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134 百合は争わずに片付けたい

 秘密基地に戻って来ると、ドゥーウィンとラヴとハッカとレオとノームが私達を出迎えた。

 こっちでは特に問題なども無く、変わった事と言えばハッカとレオがカジノに遊びに行きたいと言いだして、駄目だと言い聞かすのに大変だったという事くらいらしい。


 ジャスミンの姿は無く、私達は先にレオに港で襲われた事を詳しく聞き出した。

 しかし、レオから聞き出してわかった事と言えば、必死に逃げていたからわからないと言う事だけだった。

 つまりこの自称勇者は、恐怖のあまり冷静な判断が出来ず、その癖皆が攫われたと適当な事を言ったわけだ。

 幼い今だからこそ、今度からは想像で話すなと注意するだけに止めたけれど、これが本来の姿であれば間違いなく私は蹴り飛ばしていた。


 その後は、今日の事を踏まえた作戦会議を開始する事になった。

 問題はどうやってプリュに会うかだが、正直何も思いつかない。

 そもそもとして、気持ちを切り替えたつもりでも、やはりあの事が頭の中から離れなかった。

 次第に私は気持ちがマイナス方向へと向かっていき、気がつけばため息を吐き出していた。


「どうしたのぢゃ?」


「ああ、ごめんなさいね。ちょっと小母様の事を思いだしてしまって……」


「うーむ。確かに少し失敗したのう。妾でも流石に手の出しようが無いしのう。これ以上は母上様に迷惑はかけられぬし困ったものぢゃ」


「ええ……」


 私とフォレがお互いため息を吐き出すと、マモンが楽しそうに笑う。


「馬鹿だな! 気にしすぎだ! それより明日は強行突破だ!」


「は?」


「いつものリリィ=アイビーなら強行突破だしな! 今回もそれが一番だわ!」


「アンタねえ……」


 眉間にしわを寄せてマモンを睨み、蹴り飛ばしてやろうかと思った時、ナオがマモンに賛同する。


「にゃー。案外その方が良いかもしれないにゃ」


「は? ナオ? アンタまで何言ってるの?」


「そうぢゃぞ。其方はもう少し利口だと思っておったぞ」


「別にニャーはお利口さんじゃないにゃ。それより、マモマモの言う通り強行突破の方が結果的に早く解決できるにゃ」


「何でそう思ったの?」


「ニャーは、お店に入ったら結局争い事になると考えてるにゃ。最初から強行突破で戦おうが、後からお店の中で争いになって戦おうが一緒だにゃ。予約してもしなくてもどうせ戦うなら、待つだけ無駄にゃ」


「しかしのう。其方の言う事も解かるが、何もこちらから攻撃的にならんでも良いではないか」


「そうよ。お店に入る方法は今はまだ思いつかないけれど、お店に入ってしまえば簡単にプリュを連れ出せるかもしれないし、出来るだけ小母様や小父様にご迷惑をかけさせたくないわ」


「む? 小父様? リリー、どう言うことぢゃ?」


「そう言えば、話してなかったわね……」


 私はジャスミン捜索の際にジャスミンのお父様に会った事や、サラマンダーを蹴り飛ばした事を説明した。

 すると、私達の話を黙って聞いていたノームが口を開く。


「サラマンダーがそのような事を……。ならば、儂もその猫喫茶と言う所に向かおう。奴とは儂が話をつける」


「待って下さいッス。ノーム様がいなくなったら、誰がこの二人の面倒をみるッスか?」


 ノームの提案に、ドゥーウィンが顔を真っ青にさせてハッカとレオを前に出す。

 ハッカとレオの二人は、ジャスミンが作り置きしてくれていたパンケーキを食べていて、今は大人しくしていた。


「がお。わたち頑張る」


 ラヴが珍しく顔を青白くさせながら力弱く返事をしたのを見て、流石に私も他の皆も、よっぽど大変だったのだと察して同情した。

 どうやら、この幼くなったハッカとレオの二人は、ノームが面倒を見てくれているからこそどうにかなっていた様だ。

 何度もここを脱走ようとしてはノームに見つかりを繰り返して、本当に大変だった事を聞かされた。

 自由すぎてドゥーウィンとラヴの手に負えないのは間違いなかった。


「むしろ、ボクがハニーについて行きたいくらいッスよ」


 げっそりした顔でドゥーウィンが呟くと、マモンがドヤ顔でそれに答える。


「私のパーティに加えてやるぞ!」


「え? マジッスか?」


「もちろんだ! 強行突破するから、仲間は多い方が良いからな!」


「やったッスー!」


「ちょっと待ちなさ――」


 と、二人の勝手な判断を止めようとした時、秘密基地の中に誰かが入って来る足音が聞こえた。

 そして、その足音の主が誰のものなのか、私は直ぐに解って笑顔を向ける。


「おかえりなさい! ジャスミン!」


 帰って来たジャスミンを笑顔で迎えると、ジャスミンは少し疲れた表情ではあったけれど、私に向けて微笑んでくれた。


「ただいま、リリィ」


 まるで新婚夫婦みたいなやり取りをしてしまったわ!


 内心興奮しながらジャスミンが手に持っていた荷物を受け取って、中に招き入れる。

 その時に気がついたのだけど、いつも通りジャスミンの頭の上に乗るラテが、何故だか不機嫌そうにしていた。


 猫喫茶にどうやって入店するかや、サラマンダーの件は後回しにして、私達はジャスミンと今日あった事を報告し合った。

 もちろん、私がカジノでジャスミンのバニーガール姿を見て気絶した事は内緒にして。

 それだけでなく、ジャスミンに心配をかけさせたくなかった私は先に私達の事情を知る全員を言い聞かせて、ジャスミンには小母様や小父様の事などは報告しなかった。

 本当は言っておいた方が良い事は解っているけれど、小母様と小父様の事で下手に心配かけさせてしまうかもしれないと思ったからだ。

 後からして思えば気にする様な事でも無かったかもしれないけれど、今の私は猫喫茶の事が尾を引いていて、それ程弱気になっていた。


 尚、ジャスミンとラテと一緒に、スミレとセレネも一緒に帰って来たけど、まあどうでも良いでしょ。

 弱気になっているのはジャスミンに対してだけだし、他は特に問題無い。


 その後はジャスミン達と少しだけ話し合い、明日に備えて今日は早めに眠る事になった。


いつもご覧頂きありがとうございます。

今年もよろしくお願いします。

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