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154 幼女のお尻を熱弁してはいけません

 セレネちゃんのまさかの死因に驚く私とは違って、セレネちゃん本人がゼウスさんのせいだと怒って睨み、ゼウスさんもその通りだと認めてしまった。

 挙句の果てに、宙に浮かんでいたゼウスさんは私達の目の前に降り立って頭を下げてしまった。


 待って?

 ちょっと待って?

 え? あれ?

 おかしいなぁ。

 私がおかしいのかな?

 お話を聞く限りだと、昔我が儘放題で皆に酷い事してたセレネちゃんをゼウスさんが止めに入って、逆ギレしたセレネちゃんが自分が放った矢を受けて死んだんだよね?

 これって、ゼウスさん悪くないよね?

 むしろ悪いのは、こう言ったらなんだけどセレネちゃんだと思うのだけど?

 で、でも、当事者の2人は納得してるみたいだし、う、うーん……。


 私が困惑していると、ゼウスさんは頭をあげて、真剣な面持ちで話し出す。


「だが、聞いてくれアルテミス。儂はこうも考えた。本当にあの不幸な出来事は、儂だけの責任なのかと」


 あ、良かったぁ。

 うんうん。

 避けたのは悪かったかもだけど、悪い事をしていて罰が当たったんだよって、セレネちゃんに教えてあげるんだよね?

 だって、それでセレネちゃんは何も悪くないってなっちゃうと、我が儘なままになっちゃうもんね。

 ちゃんと悪い事は悪いんだよって教えないとだもん。


「はー? 何言ってんの? 意味わかんないし。じゃー他に誰の責任って言ーたいのよ!?」


 セレネちゃんは更に怒ってゼウスさんを睨み、ゼウスさんは真剣な面持ちのままセレネちゃんを見つめる。

 私も若干の緊張を抱えて、ごくりと唾を飲みこんで、セレネちゃんとゼウスさんの行く末を見守る。


「この下界にカラスさえいなければ、あんな事件は起きなかったのだと」


 あっれー!?

 違ったーっ!


「そして、思ったのだ。海猫達が見せる映像が若い女子おなごのおパンツだけでないこの世界、そして、カラスが存在するこの世界は滅ぶべきだと! 全ての元凶は海猫とカラスだ!」


 いやいやいや。

 どうしてそうなったの!?

 って言うか、そもそも女の子のパンツは過去とは全く関係ないよね!?

 すっごいこじつけ感がハンパないよ!

 海猫ちゃん達もいい迷惑だよ!

 しかも、カラスさんも言う程そこまで悪くないもん!

 そもそも矢を放ったセレネちゃんが自業自得なだけだよ!


「海猫とカラスのせーにするとかパパサイテー。マジありえなくない?」


 セレネちゃんが私に視線を向けて、私は苦笑する。


「あ、あはは……う、うん。そうだね」


 私のおバカ!

 どっちもどっちだよって言いたいのに言えない!

 根性なしすぎるよ!


「似た者親子ッスね~。逆恨みのオンパレードッス」


「アタシは頭がこんがらがってきたんだぞ」


 トンちゃんが呆れて、プリュちゃんが目を回す。

 リリィとサガーチャちゃんはと言うと、よっぽどバカらしいと思ったのだろう。

 二人共眠らせれているラテちゃんやスミレちゃん達の様子を見ていた。


「本当にくだらねー。あんなのと一緒に戦争をしようと考えていた自分が恥ずかしいぜ」


 あのラークにここまで言われるなんて、よっぽどだよね。


 ゼウスさんがラークを睨む。


「アレース、儂は元々お前の遊びに……戦争ごっこにつきあうつもりは無かった」


「あ? んだと?」


 ラークとゼウスさんが睨み合う。


「だが、女子おなごのおパンツ意外をを映してしまう海猫、そして、カラスを滅ぼす為なら戦争も止む無しと考えたのだぞ」


 ど、どうしよう?

 もの凄く真剣な顔で、もの凄くおバカな事言ってるよ?

 と言うかだよ!


 私は我慢が出来なくなって、一つだけゼウスさんに向かって声をあげる。


「ゼウスさん! この世界にはカラスさんはいないよ!」


 私が声をあげると、この場に沈黙が訪れた。

 そして、ゼウスさんは背後で静聴していた他の神様達に視線を移して、他の神様達は静かに頷く。

 ゼウスさんは驚きの表情を見せると、今度は私の顔を見た。

 私とゼウスさんの目はかち合い、ゼウスさんは咳払いを一つした。


「そうか、既に滅んでいたか」


 駄目だこの神様。

 早く何とかしないと。

 って、いやいやいや!


「滅んでないよ! 最初からいないよ!」


「黙れ小娘! 神をも誘惑し己が意のままに操るその愚行! 貴様は生かしてはならぬ存在だ!」


 め、滅茶苦茶だよ!

 もう本当に何なのこの神様ー!

