047 幼女も困惑する卑怯な手段
前書きで失礼します。
あとがきで【ジャスミンが教える幼不死マメ知識】が不定期で始まります。
ストーリーには関わらない裏話的なものですが、興味がある方はお気軽にお読みください。
サウナ我慢大会に勝利して、優勝賞品の牛乳各種詰め合わせセットを手に入れた。
普通の牛乳、コーヒー牛乳、イチゴ牛乳、豊胸牛乳?
何だか怪しげな牛乳も混ざっている。
うーん。
まあいっか。
そんな事よりお着替えだよね。
ハッカさんから貰ったパンツを早速穿く時がきたよ!
そんなわけで、大会も終わったのでお着替え開始。
私はハッカさんから貰ったパンツを早速穿く事にした。
「ご主人ご機嫌ッスね」
「えへへ~」
「ニコニコ笑顔なんだぞ」
「えへへ~」
「がおー」
「がお~」
「ジャスミン様、そのパンツ、とってもお似合いぢゃ」
「ありがとー。って、あ、フォレちゃん」
いつの間にか、フォレちゃんが戻って来ていたようだ。
お着替え中に精霊さん達の姿を見て、気になった事が一つ。
私はキャミソールを着ながら、皆に訊ねる。
「そう言えば、ラテちゃんは何してるの?」
「ラテは……何してるんスかね?」
「え?」
トンちゃんが首を傾げるので、私も一緒に首を傾げてプリュちゃんに視線を移す。
「知らないんだぞ」
あ、あれ~?
ラヴちゃんは……。
「ちらない」
今度はラヴちゃんに視線を移そうとしたが、移す前にラヴちゃんが答える。
私は額から汗を流し、フォレちゃんに視線を向ける。
「妾も知らぬ。ラテール本人は楽しみにして待っていろと言っていたのぢゃ」
あぁ……、うん。
ラテちゃんって、そういう子だったね。
1人で行動する時は何をするのか話さないんだよね。
ホントに何してるんだろう?
うーん。
通信で連絡が取れるかどうか試してみようかな?
そう考えた私は、早速加護での通信を試みる。
『ラテちゃん、聞こえる?』
『ジャス? どうしたです?』
あ、通じた。
通じたって事は、特に問題は無いって事だよね?
それなら、特に気にする事も無いのかな?
うーん……でも、これから危ない事をしようとしてたら困るし、どうしよう?
やっぱり聞いた方が良いよね?
『ジャス?』
ついつい考え事をしちゃった私を訝しんで、ラテちゃんが私の名前を呼んだ。
『あ、ああ。えーと、ごめんごめん』
『まあ良いです。それよりジャス、丁度良かったです』
『え?』
『何かあったんスか?』
と、トンちゃんがお話に参加する。
『トンペットも丁度良いです』
『ボクもッスか? 本当に何があったんスか?』
『フェールに事情を聞き出そうとして、アプロディーテーの配下の雷使いに捕まったです』
『えええぇぇっ!?』
『魔法では無く能力みたいで、ちょっと厄介です。それでも、雷を扱えるトンペットなら何か役立つかもですから、今からジャスと一緒に助けに来るです』
『そう言う事ッスか』
雷使いって、多分マッサージ店で私に電撃を使った人だよね?
あれって、魔法じゃなくて能力だったんだね。
言われてみればだけど、どうりで右手から煙が出てたわけだよ。
よく考えてみたら、魔法なら普通は煙なんて出ないもんね。
って、そんな事を考えている場合じゃないよね。
『ラテちゃん、場所を教えて?』
『場所は宿屋です』
『うん。わかった。宿屋だね! ……え? 宿屋?』
『です。ジャス達と別れた後、ラテはフェールから事情を説明してもらう為に、まずは万全の準備をする為に宿屋のロビーのソファーの上で寝たです。フカフカで気持ち良かったです』
『う、うん』
って言うか、そんな所にいたの?
気がつかなかったよ。
『それで、目が覚めたら雷使いに捕まっていたです!』
えーと……うん。
能力関係なくない?
って言うか、それ、フェールちゃんから事情聞き出そうとしてすらいないよね?
