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155 幼女を奪い合うのはやめましょう

 ゼウスさんが微笑んで私を許すと、セレネちゃんがもの凄く軽蔑するような視線をゼウスさんに向けた。


「パパサイテー。マジでクズすぎ。ってかロリコンとか超引くんだけど」


 パパの事そんな風に言ったらダメって言いたいけど、うん。

 出来ない。

 本当にその通りだと私も思っちゃってるもん。


「ご主人、また変態を生んでしまったッスね」


 私が生んだんじゃなくて、元からだと思うよ?


「主様、お友達が増えて良かったんだぞ」


 え? そっか。

 どうしよう?

 なんかやだなぁ。

 ゼウスさんとお友達かぁ。


 困惑していると、今まで裁判官席で事の成り行きを見ていた神様の一人が席を立った。

 そして、ゼウスさんに向かって、もの凄く大きな怒鳴り声を上げる。


「アナタ! どう言う事よ!」


「ヘーラー!」


 ゼウスさんと、ヘーラーとゼウスさんに呼ばれた女神様が目を合わせる。


「黙って聞いていれば、よくもまあ私の目の前で、鼻の下を伸ばしてくれたわね!」


「ま、待て! ヘーラー! 儂はただ、最年少天才魔性のバニー幼女ディーラージャスミンちゃんの尻が――」


「最低! 行くわよ皆! こんな馬鹿な男につきあってられないわ!」


「ヘーラー! 待ってくれ!?」


 ヘーラーさんが、裁判官席に座っていた他の神様と連れて消えてしまった。

 その中にはもちろん丸焦げで倒れていたアプロディーテーさんも一緒で、この場に残った神様は、セレネちゃんとラークとゼウスさんの3人だけになってしまった。

 あっ、違った。

 4人だ。

 ポセイドーンは丸焦げで倒れたままだ。


 ゼウスさんは取り残されると、プルプルと震えだして、私を強く睨んできた。


「許さん! 許さんぞ! 最年少天才魔性のバニー幼女ディーラージャスミンちゃん!」


 ええぇぇ……。

 今の私のせい?

 っていうか、ゼウスさんに名前にちゃんって付けられるの、なんかヤダな。


「よくも儂に魅惑の尻を味わわせてくれたな! かくなる上は、貴様の尻を儂の物とする為に、儂の妻の一人にしてくれるわ!」


「ええぇっ!?」


 ゼウスさんの突然の意味不明な発言に、私は困惑して声をあげた。


 いやいやいや!

 なんでそうなったの!?

 意味が分からないよ!


「ちょっとアンタ、聞き捨てならないわね」


「何?」


 リリィとゼウスさんが睨み合う。


「ジャスミンと結婚するのは私よ!」


「はっはっはっはっ! 何を馬鹿な事を! 女子おなご同士で結婚だと!? 笑わせるでない!」


「何ですって!? アンタこそ、いい歳して子供に手え出してんじゃないわよ!」


 う、うわぁ……。

 あの、あのね?

 私、どっちとも結婚しません。

 私の意思を尊重して下さい。


「いや、お前等。どっちもどっちだろ」


「アンタは黙ってなさい!」

「貴様は黙っていろ!」


 リリィとゼウスさんの声が重なり、二人はラークを睨む。


 ラークが珍しくまともそうな事を言ったけど、一つ訂正してもらいたい。

 確かに女の子同士で結婚なんておかしいと思うかもしれないけれど、別に両思いであれば、私はそれでも良いと思うの。

 私はしないけど!


 ゼウスさんがラークに一瞬で近づく。


「アレース。そいつを貰うぞ」


「は? 何言って――」


 ラークがゼウスさんに聞き返す前に、ゼウスさんがラークが指にはめていた大精霊が入った指輪を奪う。

 そして、裁判が始まって以来、今まで姿を見せなかった水の大精霊ウンディーネがゼウスさんの背後に現れた。


「――おい! てっめえ、返せオラーッ!」


「黙れ!」


 ゼウスさんがラークを手で掃い、ラークは吹っ飛んで壁にぶつかって、その衝撃で気を失って横たわった。


「アレースには後でしっかり教育をするとして……」


 ゼウスさんがラークから奪った指に魔力を送り込む。

 すると、指輪がそれぞれ光り出して、サラマンダーとシルフとノームさんが姿を現した。


「大精霊共、その小娘を排除しろ」


「「「承知」」」


「ねえ? ゼウス様~。アタイには魔性の幼女をやらせてよ」


「よかろう。但し、あの娘は儂の妻になる者だ。あまり苛めてくれるなよ?」


「オッケ~。でも、死なないんだから、何しても大丈夫ってヤツだよね~」


 ウンディーネが楽しそうに笑い、私に視線を向けた。

 私はごくりと唾を飲みこんで、ウンディーネと目を合わせる。

 するとその時、リリィが空けた大きな壁の穴の方から、複数の声が聞こえてきた。


「遅くなってごめんなさい。被害者の確認とケアに時間がかかってしまったわ」


「にゃ~。思った以上に被害が酷くて大変だったにゃ」 


「全くぢゃな。リリーよ、其方が猫喫茶を吹き飛ばしたせいぢゃぞ」


「リリィ=アイビー何処だー!? 来てやったぞ!」


 皆!

