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異世界建国記  作者: 桜木桜
閑章Ⅰ いざ、アデルニア半島へ
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第三十六話 それでも地球は(太陽の周りを)動いてるんだよ!!

作者、旅行から帰ってくるからもしかしたら返信出来るかも

出来なくてもすべての感想に目を通します

 自然哲学。

 自然哲学とは簡単に言えば、自然に起こる現象を理論的に解明しようという考え方である。


 キリシア……特にアルトは奴隷制が発達している。

 仕事はすべて奴隷がやってくれるので、アルト市民はいつも暇だ。


 そこで彼らは暇を潰す方法を考えた。


 つまり、何故火は暑いのか、何故水は冷やすと氷に成るのか、何故太陽と月は規則正しく上ったり下ったりしているのか……

 そういう今まで『神が定めた』としていた事象にメスを入れて、解明する。

 そのために話し合う。

 これがなかなか楽しい。


 こうして自然哲学は発展していった。






 ニコラオスはアルトの自然哲学者だ。


 十七で結婚し、十八の頃には初めての娘が生まれた。

 現在は三十八歳で、子供は長女二十歳、次女十二歳、長男十五歳、次男十歳、三男八歳だ。

 十人の奴隷を所有している。


 彼の専門分野は天文学だ。


 すなわち太陽や月、星の動きの法則性を導きだして、宇宙の正体を掴み、運命を知ることである。


 現在のキリシアでは地球は球体……惑星であり、その地球の周りを月や太陽が周っていると考えられていた。


 ニコラオスも当初はその説を支持していた。

 だが暫く研究を続けている内にふと気付いた。


 あれ? 計算合わなくね?


 どういうことか、地球を中心に据える―天動説だと計算が合わない。または非常に複雑になる。そこで彼はもしかしたら天動説は間違ってるんじゃないだろうかと考えるようになる。


 ニコラオスはついに一つの学説を導き出す。

 

 即ち、宇宙の中心は太陽であり、地球を除く天体は太陽を中心に周って居る。唯一月だけは地球の周りを周っている。

 

 彼はこの説に地動説と名付けて発表した。

 

 だが世間の反応は冷ややかなものだった。


 神に選ばれた種族である人間が住む天体こそが宇宙の中心だろうという固定観念を持った者たちから彼は狂人扱いされ、総叩きにあった。


 だがそれだけなら十分に言い返すことが出来た。

 「あなた方は神に選ばれた種である人が中心であると言う。だがこう考えることは出来ないのか。善の象徴である太陽が中心であっても可笑しくないだろう」と


 だが彼は天動説の支持者から論破されてしまった。

 何故か。

 そもそも彼の学説には致命的な弱点があったのだ。


 もし太陽を中心とするならば、年周視差が観測されるはずだ。

 だが実際に年周視差は観測できない。


 天動説は観測上、地動説よりも優位に立っていたのだ。


 彼は年周視差が確認できないのは星と地球の距離が離れすぎているからだと主張したが、聞き入られることは無かった。


 そこで矛を収めていれば良かった。

 間違いなしに科学は発展しない。


 アルトの自然哲学者もそれくらいは分かっている。


 だが彼は諦めず、主張を続けた。


 当然嫌われる。

 あいつ、何かウザくね?


 彼への誹謗中傷はやがて家族にまで波及していく。






 「クソ!! 何故みんな理解できない!! 俺の理論は完璧だ。クソ、固定観念に脳みそが支配された石頭どもめ!!」

 

 ニコラオスは計算用紙を丸めて投げ捨てる。

 右腕で思いっきり机を殴りつけた。


 だが物に当たったところでアルトの自然哲学者が納得するわけではない。


 「ニコラオス様。お手紙です」

 「ん?」


 奴隷からニコラオスは手紙を受け取った。

 その手紙は不思議な材質で出来ていた。


 羊皮紙よりも薄く、軽い。

 そして白い。


  『拝啓、お元気ですか?


 私は元気です。思い切ってクラリスに移住して、その後レザドで商売をやるという選択肢は正解だったようです。

 それはアデルニア半島で手に入れた『紙』というモノです。有用性は頭の良い兄さんなら分かるでしょう。アデルニアの蛮人もなかなか侮れません。

 クラリスに仕入れに戻ったとき、兄さんの噂を聞きました。

 あなたの噂はキリシア中に知れ渡ってますよ。

 僕は兄さんの考えは正しいと思います。ですがそろそろやめにしませんか。兄さんがバカな狂人扱いされるのは耐えられません。兄さんには家族も居るでしょう?

 いつか兄さんの考えは認められます。何百年後、何千年後かもしれませんが……それで良いじゃないですか。


 アデルニア半島は良いところです。暖かいですし、食事もなかなか旨い。それに塩をふんだんに使えるのが良い。

 

 キリシア半島は過ごしにくいでしょう? アデルニア半島には兄さんのことを知る人はいません。

 もし兄さんが移住を望むなら僕は歓迎します。


 では、また今度。

 良い返事を期待しています。

 

 敬具。

 

 アデルニア半島レザド、エインズワース商会会長エインズ』



 「ふん」


 ニコラオスは手紙を丸めて床に捨てる。

 諦めるつもりなど更々ない。


 「ニコラオス様。お食事の用意ができました」

 別の奴隷がニコラオスに伝える。


 「今行く」

 ニコラオスは席を立ち、食事を取りに向かった。






 「なあクロルの奴はどうした?」

 「外ですよ。全く、こんな時間まで遊んで……帰ったら叱りつけないといけませんね」


 ニコラオスの妻はそう言って笑った。

 ニコラオス一家は三男のクロルが帰ってくるまで待つことにする。


 暫くするとドアが開き、クロルが帰ってきた。


 「ただいま……」

 「一体こんな時間……どうしたの? その傷」


 クロルは顔に大きなあざが出来ていた。

 よく見ると服が土で汚れている。


 「転んだだけだよ。手を洗ってくる」


 クロルはそう言って逃げるように去っていく。


 転んで顔にあざが出来ることなどあるだろうか?

 いや、ない。

 あれは間違いなく殴られた後だ。


 ではなぜ殴られたのか……


 ニコラオスは考える。

 ちらりと自分の長女を見る。


 彼女はまだ結婚していない。だがそろそろ結婚しても良い頃合いだ。

 だがもし自分の所為で彼女が結婚出来なかったら?


 長女だけではない。

 子供たちが将来、周囲から排斥される。自分の所為で……


 ニコラオスは自分の目的と、家族を天秤にかけた。


 そして……


 「なあ、みんな。実は提案があるんだ」


ニコラオス先生は三章以降の予定

テトラと早く絡ませたい


ちなみに地球が丸いというのは割と昔から知識人の間では有名だったらしい

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