027 精霊は月夜に照らされ談笑する その1
※今回は精霊達が中心のお話です。
ハープの都へ向かう私達は、この日、野宿をする事になった。
見晴らしの良い草原でテントを張り、私とリリィの二人でお料理を作って楽しむ。
その姿はとても微笑ましく、私達の事を何も知らない人が見たら、身長差の影響で仲の良い姉妹の様に映る事間違いなしだ。
私とリリィが仲良く料理を作っている間に、精霊さん達は私達から少し離れた場所に集まっていた。
勿論、私には精霊さん達が何をお話しているのかは分からない。
だけど、精霊さん達のお友達代表として、私が精霊さん達のお話のナレーションをお送りします。
「トンペット、ラテール、プリュイ、ラーヴ、皆集まったな。これより精霊会議を開く」
「フォレ様、会議って何を話すんスか?」
「ふむ。そうぢゃな。まずは説明から始めるとするかのう」
フォレちゃんはそう答えると、魔法で地面から木の根っこを生やして、その上に座って足を組む……組めない。
なんて可愛いのでしょうか。
フォレちゃんは、頑張って足を組もうとするけど、ドリちゃんの時の姿と違って、残念ながら今は手のひらサイズ。
そんな長い足があるわけも無く、今のフォレちゃんは頭の大きな二頭身の短足さん。
フォレちゃんは諦めて、可愛らしくちょこんと座って話し始めました。
「妾達は、ジャスミン様の精霊として、日々精進せねばならぬ」
「そうなんだぞ」
「がお」
「しかし、妾達精霊は、皆が自由を愛する。これは、精霊として生まれてきた者ならば、仕方のない事ぢゃ」
「そうッスね。日々精進とかめんどくさいッス」
「ラテはジャスの頭の上で寝て、パンケーキを毎日食べられれば、他はどうでも良いです」
「この様に、ジャスミン様を主君としているのに、己の使命を全うしない不届き者もおるのぢゃ」
フォレちゃんはそう言うと、真剣な面持ちで立ち上がった。
そして、声を高らかに話す。
「妾はこの状況を改善する為に、精霊会議が必要だと判断したのぢゃ!」
パチパチパチ。と、プリュちゃんとラブちゃんが拍手する。
だけど、トンちゃんとラテちゃんは、とっても嫌そうな表情を浮かべて肩を落とした。
「まあ、そう肩を落とすでない。妾とて鬼では無い。会議と言っても、ただの情報交換ぢゃ。まあ、交代制を設けようとは思っておるがのう」
「どう言う事ッスか?」
フォレちゃんは再び木の根っこに座って微笑する。
その姿はとても可愛らしく、思わず頬っぺたをプニプニと突きたくなる可愛さだ。
「つまり、ぢゃ。セレネとか言う小娘を連れて来た時の様に、これから向かう都などでは、ジャスミン様と一緒に行動する者と別行動をする者で別れるのぢゃ」
「皆で主様と一緒にいちゃだめなのか?」
「それならそれでも良いが、効率を考えれば別々に行動した方が、ジャスミン様のサポートを上手く出来るであろう?」
「がお?」
「例えば、ハープの都での目的は自称勇者を捜し出す事ぢゃ。人捜しをすると言うのに、全員が一緒に行動をするのは効率が悪いではないか」
「言われてみるとそうッスね。ボク等はご主人と加護通信が出来るし、別行動をした方が効率が良いッス」
トンちゃんが納得して頷いて話すと、フォレちゃんが可愛らしく首を傾げてトンちゃんを見た。
「加護通信? なんぢゃそれは?」
「ジャスとラテ達は加護の力で、心の中で会話が出来るです」
「なん……ぢゃと……!?」
フォレちゃんがトンちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんに、ぞれぞれ順番に視線を向ける。
3人は無言で頷き、フォレちゃんは大きく口を上げて驚いて、目をパチクリとさせた可愛い。
説明しましょう!
私と精霊さん達は、自然の加護を使って、喋らずとも会話が出来るのだ!
これのおかげで、離れた場所でもお話が出来るので、買い物に出かけた時に買って来てほしい物があったらお願いが出来るのだ!
そんなわけで、フォレちゃんが本当に出来るかどうか確認したいと言い出して、実際に試してみる事になる。
『ご主人~』
『じゃ、ジャスミン様……』
私は2人に呼ばれて、リリィに通信で呼ばれた事を告げて、一旦料理を中断して返事を返す。
『なあに? 何かあったの?』
『ほ、本当ぢゃ! 通じたのぢゃ!』
『こんな感じッス』
『え? 何? 何の話?』
『こっちの話ッス。ちなみにご主人、後どれ位かかるッスか?』
『え? あぁ、うん。あともう少し……10分位かな?』
『了解ッス』
トンちゃんは返事をして、通信を切ってフォレちゃんに視線を向けた。
「こんな感じッス」
「ラテとしては、十分はもう少しにはならないと思うです」
ラテちゃんには10分は長いようだ。
物凄くがっかりした様子でラテちゃんが話して、プリュちゃんとラヴちゃんが首を傾げた。
「アタシはもう少しでも良いと思うんだぞ」
「がお」
「そ、其方等も聞いておったのか?」
フォレちゃんが、ラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんの会話を聞いて驚き訊ねると、3人は頷く。
「です」
「だぞ」
「がお」
「驚いたのう。これを使えば、いつでもジャスミン様と会話が出来るではないか」
「そうッスね。まあ、ボク等は滅多に使ってなかったッスけど。基本ご主人と一緒にいるッスからね」
「成程のう。しかし、これを使わぬのは勿体無い。やはり妾が考えた通りに、別行動をして、ジャスミン様を援護しようではないか」
「主様の為なら、アタシも頑張るんだぞ」
「ジャチュ、よろこぶ?」
「きっと大喜びでご褒美のパンケーキをいっぱい貰えるです」
「それなら、ボクも賛成ッス」
そう言うわけで、私の知らぬ間に、精霊さん達が私のサポートを影ながらしてくれる事になりました。
そして、ハープの都で誰が私の側にいるかのお話になったわけだけど、それは……うん。
せっかくなので、お楽しみにと言う事で、精霊さん達の会議のお届けを終わりにしたいと思います。
綺麗なお月様の明かりに照らされて、精霊さん達が話し合う。
それは、とても楽しそうで、仲良く笑い合う姿はとても尊い光景だ。
こうして今日も夜は更けていく。
この先、あんな恐ろしい出来事が待ち受けているとも知らずに……。