 人の話を全く聞かないどころか逆ギレしちゃったよ!


「ご主人、あの老害神ヤバいッスね」


 こらトンちゃん。

 老害とか失礼な事言っちゃダメだよ!


「主様、気をつけるんだぞ!」


 え!?


 プリュちゃんが指をさして、その方向に視線を向けると、ゼウスさんが私に向かって杖を構えて飛んで来て攻撃しようとしていた。

 私は急いで魔法【素粒光移テレポート】を使って、ゼウスさんの攻撃を傍聴席ぼうちょうせきに移動して避けた。

 だけどこの時、悲劇が起きてしまう。


「何が愚行よ!」


 リリィがゼウスさんに一瞬で接近して、強烈な回し蹴りで蹴り飛ばした。


「ぐぉぉっ……!」


 ゼウスさんは蹴り飛ばされたはずみで床を転がって、傍聴席に突っ込む。

 そう。

 丁度私が移動した先の傍聴席に、ゼウスさんは転がって来たのだ。


「えっ!? ――きゃあっ!」


 私は驚いて悲鳴を上げながら、その場でこけてしまって、転がって来たゼウスさんの顔に尻餅をつく。


「ジャスミン!?」


「あわわわわ! ご、ごめんね!」


 リリィが顔を青ざめさせている中、私は慌てて立ち上がってゼウスさんの顔を見る。

 すると、ゼウスさんは何故か驚きの表情を浮かべていた。


 ど、どうしたんだろう?

 あっ!

 もしかして、リリィが強すぎて驚いちゃったのかも。

 うんうん。

 わかるなぁ。

 リリィってば意味わかんないくらい強いんだもん。


「このアングルは!」


 え?

 アングル?

 今、ゼウスさんアングルって言った?


 ゼウスさんは表情を変えず立ち上がり、私の股下……股間をじいっと見つめる。

 私は背筋に寒気を感じて、そっと両手で股間を隠した。


 何!? 何なの!?

 何で私の股間見てるの!?


「今のローアングル視点の光景は間違いない! 猫喫茶で極秘に扱っている秘宝の一つ【バニーちゃんのムフフ映像集】で見た股間だ! まさか、あの映像の中で、一番最高な女子おなごが最年少天才魔性のバニー幼女ディーラーだったとはな」


 え? 何それ?


「気付いてまったんやな」


 不意に声がして振り向くと、丸焦げのポセイドーンが立ち上がっていた。

 ポセイドーンの頭からは未だに煙が上がっていて、チャーミングポイントのカウボーイハットも真っ黒な燃えカスになっている。


「せやでゼウス。あのワテの秘宝の【バニーちゃんのムフフ映像集】に映っとったカワイ子ちゃん達の中でも、特に群を抜いとる格別なローアングル映像のカワイ子ちゃんが、この最年少天才魔性のバニー幼女ディーラージャスミンたんや!」


 えええぇぇぇっ!?

 何それ私聞いてないよ!?

 って言うか、盗撮!

 それ絶対盗撮だよね!?

 犯罪だよ!

 神様がそんな事したらダメだよ!


「アンタは黙ってなさい!」


 リリィがポセイドーンの背後に一瞬で移動して、かかと落としを浴びせた。


「ぎゃああっ!」


 ポセイドーンが床に顔をめり込ませて気絶する。

 リリィにやり過ぎだと言おうとも思ったのだけど、何となくリリィがいつもと違う雰囲気でポセイドーンに怒っている感じがして、よっぽどの事が猫喫茶であったのかもと考えてやめておいた。


 それに、それどころでもなくなってしまったと言うのもある。

 ゼウスさんが私に向けていた怒りを何処へやってしまったのかと言うくらいに、もの凄く清々しい微笑みを私に向けていたのだ。

 私は何が起きたのかと驚いて、ごくりと唾を飲みこんで一歩後退る。

 すると、ゼウスさんは私に微笑みながら話し出す。


「先程の尻の感触、深く感服した。まだ育ちきらぬ幼さの残る柔らかさに、もっちりとしていて、それでいてしっとりつるやかな肌触り。紛うことなき至高の感触であった」


 やめて?

 私のお尻の感触に感服しなくて良いから、感想とか言わないで?


「今まで儂が顔を埋めてきた尻の中で、まさに一級品! いや、頂点に立つ尻だ!」


 とんでもない変態さんだよ!

 今まで顔を埋めてきたって、とんだ変態神様だよ!


「儂は決めたぞ。今までの貴様の罪を、全て水に流そうではないか!」


「は、はあ……」


 えぇと……うん。

 あのね?

 とりあえずそれはありがとうだけど、その……ね?

 私の股間をチラチラ見ながら言うのは、やめて貰えるかな?

 こんな事になるんだったら、オぺ子ちゃんがお着替えしてたタイミングで、私も一緒にお着替えすれば良かったよぅ……。

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