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113 幼女を賭け事に巻き込んではいけません

 神経衰弱しんけいすいじゃく

 それは、小さい子供から大きな大人まで、誰もが遊べるトランプを使った簡単なカードゲームだ。

 下に無造作にばらかれたトランプは全て裏返って数字が見えない状態になっていて、プレイヤーが順番に2枚ずつめくっていく。

 捲って出た表の数字が2枚とも同じであれば、それをゲットできて、更に2枚捲る事ができる様になる。

 そして、最後に一番多くの枚数のトランプを持っていた者が勝者となるのだ!


 と言うわけで、私とラテちゃんがセレネちゃんと蛇のお姉さんの許まで辿り着いて見た勝負は神経衰弱でした。

 しかも、何故かクラップス用のテーブルの上で……。


 冷や汗をかきながら2人の様子を見ていると、蛇のお姉さんが私に気がついて、パアッと満面の笑みを浮かべた。


「ジャスミンちゃんニョロ」


「お姉さん、久しぶり」


「ジャスか。今この女と真剣勝負の真最中なんだから、絶対に邪魔しないでね~」


 セレネちゃんはチラッとだけ私に視線を向けて、直ぐにばら撒かれたトランプに視線を戻し、真剣な面持ちで睨みつける。

 邪魔したら悪いと思い、私はセレネちゃんではなく、蛇のお姉さんに質問する事にした。


「何してるの?」


「アルテミス様とクラップスで勝負をしていたんだけど、全部ミーが勝ってて、それで神経衰弱で勝負だって言われたニョロ」


「それで神経衰弱をやってたですか」


 あはは。

 って言うか、セレネちゃん遊び出しちゃってたんだね。

 それにしても……。


 と、私は改めて蛇のお姉さんに視線を向けた。

 蛇のお姉さんは、オフィクレイドで会った時とは違っていて、バニーガールの姿でとても可愛い。

 それに、私がプレゼントしたお花のシュシュを使ってくれていた。

 それが何だか嬉しくて、私はつい微笑んでしまう。


 嬉しいなぁと感じて微笑むと、蛇のお姉さんが私の顔を見て頬を染めて、拡声石かくせいせきで音量を上げても聞き取り辛い様な声量で話し出す。


「ジャスミンちゃん、……ミーの事は、お姉さんじゃなくて、その……ニョロ~。その、ヘビ美って呼んでほしいニョロ」


「ヘビ美ちゃん? うんわかったよ。ヘビ美ちゃん」


「ニョロ~」


 私とヘビ美ちゃんが微笑み合っていると、ラテちゃんがいつの間にか私の頭の上からテーブルに移っていてセレネちゃんに話しかける。


「こんなとこで遊んでいないで、さっさと上の階に行くです」


「はあ? 負けっぱなしで逃げろってわけ?」


「です。時間の無駄です」


「はいそーですかって、言う事聞ーたげるわけにはいかないっしょ」


 セレネちゃんがヘビ美ちゃんに指をさし、そして、高らかに声を上げる。


「私は神として、この女から金貨五百枚を取り返さなきゃいけないの!」


 ええええぇぇぇっっっ!?

 負けすぎだよセレネちゃん!

 って言うか、どんだけ賭け事にお金つぎ込んでるの!?

 金貨500枚ってヤバすぎだよ!


「バカです」


 ラテちゃんが呆れて呟くも、セレネちゃんの耳には届かない。

 セレネちゃんはトランプと睨めっこをして数秒後、勢いよく2枚のトランプを捲り上げた。

 そして……。


「ハートのエースとクローバーのキング!? あー! もーおーっ!」


 駄目だったようです。

 って言うか、もう諦めた方が良いと思う。

 だってセレネちゃんの手元を見ると、まだ合計で2枚しかトランプが無いのだ。

 それに比べてヘビ美ちゃんはと言うと、既に20枚位は持っている。

 これは最早負け試合だ。


「ミーの番ニョロ」


 ヘビ美ちゃんがそう言って、トランプを捲りだそうとした時、突然周囲にいた観客の一人がボソリと声を上げる。


「あれ? こんな所に最年少天才魔性の幼女ディーラーのジャスミンたん?」


 その言葉は、瞬く間に観客達の視線を私に集めさせて、私は注目を一気に浴びてしまった。

 そして、セレネちゃんが私の顔を見て「あっ」と声を洩らす。


 声を洩らした後のセレネちゃんの行動は早かった。

 セレネちゃんは私に近づき、私の腕を掴み取る。

 感度上昇の効果が牙を剥き、忽ち私の腕を優しく包んで柔らかくて暖かい感触が支配する。

 私は必死に変な声が出るのを抑えながら、セレネちゃんにされるがままに、そのまま腕を上げられた。


「プレイヤー交代! ジャスに変わるわー!」


「――ふぇ!?」


 驚き、そして感度上昇の効果を必死に堪える私の腕を引っ張って、セレネちゃんはテーブルの前に私を連れて行く。

 と言うか、引っ張られる度に感度上昇の効果が出るので本当に勘弁してほしい。

 そして、何故か観客達が歓声を上げ始めた。


「うおおおおっ! まさか最年少天才魔性のバニー幼女ディーラーの実力が見られるなんて思わなかったぜ!」


「おいおい浮かれてくれるなよ兄弟! 最年少天才魔性のバニー幼女ディーラーって言っても、所詮は2階以下の下級ディーラー。3階の中級ディーラーのヘビ美には敵わねえさ」


「何言ってんだ! こいつぁ見ものだぜ! 既に勝敗が決まっているこの圧倒的な差をきり抜けられりゃ、最年少天才魔性のバニー幼女ディーラーの実力は本物って事になる!」


「靴下! 最年少天才魔性の幼女ディーラージャスミンたん! 脱ぎたての靴下をくれー!」


 ひいっ!

 また変な人がいる!

 って、いやいやいや。

 そんな事より何この盛り上がり!

 こんなの断れる雰囲気じゃないよ!


 どうやら、私はこの神経衰弱と言う戦いに、身を投じなければいけなくなってしまった様だ。

 ごくりと唾を飲みこんで、緊張の赴くまま、私はヘビ美ちゃんと視線を合わせる。


 あれ?


 気のせいだろうか?

 視線を合わせた時に見せたヘビ美ちゃんの顔は、と言うか、頬と耳がとても真っ赤になっているように感じました。




【ジャスミンが教える幼不死マメ知識】

 今回は、この世界のお金について教えちゃおう。

 この世界では、お金は世界統一で硬貨が使われているの。

 硬貨の種類は【銅貨】【銀貨】【金貨】【光金石こうきんせき】【光鐘石こうしょうせき】の全部で5種類。

 光金石と光鐘石は最後に石の文字があるけど、石じゃなくてただの名称なんだよ。

 硬貨の価値は銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で光金石1枚、光金石100枚で光鐘石1枚ってなってるの。

 この世界の銅貨1枚は、円で表すと100円位だよ。

 それでセレネちゃんが賭け事で溶かしたのが金貨500枚。

 日本円にすると……う、うーん。

 セレネちゃん色んな意味で凄いよね……。

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