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023 幼女も困る二人の仲

「あら? キャミソールにフレアスカート、それにマントかしら? ジャスミンにしては珍しい服装だけど、とても似合っていて可愛いわね」


「えへへ。ありがとー」


 私は、モーフ小母さんからお洋服を貰って、やっと痴女から普通の女の子へと元に戻る事が出来た。

 今はリリィが言ってくれた通りの格好をしていて、マントは猫耳フード付きで、とっても可愛いマントだ。

 それに、マントを着けて旅に出るのかと思うと、ちょっとした冒険者みたいでかっこいい。

 やっぱり前世では男だったからなのか、そう言うのも好きだったりする。

 そんなわけで、このかっこいい雰囲気が出る可愛い猫耳フード付きマントは、モーフ小母さんに見せて貰ってから、直ぐに私のお気に入りになった。


 私はモーフ小母さんにいっぱいお礼を言って別れてから、セレネちゃんが働いていた居酒屋さんへと足を運んだ。


 セレネちゃんは、人間の姿、私達と出会った時の15歳位の見た目の姿になる。

 何故人間の姿になったのかと言うと、元々セレネちゃんは、普段はこっちの姿で生活をしていたからだ。


「それじゃー待っててね~」


「うん」


 セレネちゃんが居酒屋の中に入って行き、私達は外で待つ。

 待っている間、私は人の姿になったセレネちゃんの瞳の色を見て、今更ながらに考える。


 そう言えば、セレネちゃんって人の姿だとオッドアイなんだよね。

 吸血鬼の姿だと、瞳の色がワインレッドになるのって、何でだろう?

 うーん……。


 私が首を傾げて考えていると、リリィが私の顔をじーっと見つめて口を開く。


「どうしたの?」


「え? うん」


 私は苦笑して、リリィと目を合わせた。


「セレネちゃんの瞳は不思議だなぁって思ったの」


「セレネの? どういう事?」


「うん。セレネちゃんって、いつもはワインレッドの瞳なのに、大きくなると瞳がワインレッドとスカイブルーのオッドアイになるでしょう? だから何でだろうって思ったの」


「成程……」


 リリィが私の疑問を聞くと、少し考える素振りを見せてから答える。


「もしかしたら、もう一つ姿を変えられるかもしれないわね」


「もう1つの姿?」


「ええ。それで、そのもう一つの姿の瞳がスカイブルーなのかもしれないわ」


 そっかぁ。

 確かに、そう考えた方が自然かも。

 私、セレネちゃんの本来の姿が小さい方って聞いてたから、そっちを基準に考えちゃってたんだ。


「でも、それだと変な感じッスね。まるで、さっきの大きくなった姿が本来の姿みたいッス。吸血女は、悪魔の姿が本来の姿だと言っていたッスよ?」


「まあ、そうなるわね」


 そっかぁ。

 じゃあ、やっぱり基準は小さい姿なのかなぁ?


 私は再び考え込む。

 すると、今度はフォレちゃんが私に視線を向けて話し出す。


「本来の姿は、あの小さき悪魔の姿で間違いない。人の姿に化けたのは、神の姿になるまでの過程ぢゃろうな」


「え?」


 神の姿になるまでの過程?


 私は勿論だけど、フォレちゃんの言葉に他の皆も驚いた。

 私達が驚く中、フォレちゃんは言葉を続ける。


「セレネは神から悪魔へと生まれ変わり、焦ったはずじゃ。そして、進化の過程で元の姿に戻る方法を考えたのじゃろう。その結果が、第一の変身で人間の姿になり、第二の変身で神の姿へと戻る。そして、それが瞳の色に影響を及ぼした。と、言った所ぢゃろうて」


 え、えっと……。

 セレネちゃんは神様に戻りたくて、その結果が瞳の色に出ちゃったって事?

 でも、悪魔から神様に戻る事なんて出来るのかな?

 って、その結果で、吸血鬼の姿から人間の姿になったわけで……。

 う、うーん……って、あれ?

 悪魔……?

 そう言えば、転生者の成れの果てが魔族って、トンちゃんから聞いた事ある。

 だけど、そのトンちゃんやフォレちゃんがセレネちゃんの事を魔族じゃなくて悪魔って言ってる?

 今にして思えば、精霊さん達は皆、セレネちゃんの事を悪魔って言っていた様な……。

 たまたまなのかな?

 それとも、魔族と悪魔が別物って事なのかな?

 あれ?

 魔族と悪魔……前に、何かそれっぽい事を聞いた事がある様な……無い様な……。

 って、何だか関係ない事まで気になってきちゃったよ。


 私が困惑していると、居酒屋の扉が開いて、セレネちゃんが戻って来た。

 そして、セレネちゃんはフォレちゃんに視線を向けた。


「焦ってないですー。これは元々神であった私が、転生後に身につけた加護の特徴ですー」


「セレネちゃん!」


「って言うかさ~。ある事ない事勝手に妄想して言わないでくれる? ちょー迷惑」


「ふん。其方の迷惑など、妾にはどうでも良い事よ」


「はあ? 大精霊だか何だか知んないけど、こっちは神よ! 頭が高いのよ!」


「神ぢゃと? 笑わせる。それは元であろう? 今は神ではないのだ。其方こそ大精霊である妾に対して、頭が高いとは思わんか?」


「はあ!? ちょームカつく!」


「一々煩い小娘ぢゃのう」


 あわわわわわ。


「もー。フォレちゃんもセレネちゃんも、二人とも落ち着いて?」


 私が2人の間に割って入ると、2人はお互い顔を背けた。

 すると、リリィがセレネちゃんの目の前に立ち、セレネちゃんに話しかける。


「それより、詳しく聞かせてもらいたいのだけど?」


「いーわよ別に。場所を変えましょ」


 そう答えると、セレネちゃんは何処かへ向かって歩き出した。


 とりあえず、2人が落ち着いてくれて良かったよぉ。

 2人とも本当に仲が悪くて困っちゃうなぁ。

 もっと、仲良くしてくれると良いのに……って、あっ!

 そう言えば、セレネちゃん、神の姿になるって部分は否定しなかったよね?

 と言うか、焦ったかどうかしか否定してないし、フォレちゃんの言った通りだったって事なのかな?

 うーん……。

 分からないけど、それも後少しで分かる様になるんだよね?

 もし神様の姿にもなれるなら、ちょっと見てみたいかも。

 何だか楽しみになってきちゃった。


「主様、どうしたんだぞ? 顔がニヤニヤしてるんだぞ?」


「がお?」


「どうせバカな事考えてるだけです。放っておくです」


「吸血女の神様の姿でも妄想してるんじゃないッスか?」


 うっ。

 ご名答だよぉ。

 流石はトンちゃん。

 私の事、よく分かってるね。

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