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107 幼女も労働の喜びを知る

 驚くべき速さでバニーガールにされてしまった私を見て、スミレちゃんがニマニマと笑う。


「幼女先輩、とってもよく似合ってるなのですよ」


「……ありがとー」


 もう何も言う気力がわかなくて、力無くお礼を言った。

 モブ顔のお姉さんは満足げに、うんうんとが首を縦に降ってオぺ子ちゃんに話しかける。


「そろそろ休憩終わりだよね? 私は休憩入ったばっかだから、リリオペが代わりにジャスミンちゃんを一緒に連れて行ってくれる?」


「はい」


「あ、あのぉ……」


 断らなくちゃと思ったその時、バニーガールとなったセレネちゃんに腕を掴まれる。


「セレネちゃん?」


 首を傾げてセレネちゃんに視線を向けると、セレネちゃんがひそひそと小声で話し出す。


「着替えながらオぺ子に聞ーたんだけど、アレースはこの建物の最上階の6階にいて、特別な従業員以外は会えないっぽい」


「え? じゃあ……」


「このまま従業員に成りすましたほーが、色々便利っしょ」


 そっか。

 そう言う事なら。


「オぺ子ちゃん、私もお仕事頑張るよ!」


 そんなわけで、私は拡声石を受け取って付け襟にくっつけると、オぺ子ちゃんと一緒にカジノホールに向かった。

 スミレちゃんとセレネちゃんはモブ顔のお姉さんから説明を受けるらしく、私だけが先にオぺ子ちゃんと……私はそこで気がついた。


 あれ?

 ラテちゃんがいない?


 頭の上にも肩の上にもいない。

 キョロキョロと周囲を見ても姿が見当たらない。

 それならと、加護の力で通信をする事にした。


『ラテちゃん、ラテちゃん』


『なんです?』


『良かったぁ。繋がったよぉ』


 とりあえず連絡が取れた事に安堵して、私は言葉を続ける。


『ラテちゃん、今何処にいるの?』


『休憩室に置き去りになったジャスのポーチの中です』


『あ、そっかぁ。さっき脱がされた時に一緒に取られちゃったんだ』


『です。ここには関係者が出入するみたいですし、ラテはここで誰か来ないか見張ってるです。もしラークとかが来たら教えるです』


『なるほどだよ。ありがとー、ラテちゃん』


『です』


 流石はラテちゃんだなぁ。

 確かに休憩室なら、関係者の出入りがあるから見張るなら凄く良い場所かもだよね。


「ジャスミン?」


「ふぁうっ」


 うぅ……。

 変な声出ちゃったよ。


 不意にオぺ子ちゃんに話しかけられて、驚いて変な声を出してしまって顔から湯気が出そうな位に恥ずかしくなる。

 すると、オぺ子ちゃんが苦笑しながらルーレットテーブルに手差しした。


「あれなんだけど、ジャスミンはルーレットって知ってる」


「あ~、うん。えーと、ルーレット盤だっけ? 丸くて回転する台があって、その台の外側にあるくぼみに数字が書かれていて、玉を転がしてどのくぼみに入るかを数字で予想して当てるゲームだよね?」


「流石だね。本当に知ってるんだ? ジャスミンにはそこでまずはディーラーをしてほしいんだ」


 ……え?

 いきなりディーラー!?


「それじゃよろしく。って、ああ、そうそう。さっきの話だけどさ」


「え? あ、え?」


 どの話?