 アマンダさんも来てくれてたんだ!

 でも、そっかぁ。

 よく分からないけど、猫喫茶の方は、被害が……って、え?

 猫喫茶を吹き飛ばした?


 私は皆の登場に喜んだけど、直ぐにリリィに視線を向けた。

 リリィは私の視線に気がついて、私から目を逸らす。


「リリィ? だ、大丈夫? 凄い汗かいてるよ?」


「ハニーが糞海猫神をぶっ飛ばした時に、猫喫茶を一緒に消し飛ばしたんスよ」


 …………え?


「えええぇぇぇっっ!? 消し飛ばしたの!?」


「ご、ごめんなさいジャスミン! わざとじゃ……いいえ。言い訳はしないわ。楽しみにしていたのにごめんなさい、ジャスミン」


 リリィが必死に謝り、私は頭の中が真っ白になる。

 何があったのかは知らないけれど、盛大にとんでもない事をやらかしてしまったのは事実である。


「リリさんは悪くないんだぞ!」


 う、うーん……。


 プリュちゃんがおめ目を凄くウルウルさせて、私を見上げる。

 正直な私の意見としては、本当に何があったのかは知らないけれど、別にリリィが悪いだなんて思ってない。

 きっと、それ程の事があったんだと思うし、私がとやかく思う必要も言う必要も無いと思う。

 だけど、これだけは思わせてほしい。


 せめて、1回くらいは猫ちゃん達に会いに行きたかったよぉ。


 そんなわけで、私が猫ちゃん達に会えなくなった悲しみに呆けていると、ゼウスがまた怒鳴りだした。


「猫喫茶を消し飛ばしただと!? なんと愚かな事を! あの地は、儂のオアシスだったのだ! 大精霊共行け! この愚かな罪人共を皆殺しにせよ!」


 ゼウスの号令で、大精霊達が動き出す。

 そして、ウンディーネが私の目の前まで接近して、槍を水で作りだして攻撃を仕掛けてきた。

 だけどその時、炎の盾を魔法で出して、ウンディーネの攻撃を防ぐ人物が私の目の前に飛び出して現れた。


「させないなのよ!」


「スミレちゃん!?」


「海神の加護をつけた炎使い!? 厄介なのが来たわね!」


 ウンディーネがスミレちゃんに攻撃を防がれて、スミレちゃんを睨みながら私達から距離をとる。

 ウンディーネの言った通り、スミレちゃんにはポセイドーンの加護がまだついている様で、スミレちゃんの髪の毛は水で濡れた様にしっとりとしていた。


「よくやったのぢゃスミレよ。其方もやる時はやるではないか」


「それ程でもないなのよ」


 フォレちゃんが私の許まで来てスミレちゃんを褒めると、スミレちゃんが嬉しそうに笑った。


「ようやく全員を目覚めさせる事が出来たよ」


 サガーチャちゃんの声がして振り向くと、サガーチャちゃんの周りには、今まで眠らされていたラテちゃん達が起き上がっている姿があった。

 皆が目を覚まして起き上がると、いよいよゼウスも血管がはち切れそうな位に顔を真っ赤にさせて、リリィと睨み合った。


「許さん! 許さんぞ! どちらが最年少天才魔性のバニー幼女ディーラージャスミンちゃんと結婚するに相応しいか、決着をつけてくれるわ!」


「望む所よ! ジャスミンは絶対に渡さないわ!」


「良かろう。ならば、勝った方が最年少天才魔性のバニー幼女ディーラージャスミンちゃんをめとる。異存はないな?」


「良いわ! 吠え面かかせてあげるわ!」


「異存しかないよ! 勝った方とも負けた方とも結婚なんてしないよ!」


 リリィとゼウスさんが真剣な面持ちで睨み合い、私は必死に訴える。

 と言うか、リリィもゼウスさんも私の言う事なんて聞いてくれない。

 本当に本人である私の意志主張を尊重して頂きたい!


「ぷぷぷ。ご主人、良かったッスね。ぷぷぷ。神様と結婚のチャンス到来ッスよ? ぷぷぷ」


 そんなチャンスいりません。


「主様はリリさんと結婚するんだぞ」


 プリュちゃんまで何言ってるの?

 しないよ?


「其方等、何を世迷い事を言うておる。ジャスミン様が困っておるぢゃろう? ジャスミン様を娶るのは妾ぢゃ。よって、妾もあそこに交ざって来るのぢゃ」


 フォレちゃん!?

 あぁ、行っちゃったよ。

 って言うか、フォレちゃんとも結婚するつもりは無いからね?


「幼女先輩、どう言う状況なのです?」


「え? うーん、そうだなぁ……私が聞きたい」


 意味不明なこの状況を見てこめかみに汗を流すスミレちゃんに、私はニッコリと微笑んで答えるのだった……。

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