『バカッスね』
こらトンちゃん。
そんな事言ったらダメだよ。
トンちゃんが呆れた顔で呟いたけど、ラテちゃんは気にせず言葉を続ける。
『今は雷使いが、ジャスが帰って来るのを待っているみたいです。多分不意打ちするつもりです。ラテの寝こみを襲うような卑怯な奴です。ジャスも気をつけて帰って来るですよ』
『う、うん。気をつけて帰るね』
私はラテちゃんとの通信を切って、どうしようかと考える。
ラテちゃんのお話から察するに、雷使いのお姉さんは、宿のロビーで多分待ってる。
しかも、私の記憶が正しければ、あそこは隠れられる様な場所が無かった筈だから普通に待ってると思う。
そもそも、ラテちゃんはソファーで寝ていたのだ。
寝こみを襲われたとは言っているけど、別に部屋の中で襲われたわけでもないし、ラテちゃんの話す雰囲気からすると事件になっていない。
だからこそ、騒ぎになっていないから、そのまま私の帰りを待っているのだろうと考えられる。
うーん。
普通に入口から入ろうかな?
「どうしたんですか?」
私が頭を悩ませていると、リリィが心配そうに私の顔を見つめた。
「ラテがサボって捕まっちゃったんスよ」
「その様ぢゃな」
「聞いてたの?」
「うむ」
「だぞ」
「がお」
私が訊ねると、3人が頷いた。
あはは。
そうだよね。
私達は基本いつでも通信のお話を聞ける様にしてるし、聞いちゃうよね。
「何々? 何の話?」
セレネちゃんが興味あり気に訊ねて、トンちゃんが説明する。
説明を終えると、セレネちゃんは呆れた表情であくびした。
「馬鹿じゃん」
「ボクもそう思うッス」
「そうぢゃな」
3人とも辛辣だなぁ。
「可哀想です。早く助けてあげましょう」
リリィが私の手を握って、真剣な眼差しで私と目を合わせた。
「うん」
私は頷いて、途中で止めてしまっていたお着替えを再開する。
ニーソを穿いて、ニーソとガーターベルトを繋げて――
「ジャスミンちゃん、着け方が少し違うわよ」
「え?」
話しかけられて振り向くと、ハッカさんが荷物を抱えて立っていた。
「ガーターベルトはショーツの、パンツの下に着けるのよ」
「え? そうなんだ」
「それにそれ、ガーターストッキングじゃなくて、普通のニーソでしょ? ちゃんとガーターストッキングを穿かなきゃ痛んじゃうわよ」
私は開いた口が塞がらなかった。
今までリリィから貰ったガーターベルトを気に入って付けていたけど、私の周りには付けている人がいないし、何よりそんな知識は持ってないのだ。
と言うか、ガーターストッキングとは? な感じである。
私が突然の為になる情報に驚いていると、ハッカさんが何か勘違いをして苦笑して言葉を続ける。
「あ、もしかして、知っててパンツの上に着けてた? ジャスミンちゃんはおトイレで外すのを気にしないタイプだったのね。それに、ファッションとして着けるならそうするわよね。余計な事言ってごめんね」
そこで私はハッとなる。
「ううん。違うの。全然知らなかったから、凄く勉強になるなって思って聞いてたんだよ」
「え? そうなの? それなら良かったわ」
私が慌てて理由を説明すると、ハッカさんが笑顔を私に向けた。
ハッカさんの笑顔って、凄く可愛い。
でもそっかぁ。
ファッションで着けるわけじゃなかったら、パンツの下に着けたりもするんだね。
確かに、いつもおトイレでベルトを外さないとパンツを降ろせないから、そこは不便だなって思ってたんだよね。
とりあえず、今回はもうパンツ穿いちゃったし、次からはそうしよう。
実用性が大事だもんね!
【ジャスミンが教える幼不死マメ知識】
牛乳各種詰め合わせセットには、普通の牛乳8本、コーヒー牛乳6本、イチゴ牛乳6本、豊胸牛乳10本が入ってたよ。
豊胸牛乳の効果は絶大で、参加者は胸の悩みを抱えるお姉さんが多いみたい。
サウナ我慢大会は年に一回開かれて、オネエさんばかりいるハープの都の何処にいたのかと聞きたくなる程のお姉さん達で賑わうんだよ。