 私が若干頭を混乱させていると、オぺ子ちゃんが柔らかな笑みを浮かべて言葉を続ける。


「ラークが神様だなんてまだ信じられないけど、でもラークが悪い事を考えているならそれを止めたい。ラークの事、教えてくれてありがとう」


「う、うん」


「それじゃあ、僕も持ち場に戻らなきゃだから後はよろしくね」


「え!?」


 よろしくと言われましても……。


 私は呆然と立ち尽くし、ルーレットテーブルに視線を向けた。

 すると、ルーレットテーブルの側で既にお仕事をしている見知らぬバニーガールのお姉さんが私に気がついて、笑顔で私に手を振った。

 私も苦笑しながら手を振ってから、覚悟を決めてルーレットテーブルに近づいた。

 それからお姉さんに簡単な説明を受けて、早くも本番開始となる。

 って言うか、お姉さんは私に説明し終えると、休憩に行って来ると言っていなくなってしまった。


 集まる視線。

 強面揃いの小父さん達。

 正直に言うと凄く怖い。


「へっへっへっ。随分と可愛らしいディーラーだな」


「はっはー! こいつは良い! 素人相手に悪いが、勝たせてもらおう!」


「ぐへへへへへ。お嬢たん可愛いね~。今夜おいたんとご飯食べに行かない?」


 ひいっ。

 なんか違う意味で怖い人の声が混じってるよ!?


「え、えーと……よろしくお願いします」


 慣れない敬語を話しながら、私はゲームを開始する。

 ルーレットテーブルに掛け金代わりのチップを並べて貰って、ルーレット盤のルーレットを回して玉を転がす。

 そして……。


「へへっ。負けたぜ! 可愛らしいなんてもんじゃねえ。アンタは最強さ!」


 えええぇぇっっ!?


「はっはー! こいつぁ驚いた! 凄腕の最年少天才魔性のバニー幼女ディーラー様の誕生だぜ!」


 えええぇぇっっっ!?


「パンツを! 最年少天才魔性の幼女ディーラージャスミンたんの脱ぎたてのパンツを下さい!」


 ひぃぃぃっ!


「やるじゃないジャスミンちゃん。まさか、これ程までとは思わなかったわ。ルーレットは運だけに左右されると思われがちだけど、実際はそうじゃない。本来はディーラーとプレイヤーの駆け引きがある。流石は私が認めた魔性の幼女ね! そこをしっかりわかっているわ!」


 モブ顔のお姉さん!?

 って、いやいやいや。

 そんなの私してないよ?


 私は困惑していた。


 ルーレットのディーラーを開始してから早くも1時間。

 私の回すルーレットは、強面の小父さん達を、それはもうこれでもかと言う程に翻弄させていったのだ。

 そして、休憩が終わったモブ顔のお姉さんが来る頃には、私は天才と称えられいた。

 と言うか、私はただルーレットを回して玉を転がしていただけなのに意味が分からない。


「よし! ジャスミンちゃん! その才能、他でも試そう! ポーカー行くわよ!」


「え?」


 と、驚くのも束の間にして1時間後。


「うおおおおおおっ! 勝てねええええ! 何なんだこの最年少天才魔性のバニー幼女ディーラーはあああ!」


「凄いわジャスミンちゃん! 次はブラックジャックよ!」


 えええええぇぇぇっっ!?


 そしてまた1時間後。


「ぐぎゃあああっっ! 破産だ! 全財産持ってかれちまったよ! ちくしょおお! おのれ最年少天才魔性のバニー幼女ディーラー!」


「凄い凄い! ジャスミンちゃんは天才ね!」


「えへへ~。そんな事ないですよぉ」


 ちやほやされ続けて、いつの間にか調子に乗ってしまっていた私は、モブ顔のお姉さんに褒められて照れ笑いする。


「でもそうだな~。ジャスミンちゃん容赦無さ過ぎだから、もう少しプレイヤーにスリルを味わって貰える様に手加減してあげた方がいいわね」


「うん、わかったよ!」


 手加減の仕方どころか、未だにプレイヤーとの駆け引きがよく分かってないけどね!


「良い返事! よし! 次行くよ! 今度はあそこの悪徳成金集団から金を巻き上げてやるわよ!」


「ラジャー!」


 わーい!

 何だか楽しくなってきちゃった!

 ディーラーって楽しい! って、あれ?

 何か忘れてるような?

 うーん……まあいっかぁ。


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