099 幼女のパンツが万能すぎる
私は今、とんでもない謎に直面していた。
それはラークが神だった事や、生まれ故郷のトランスファでラークが建てている建造物などでは無い。
それは私のパンツを何故ラークが持っているのかだ!
って言うか、トンちゃんが恐ろしい事を言いました。
「あ、思い出したッス。そう言えば蛇女がご主人のパンツを持ってたッス。あれはラークが渡したから持ってたんスね。結局ハニーがドジって無くなっちゃったんスよね~」
何それ聞いてない!
そんな事があったのって言うか持ってたの!?
あっ、あの時言ってたリリィが気絶してたのが私のパンツのせいってそう言う事!?
すっかり忘れてたよ!
とまあ、そんなわけでして、正直他の事を考えている余裕が私には無かった。
だってそうでしょう?
ラークが私のパンツを持っていて、それがいつ盗まれたのかもわからないし、何より普通に色んな意味で最低すぎてあり得ないのだ。
知り合いの、仮にもそれなりによく遊んでいた女の子のパンツを盗んでたとか、とんだ変態さんだよ! って感じなのだ。
私はその場で頭を抱えて蹲り、リリィが私の側まで歩いて来て近づくと、とても可愛らしい鼻血付きの笑顔でニッコリと微笑む。
仕方が無いなぁとハンカチを取り出して……あ。
ハンカチは西塔でリリィに渡したんだった。
「リリィ、鼻血を拭いてあげるから、渡したハンカチを返して?」
「海水で濡れるとダメだから、スミレに渡したわ。それよりジャスミン、見えてるからこれを使って?」
リリィが私のパンツを私に差し出す。
私はお礼を言ってリリィからパンツを受け取って、パンツを穿く事にした……のだけど、私は気がついた。
ハッカさんが顔を真っ赤にして目を回して倒れている事に。
「お姉ちゃん!?」
「ジャスミンがパンツを穿いていないから、しゃがんだ時に見えちゃって、顔が真っ赤になって倒れちゃったの」
リリィの説明を聞いたおかげで、私は顔が熱くなるのを感じながら急いでパンツを穿いた。
「ジャチュ、まっかっかー」
うぅ……私のバカ。
小さくなったハッカさんになんてもの……ってあれ?
そう言えば、すっかり忘れてたけど。
「ねえリリィ? リリィは何で小さくなっちゃったの?」
「そう言えばそうッスよね。ボクも不思議に思ってたッス」
私とトンちゃんが首を傾げると、アマンダさんが不思議そうに私の顔を見た。
「何でって、それは能力を使われてしまったからではないの?」
あぁ。そっか。
アマンダさんはリリィのチートっぷりをあまり知らないんだもんね。
今まで何度かは目にしてきたと思うけど、アマンダさん真面目だし、そう思っちゃうよね。
「にゃー。姉様、もしかしたら、リリには能力を無効化出来る何かがあるかもしれないにゃ」
「その通りぢゃ。リリーには能力が効かぬ」
「がお」
「そうなの? 凄いわね。それなら、確かに幼児化させられた原因がわからないわね」
「うん……」
私達がリリィに視線を向けると、リリィの返事を待たずして、セレネちゃんがリリィの代わりに質問に答える。
「私も最初は何でって思ったけど、そんなの簡単っしょ。リリーは気分次第で能力を受けるのよ」
「え?」
気分次第?
「あ、そう言う事ッスか! わかったッス!」
え? わかったの?
セレネちゃんの言葉で理解できたのはトンちゃんだけだったようで、私を含めた他の皆は理解できない。
それを見て聞いていたリリィはと言うと、ニコニコ笑顔で答えを教えてくれた。
「ジャスミンは小さい子が好きだから、蹴り飛ばそうと思ったけどやめて小さくして貰ったの」
「ええええええーっ!?」
そんな理由!?
って言うか、え? 嘘?
ちょっと待って?
あの時、リリィが幼児化させられる能力を食らったのって、わざとだったの!?
嘘でしょう!?
私もの凄く動揺したんだよ!
ここは一つ、心配させるなと文句を言ってあげようと思ったのだけど、リリィのもの凄く可愛い満面の笑顔で出来ない。
流石はリリィだ。
まさに美幼女。
その可愛さは留まる事を知らない。
まさか幼いリリィがこんなに可愛いだなんて、この場にもしカメラがあったなら写真に収めたい可愛さだ。
やっぱり幼女は最高――って、そうだけどそうじゃない。
リリィの可愛さにあてられて冷静を失っていた私は、辛うじて冷静を取り戻す。
とにかく今は……どうしよう?
スミレちゃんと合流して……って、あ、そうそう。
そう言えば、フォレちゃんが合流した時に持って来てくれた小瓶だよ。
と、小瓶の事を思い出した私だったけど、思い出すのが遅かった。
覚えているだろうか?
今私達がいる場所が何処なのかを。
ここには神を呼び出す為の祭壇があり、それは東塔と西塔の両方に存在する。
お互いの台座の上で神に等しい存在を生贄として捧げる事で、神ゼウスを召喚する事が出来るのだ。
そして今まさに、生贄が全て揃ってしまっていたのだ。
その生贄とは……。
「そう言えばラヴちゃん、小瓶はどこにあるの?」
「がお?」
実はラヴちゃんは今小瓶を持っていなかった。
と言うか、私が西塔に行く時にポーチから小瓶を持って出て、こっちに来た時には既に持っていなかったのだ。
戻って来た時は、ラヴちゃんは手ぶらで下半身だけのセレネちゃんの上でお喋りしていた。
「私がさっき西塔に行った時に、小瓶を持ってポーチの外に出なかったっけ?」
「がお! あちょこ」
ラヴちゃんが私の言葉で思い出してくれて、小瓶を置いた場所に指をさす。
指をさされた方へ視線を向けると、そこは生贄をささげる為の台座の上だった。
と言うか、私があの時穿き忘れてしまったパンツまで置いてある。
「ありがとー」
「がお」
私は教えてくれた事へのお礼をラヴちゃんに言って、小瓶とパンツを取りに行こうと足を一歩踏み出した。
しかしその時だ。
意味の分からない展開が巻き起こってしまった。
台座に置かれた私のパンツが突然光だし、それはこの場を眩しく照らして燃え上がる。
な、何事!?
驚いたのも束の間。
パンツが燃え尽きると、塔が揺れてエレベーターに乗った時の感覚に襲われた。
「上昇してる!?」
「にゃー!?」
アマンダさんとナオちゃんが外を見て声を上げて、私はそれを聞いて、外の様子が窺える穴が大きく空いた場所まで走った。
「本当に……上がってってる」
上昇しているのは西塔も一緒だった。
ここからは西塔が見えていて、私達のいる東塔と同様に上昇しているのが見えたのだ。
西塔と東塔の最上階が海面を飛び出して、二つの塔の間の真ん中上空が光に包まれて、私達はそれを見上げた。
そして光がおさまると、そこには一人のお爺さんが神々しく輝きながら、宙に浮かんで立っていた。
も、もしかしてあの人が……。
って、いやいやいや。
待って待って?
私のパンツが生贄になってたよ?
そんなので――
「パパ……」
セレネちゃんが呟いて、私の疑問は一瞬にして消え去った。
ですよねー。
うん。
知ってた。
だって壁画に描かれてたんだもん。
でも、パンツで召喚される神様ってどうなの?




