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038 幼女の腕輪はある意味優秀?

 私が突然現れたお姉さんとロンデさんから、アプロディーテーさんの事を聞き出そうと意気込むと、私の顔を見てお姉さんが顔を顰めた。

 そして、私の顔に向けた剣先を揺らして、私を睨む。


「不老不死ってのは本当だったんだね? 普通は剣を向けられたら、君みたいな子供は泣き出すかちびるかのどちらかだってのに」


「えーっと……」


「貴様、ジャスミン様への無礼、その身を持って償え!」


 私が何て返せば良いか迷っていると、フォレちゃんが猫耳フードから飛び出した。

 そして、私の前に立ち、お姉さんの剣に手をかざす。

 その瞬間に、お姉さんの持っていた剣から草木が生え出して、お姉さんは驚いて剣を離した。


「ハッカ! 一旦下がってください! 相手は魔王をも凌ぐと言われている魔性の幼女です!」


「わかったわロンデ!」


 お姉さん、ハッカさんはロンデさんの言葉に返事をして、私達から距離をとる。

 私は立ち上がって、お尻を掃いながらハッカさんを見つめて、掃い終わるとハッカさんの剣を拾った。


 うわ。

 結構重い。


「ジャス、あの女から強いアプロディーテーの加護の力を感じるわ。気をつけたほーがいーわよ」


「え? うん……」


 あ、そうだ!

 それなら、サガーチャちゃんから貰ったサーチリングを使おう!

 確か、魔法の属性と特殊能力を調べられるって言ってたもんね。

 よーし!


 私は腕にはめている腕輪、サーチリングに視線を移す。


 えっと、使い方はー……。


 腕輪についている青い色をした魔石をハッカさんに向けて、魔力をこめる。

 すると、魔石から青い光の線が伸びて、ハッカさんに当たった。

 その瞬間に、ブォンっと低い音をあげて、腕輪から青く半透明で縦長の小さな画面が浮かび上がる。


 わぁ、凄い。

 何だか、前世で見たアニメとかの異世界転生もので出て来る、ステータスを見る画面みたい。

 ちょっと楽しくなってきちゃった!

 って、あれ?


 楽しくなったのも束の間。

 映し出された画面に書かれた文字を見て、私は目を点にして固まった。

 そこに書かれた文字、それは……。


【BWH:73・55・84】


 スリーサイズだよこれ!

 って言うか、何所!?

 魔法の属性と特殊能力の情報は何所!?


 どうやら、サガーチャちゃんはリリィの要望に応える為にスリーサイズを見れる様に改良した結果、それしか見れなくしてしまった様だ。


 使えない!

 本当に使えないよ!


 私が嘆いていると、セレネちゃんが横からひょいっと顔を覗かせて呟く。


「びーだぶるえっち、73、55、84? なにこれ?」


 ハッカさんのスリーサイズです。


「な!?」


 ハッカさんがセレネちゃんの言葉を聞いて、自分の胸に腕を巻いて腰を捻らせて、顔を真っ赤にする。


 あ、可愛い。


「ハッカ? どうしたのですか?」


「あー、わかったー! これって、その女のスリーサイズっしょ? おっぱいちっさ~。がんばんなさい!」


 セレネちゃんがニィッとイタズラっぽく笑って、ハッカさんに向けて言うと、ハッカさんは更に顔を赤くさせてセレネちゃんを睨んだ。


「大きなお世話だ!」


 ハッカさん可愛い。


「全く困ったものです。ハッカ、ここには遊びに来たわけではないのですよ? 敵と仲良くお喋りしている場合ではありません。そんな事では、レオに愛想をつかされてしまいますよ」


「煩い! わかってるわよ!」


 あ、ハッカさんちょっと涙目だ。

 可愛いなぁ。

 って、え? レオ?

 確かレオって、あの自称勇者の男の人だよね?

 もしかして、ハッカさんはレオさんの事が好きなのかな?

 詳しく聞きたい!


