビーと、甘狸のスカート捲り対決の決着を今度こそつけるついでだから気にするな!」


 それはやめて?

 つけなくていいよそんな決着。

 と言うか、凄く迷惑だから、マモンちゃんが気にしてほしいなぁ。




【ジャスミンが教える幼不死マメ知識】

 アプロディーテーさんは、皆も知っての通りハープの都ではウェヌスって名乗ってるけど、自称勇者の皆には好きに呼ばせてるみたいだよ。

 だから、アプロディーテー様って呼ぶ人と、ウェヌス様って呼ぶ人がいるみたいなの。

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