040 幼女も歓喜する創造神との出会い
ロンデさんの後に続いてマッサージ店に向かって歩いている途中で、フォレちゃんがトンちゃんに向かって話しかける。
「して、ドゥーウィンよ。例の件はどうなったのぢゃ?」
例の件?
「勿論わかったッスよ~」
「ねえ、例の件ってなあに?」
私が首を傾げて訊ねると、トンちゃんがフォレちゃんの顔を見た。
「あれ? 言ってなかったんスか?」
「そうぢゃな。わざわざ言う事でも無いぢゃろう」
「ねえねえ、それで例の件って何なの?」
私が、じれったくなって急かす様に訊ねると、トンちゃんが答える。
「ご主人がいつも穿いていたパンツを作ってる工場を探していたッスよ」
「え?」
「ジャスミン様の下着を制作している工場が、このハープにあるのぢゃ。リリーと言えば、ジャスミン様の下着であろう? 記憶を取り戻す手掛かりになればと思うてのう」
「そうだったんだ……」
「ご主人が最近穿いてるパンツは、縞パンとか紐パンとかッスからね~。きっと、ご主人が白いパンツを穿いて見せたら、ハニーも元に戻るッスよ」
「うむ。そうぢゃな。妾もドゥーウィンに同意ぢゃ」
「トンちゃん、フォレちゃん……」
リリィの為に頑張ってくれてたんだね。
ありがとーだよ。
でもね、でもなんだよ?
もっと他に何か無かったの?
私がパンツ見せたら記憶戻るって、流石に無いと思うの。
「精霊さん達、私の為にありがとうございます」
「ハニーとボク達の仲じゃないッスか。お礼なんていらないッスよ」
「そうぢゃぞリリー。妾もリリーが今のままぢゃとつまらぬしのう」
リリィとトンちゃんとフォレちゃんが微笑み合う。
セレネちゃんがそれを見ながら、顔を顰めて私に訊ねる。
「ジャスって、いつもどんなパンツ穿いてたの? 記憶が戻る程のパンツって凄くない?」
「記憶は戻らないと思うよ?」
と言いつつ、私はセレネちゃんに説明する。
「えーとね。私って、元々は天使の羽と輪がプリントされている白のパンツを穿いていたんだよ。でも、私も10歳になったし、他のパンツも穿こうって思って、今は穿いてないの」
「へ~」
「とか言ってるッスけど、ご主人は【魔性の幼女】の他にも、パンツの柄から生まれたあだ名の【純白の天使】とか、パンツを見られてつけられた【パンツの女神】とか、言われるのが嫌で穿くのをやめたんスよ」
トンちゃん、そう言う事は言わなくていいよ?
「あはは。それなら納得~。ジャスっぽいじゃん」
「ジャスミン様、これを機に、またあのパンツのシリーズを穿いてはいかがかのう?」
うーん……。
確かに、私はあの天使の羽と輪がプリントされてるパンツが好きだけど……。
私が悩んでいると、リリィが私に微笑む。
「ジャスミンちゃん。きっかけはどうであれ、私は純白の天使と言うあだ名はジャスミンちゃんにピッタリの素敵な名前だと思います。だって、ジャスミンちゃんは本当に天使様みたいに可愛らしいんですもの」
「リリィ……」
わ、わぁ。
何だかドキドキする。
リリィこそ天使みたいで可愛いよぅ。
リリィが私に向けた微笑みと言葉は、何だかとっても温かくて、私はドキドキで体温が上がるのを感じた。
記憶を無くしてからのリリィは正に天使、ううん、女神様の様に温かい。
でも何でだろう?
少し……。
心の奥で、私は少しだけぽっかりと穴が空いているように感じていた。
するとその時、私達のお話を聞いていたハッカさんが、私の肩を叩く。
私は振り向いてハッカさんに視線を向けると、ハッカさんが笑顔を私に向けた。
「もしかして、そのパンツってこれの事?」
ハッカさんが何処かからパンツを取り出し、広げて私に見せる。
「え?」
私はそれを見て驚いた。
そのパンツは、なんと私が愛用していたパンツ。
天使の羽と輪が小さくプリントされた真っ白なパンツだったからだ。
「これ、実は私がデザインしたんだ。私のお母さんがこのシリーズのパンツを作ってる会社の社長で、私が小さい頃にデザインしたものを採用してくれたのよ。まさか、ジャスミンちゃんが穿いてくれてたなんて思わなかったよ」
か、か、か――
「神様!」
「え?」
私はハッカさんに抱き付いて顔を上げる。
そして、ハッカさんと目を合わせて、尊敬の眼差しで見つめる。
「凄い! ハッカさんは私にとって神様も同然だよ! 大ファンです! サイン、サインください!」
「そ、そんな大袈裟だよ。照れるな~」
まさかこんな所で、あのパンツをデザインしたデザイナーさんに出会えるなんて思わなかったよ!
嬉しすぎてヤバいよー!
「ご主人興奮しすぎッス」
「良いではないか。ジャスミン様の下着の生みの親ぢゃ。余程嬉しいのぢゃろうて」
「って言うか、喜びすぎてキモくない?」
「私はとても可愛らしいと思いますよ」
本当に嬉しいなぁ。
なんだか、また穿きたくなってきちゃった!