 そう思った私は、勢いよく手を上げる。


「あの、お姉さんはレオさんの事が好きなんですか?」


「え!? 好きって言うか、その、えっと、つ、つきあってるけど」


「きゃー!」


 私はお姉さんに近づいて、目を輝かせてお姉さんの顔を見上げた。


「どっちが告白したの?」


「え? えっと、あ、アイツが――って、何で私が敵である君に、そんな事教えてあげなきゃいけないのよ!」


「うぅ……」


 私は目尻に涙を溜めて、ハッカさんを見る。

 だってそうでしょう?

 いつも私の周りには変態ばかりで、恋バナと言っても、基本女の子が女の子を好きになる話ばかりなのだ。

 そんな中、珍しく見つけた男女の恋バナ。

 私は前世がおっさんだったとは言え、今は10歳の女の子。

 そう。

 普通の恋バナをもっと聞きたいお年頃なのだ!


 でも……。


「そうだよね。ごめんねお姉さん」


 私は諦めて目尻に溜まった涙を拭って、ハッカさんに剣を返して、トボトボと歩いてリリィ達の許に戻る為に歩き出す。

 ハッカさんは眉根を下げながら私から剣を受け取って、私が歩き出すとロンデさんに視線を移した。


「ねえ? ロンデ、どうしよう? 私、この子達と戦える気がしない」


「何を言っているのですか!? 相手の見た目に騙されてはいけません! 子供とは言え、侮っていては痛い目を見るのはこちらですよ!?」


「でも、だって、既に私の良心が傷ついて大変なの! あんな綺麗で無垢な瞳の可愛い女の子、私には攻撃出来ないわ!」


 トボトボと歩くしょんぼり顔の私にセレネちゃんが近づいて、ニィッと笑って八重歯を見せる。


「いーじゃんいーじゃん。さっすがだわ~。あいつ等、仲間割れを始めたわよ」


「え?」


 私はセレネちゃんに言われて後ろへ振り向いて、そこでやっとハッカさんとロンデさんが言い合いになっている事に気がついた。


 あれ?

 どうしたんだろう?

 あ、もしかしてっ!


「実は、ロンデさんもハッカさんが好きで、修羅場になっちゃったとか!?」


「ジャスって本当にお花畑だよね~」


「ジャスミン様、あの者共は、ジャスミン様に敵対出来る出来ないでもめておるのぢゃ」


 え? 何で?


 私は首を傾げて、ハッカさんとロンデさんを見る。

 するとその時、ハッカさんがもの凄いスピードで私の所まで来て、私に後ろから抱き付いた。


「ほら見てよロンデ! こんなに可愛いのよ! 私、こんな可愛い妹がほしかったの!」


「貴様! ジャスミン様から離れよ!」


 フォレちゃんがハッカさんを睨みながら、ハッカさんの頬っぺたをペチペチ叩く。

 セレネちゃんは、ニィッと笑いながら「勝負あったわね~」と言って、眉根を下げて私達を見守るリリィの許まで歩いて行った。

 私はと言うと、突然後ろから抱き付かれて、困惑しながらロンデさんに視線を向けた。


「そんなもの、親に頼んでどうにかしてもらって下さい! 何度も言うようですが、その子供は魔性の幼女、女神アプロディーテー様に敵対する野蛮人ですよ!」


 ロンデさんが私を睨む。


「きっと話し合えばわかり合えるわ! だってこんなに可愛いんだもの!」


「可愛いは関係ないでしょう!」


 うん。

 可愛いは関係……可愛いは正義だよ!

 って、このお話の流れだと、私がそれ言っちゃうと自画自賛みたいだよね。

 うーん。

 でも、私も私の事可愛いと思ってるしいっか。

 前世ロリコンのおっさんだった私が言うんだもん。

 間違いないよね!


 などと私が自意識過剰な事を考えていると、空から精霊さんが舞い降りる。


「ご主人、こんな所で何してるんスか?」


「あれ? トンちゃん」

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